趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.183 音楽 Joep Beving 「Paris s'enflamme」
こんにちは、カメラマンの稲垣です。
今日はJoep Beving(ユップ・ベヴィン)の 「Paris s'enflamme」(パリは燃えている)についてです。
Youtubeで見つけた曲。何か惹かれるものがあり、聴いてみると実に良い。
ユップ・ベヴィンはオランダのアムステルダムを拠点にしていて、ストリーミングの世界で大人気のアーティスト。
数字の単位が多すぎて想像を超えるが5億回を超えるストリーミング再生を誇る新世代のポストクラシカルなピアニスト。
身長2mを超える巨人だが、奏でる音楽は繊細でどこまでも優しく癒される。
音と音の間が澱みなくつながり、まるで映画のように世界を作ってしまう。
彼の音楽は映画音楽とアンビエントのちょうど真ん中辺り。
ちょうど良い。
アップライトピアノの蓋を開けて演奏するスタイル、音を大きくしたり、ピアノをより打楽器的に使う手法。
彼はこう言っています。
「それに蓋を開けて弾くと、中に埋め込まれたハンマーが動いて音が鳴るという、ピアノの仕組み自体が鳴る音も聞こえてくる。それがまるで「ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response:聴覚や視覚への刺激によって感じる、心地よく、頭がゾワゾワするような感覚)」のように、本来聴こえてこない音までが聴こえるような効果をもたらして、とてもリラックスできることにも気づいたんだ。」
ASMR!ああ、あの耳元で囁いたり、食事の音がする音!そのために開けているんですか!
そんな演奏スタイルがこの映像ではよく見れます。
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この曲「Paris s'enflamme」(パリは燃えている)はメランコリックで、哀しい感じがする。
「それまで善と信じられてきた西洋の価値観が、非民主的な外部勢力や内部勢力に攻撃されていると感じています。具体的には、新保守主義やナショナリズムといった勢力ですね。その余波として、帝国主義や資本主義が環境問題を引き起こした。私にとって、パリは西洋の価値観、あるいは西洋そのもののメタファーです。《パリス・イズ・バーニング》の意味が2008年と比べると大きく変わってしまった、そういった危機感を表現したのがこの曲です。」
哲学的ですね。
でもこの曲の哀しさは、そういう意味があるんですね。
戦争や疫病が蔓延する世界で、ユップ・ベヴィンはこの曲で、
もうあの美しいパリは遠い記憶の中にあり、
今は恐怖と狂気の中にある。
でもこの儚い美しさを忘れない、と微かな希望を感じさせる。
単に美しい音楽だけじゃない、癒しだけじゃない、
そんな彼の思いが、この曲に。
だからこそ映画のように思わせるのか。
今日はここまで。
普遍的な言語である音楽は、理性による理解では到達できない感情を伝えることができます。人間の属性とは何か、その答えを与えてくれるものではないかと。言い換えると、音楽は世界にはびこる狂気に対して上げる声、つまりあらゆるネガティブなものを退けるエネルギーを与えてくれるものだと信じています。
/ユップ・ベヴィン
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