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ライフルの音が響いた。 タカタカタン。タカタカ、タカタカ、タカタカタン。 五連符と十三連符だからファイヴストロークとサーティーンストローク、いや、遅めのアレグロだからシングルストロークのほうがクリアに鳴らせる、と反射的に考えてしまった自分が自分で嫌になる。 見ると、迷彩服姿の人々が重なって倒れている。二〇人まではいないだろうか。微塵も動かない。ゴムのようだ。アスファルトに散った血痕のシルエットのほうが、よほど生命感がある。 「またかよ」つまらなさそうに弟が言うと、 「
飛行機に乗る。通路を挟んだ隣に若い男女がいて、赤子を抱いていた。 それから時が何年も過ぎた。 長期休暇を申請し、ハワースに訪れた。 「おじさん、日本人?」 日本語が聞こえる。 だいたい14歳ぐらいの青年がいた。 「そうだけど」 「うあー久しぶりやな。俺も日本人なんだ。生まれてすぐにイギリスに来て、それから日本なんて行ったこともないんだけどね」 「そのわりに日本語が上手いじゃないか」 「ボイチャばっかりしてるからね。アニメも見てるし。おじさんはどこにいくん」 「
奏でられる鐘の音。まばゆい白い壁がそびえ立ち、教会内を光り輝かせている。空気には神聖な雰囲気が満ち溢れ、慈愛に満ちた思いが包み込まれていた。この美しい教会では、今日一組の新郎新婦を迎え入れる準備が整っていた。 これから新郎新婦が登場する聖堂の入口には、白い花が豪華に飾られ、光に反射してキラキラと輝いている。祭壇の前には、カラフルな装飾が施されたキャンドルが並び、その明かりが優しく会場を照らしている。 客席に座る人々は、様々なドレスやスーツを着ており、祝福の空気を一層引き
夕暮れどきのことである。女が、塔に吸い寄せられるように、街道のはずれを歩いていた。脂ぎった髪を垂れ下げ、土埃にまみれた履物を引きずっている。小刻みに吐き出される無声の呼気が、整えられていない前髪をふわりと跳ね上げる。 「ぁ……」 女が地面に足をとられた。躓きかけた女の発した、僅かな有声の音が空気を震わせる。周囲に波紋が広がる。虫、小動物、鳥。音を感知するあらゆる種々が彼女の側を遠ざかっていく。 「うぅ!」 女は苛立ちに足を踏み鳴らし、右手にある木々に向かって獣のような声
晴れた日の昼休み。 「慎吾くん。私のために歌って」 亜香里は面白いやつだ。誰に対してもこんな調子のお調子者で、素敵な人だ。 どうしてと尋ねたら、 「だって歌、得意って言ってたじゃん。確かめさせて」 「いいよ」 俺は最近流行っている歌を歌ってみた。 「笑える」 笑われた。 「どうせなら、『空の彼方』歌ってよ」 「タイトルしか知らない」 「やば。おもろ」 彼女は携帯で曲をかけた。 どこにでもいそうな男の、どこかで聞いたような歌声のありふれたヒットソングが流れる。