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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.257 読書 飴村行「粘膜蜥蜴」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は読書 飴村行さんの「粘膜蜥蜴」についてです。


ここ最近ものすごく衝撃を受けた小説、飴村行さんの「粘膜人間」の第二弾。

河童が出て来る「粘膜人間」と話は違うが、エログロの世界観はよく似ている。

今回は頭が蜥蜴の人間”爬虫人”が出て来る。やりたい放題の病院長の息子とその下男の爬虫人、兄弟の兄が戦地で体験した爬虫人の村の話が、繋がっていくところが面白い。

インパクト(エログロ暴力度)は「粘膜人間」の方があるが、構成力や完成度、キャラの造形はこの「粘膜人間」の方が良いような気がする。

まあとにかく、まるで王様か将軍のような病院長の息子と、トカゲの頭の爬虫人の下男との関係性が、とってもユーモラスで楽しい。

病院長の息子が許嫁のために女中とエッチなトレーニングしているときに、トカゲが太鼓を叩いて応援するシーンは抱腹絶倒でした。

なんてシュールな。

読み終わってからそのシーンなど二人の関係性を考えると複雑な気持ちが・・・。

もう飴村さんの粘膜シリーズに夢中です。



物語は、戦時中の日本、国民学校に通う少年とその友人は、お金持ちで同級生の病院の息子に、自宅に招待された。

その病院はまるで貴族や王族の建物のように立派で、その病院の息子はワガママし放題だった。

病院の息子の下男がトカゲの頭をした爬虫人が、家を案内する。

その家の地下に死体安置所がありそれを見せびらかし、その奥には精神病棟があり三人の軍人がいた。

病院の息子は、その軍人を揶揄うように友人に言うと、その友人は軍人に瞬殺されてしまう。

焦った息子は、少年に友人の死体をバラバラにしろと言い、できるまでこの地下に閉じ込められてしまう。

バラバラにしようとしても怖くてできない。

夜になり疲れて眠って夢を見ている少年に、戦地へ行った兄が現れ、友人を生き返えさせると言う。

朝病院の息子がきて少年まで殺そうとした時に、友人が生き返り無事に病院を出ることができた。



話は変わって、少年の兄、戦地である任務を受ける。

軍にとっても重要な人物をある村へ連れて行って、その護衛をしろという命令。

ただ戦地なのでゲリラもいて、ジャングルのような場所でもある。

その重要人物は、性格も悪く、軍人とのコネクションがあり、怪しい商売をしている男。

それを兄と部下2名とその重要人物4名で、危険な道を通っての行軍。

案の定、ゲリラに襲われ、部下たちは死に、二人は命からがら、ヒルがいる森の中を進む。

目的地の村へ行くと、重要人物の部下や村人たちは虐殺されている。

その村では麻薬の製造をしていた。

兄は爬虫人の子供を助け、重要人物は罠にかかった爬虫人のメスをレイプをしているところに、爬虫人たちが大勢きて、二人は捕まってしまう。

爬虫人の村で二人は長老から裁きを受け、重要人物は酷い処刑をされ、兄は子供のお陰で助けてもらう。

そしてどんな願い事を叶えてやろうと長老に言われ、弟に会いたいと願うと、

その弟と夢の中で話ができ、困ったことがあって友人を生き返さないと自分の命も危ないと言う。

2日以内なら生き返すことができ、弟も助かり、兄も無事、村から出ることができた。



病院の息子の話、

病院では母親が場所も言わず家を出てしまい、父親もそれがショックで部屋から出てこない。

たまに母親から手紙がきて心配するなと。

病院の息子は下男の爬虫人と広いお屋敷のような病院で暮らしている。

彼には許嫁がいて、とても好きだが好きすぎてまだ何もできないでいる。

女中の顔に許嫁の写真を貼り付け、エッチな練習を日々している。

その間もずっと爬虫人は太鼓を叩きながら応援している。

その許嫁を従兄弟も彼女を狙っていると知る。

どちらが許嫁になるか、決闘をすることになる。

ただしどちらもまだ子供で大事な病院の跡取りなので、代理の人間同士で戦わせることになる。

従兄弟は何人も相撲で殺している元力士、

病院の息子は、最初地下室で友人を殺してしまった(後で兄のお陰で生き返った)軍人が代理で出る。

決闘の日、その勝敗はどうなるのか、行方不明になった母親は見つかるのでしょうか。



病院と戦場の二つの舞台。

それが爬虫人の長老の力で、夢でつながる。

病院にも下男として爬虫人、戦場も爬虫人の村が出て来る。

今回は下男の爬虫人のキャラが冴えている。

とにかく病院の息子に忠実で、かつ江戸っ子な喋り方。

エッチな練習も、そばにいて応援するほど。

衝撃的なラストを知った後、いろいろと考えさせられてしまう。

そして戦場のシーンがものすごくリアルで恐ろしい。

太平洋戦争のアジアで日本軍がしたことが、もちろん爬虫人なんていませんが、

それをアジアの現地の人たちと置き換えると、恐ろしくなってしまいます。

もうこの戦場の描写の凄さは、村上春樹の「ねじまき鳥のクロニクル」のノモハン事件に匹敵する。

戦場のジャングルの奥へ行く過程は、まるで「地獄の黙示録」のよう。

戦争文学って気が滅入るので避けてきましたが、これはちょっと読んでみなくてはと思いました。



本当にエログロの作品ですが、実は結構根幹にはちゃんと芯がある作品だと思います。

今日はここまで。



戦場で生き残る条件はただ一つ、そいつの持っている運だけだ。どんなに偉い大将でも死ぬ時は死ぬし、どんなにぺえぺえの二等兵でも生き残る時は必ず生き残る。
/P103.「粘膜蜥蜴」より













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