フォローしませんか?
シェア
ライフルの音が響いた。 タカタカタン。タカタカ、タカタカ、タカタカタン。 五連符と十三連符だからファイヴストロークとサーティーンストローク、いや、遅めのアレグロだからシングルストロークのほうがクリアに鳴らせる、と反射的に考えてしまった自分が自分で嫌になる。 見ると、迷彩服姿の人々が重なって倒れている。二〇人まではいないだろうか。微塵も動かない。ゴムのようだ。アスファルトに散った血痕のシルエットのほうが、よほど生命感がある。 「またかよ」つまらなさそうに弟が言うと、 「
遠くから、ゆっくりと何かの音――いや、声が近付いてくる。 おぎゃあ、おぎゃあ、……ああ、これは産声だ。私がこの世に転び出て、初めて出した声だ。不思議なことに、見えないはずの目でも、周りの人々の笑顔が見える。 私は祝福されて生まれて来たのだ。少なくとも、あの瞬間だけは。 びゅおおおおおおおおと、両耳を大気の切り裂かれる音に支配される。高度何万メートルから私は落下しているのだろう? わからない。わからない。まま、私は生身でただただ落下し続けている。 わからないことより
奏でられる鐘の音。まばゆい白い壁がそびえ立ち、教会内を光り輝かせている。空気には神聖な雰囲気が満ち溢れ、慈愛に満ちた思いが包み込まれていた。この美しい教会では、今日一組の新郎新婦を迎え入れる準備が整っていた。 これから新郎新婦が登場する聖堂の入口には、白い花が豪華に飾られ、光に反射してキラキラと輝いている。祭壇の前には、カラフルな装飾が施されたキャンドルが並び、その明かりが優しく会場を照らしている。 客席に座る人々は、様々なドレスやスーツを着ており、祝福の空気を一層引き
晴れた日の昼休み。 「慎吾くん。私のために歌って」 亜香里は面白いやつだ。誰に対してもこんな調子のお調子者で、素敵な人だ。 どうしてと尋ねたら、 「だって歌、得意って言ってたじゃん。確かめさせて」 「いいよ」 俺は最近流行っている歌を歌ってみた。 「笑える」 笑われた。 「どうせなら、『空の彼方』歌ってよ」 「タイトルしか知らない」 「やば。おもろ」 彼女は携帯で曲をかけた。 どこにでもいそうな男の、どこかで聞いたような歌声のありふれたヒットソングが流れる。