5750


生きた神様を見たんだ
真っ逆さまに堕ちていく
緑色の翼を広げてさ
君は

愛する人に別れを告げたけど
また会いたい話したい少しでいいから
あの人の微笑む姿が
そっと脳裏を過ぎるんだ

真っ青な空でさ
怖くなっちゃって
あの空を駆けるハヤブサが
眩しくて

ああ、さようなら愛しい人達よ
僕は今1人で空に旅立つの
世界の平和を願うため
愛する人にまた出会うため
ああ、もう一度ちょっぴりだけ
あなたの顔が見たくて仕方ないんだ

生きた神様を見たんだ
その人は優しくて
とってもとても真っ直ぐで
だから

みんなに向けて手紙を書いたんだ
10枚くらい書いたから見てよ
あの人が読んだら泣いてしまうかな
でも笑って読んでいて貰いたいな

真っ青な空にさ
向けて叫んでいた
1036の君たちに向けてさ
ただ泣いていた

ああ、さようなら愛しい人達よ
僕は今1人で空に旅立つの
世界の平和を願うため
愛する人にまた出会うため
ああ、もう一度ちょっぴりだけ
あなたの顔が見たくて仕方ないんだ

ああ、さようなら愛しい人達よ
あなたたちが笑えるように
僕は笑顔でさようならするの
世界の平和を願うために。


この曲は俺が修学旅行で知覧にある知覧特攻平和会館という場所に行き、戦争体験なさった方の息子さんのお話を聞いて、そしてその場にある資料を見て書いた曲。

修学旅行に行く前、荒木さんに
「稲垣は特に曲書いた方がいいね。」と
言われまあ、新しい曲のアイディアになるかなーくらいの気持ちでその場に向かった。
最初は本当に軽い気持ちだったんだ。
軽いとはいえ、戦争をテーマにした曲を書いている人間だから、書きたい気持ちはあった。

そして、平和会館にて講話を聞き俺は泣いた。隣にクラスメイトはいたし、仲いいヤツだってたくさんいた。でも俺は泣いた。
それほどまでに俺の心を抉ったんだ。

死ぬことこそが正義と言われ、本当は死ぬ事が怖いのに特攻隊に選ばれたらバンザイ!バンザイ!でも、出撃前夜に泣くんだ。俺たちと歳の変わらない青年たちが。声を潜めて泣くんだ。
愛している人に遺書で別れを告げなくてはならない。愛しています。私はお国のためにこれから命を捧げてきますバンザイ!
、、、でも本当は、また会いたい話したい少しでいいから、ああ、もう一度ちょっぴりだけ、あなたの顔が見たくて仕方ないんだ。

息子が戦死せずに帰ってきた。たまたま、飛行場に用事があって親父さんと会えた。
でも、次の日にはまた飛ばなくちゃならない。
そんな話を聞いて親父さんは三角兵舎に向かうんだよ。するとさ、父ちゃーん!!!って元気な声で抱きつきに来るんだ。俺より若い青年が。すると親父は一晩中息子の体をマッサージするんだ。出撃してまた帰ってこないように。
寝ずにマッサージするんだよ。次の日息子は死にに行くのに。
そして次の日、息子が出撃する姿を見送るんだ。

話してくれた人の、お母様は特攻隊見送る人だったそうだ。
その人に特攻隊の人たちってどんな人達だった?って聞いたら普段はあんまり教えてくれないけれど、この言葉を何度も言ったそうだ。
「生きた神様を見た」って。

そんな話を沢山聞いてきた。
この話聞いて俺は涙せずに居られなかった。そして曲を作らなくちゃ行けないんだ俺はって軽かった気持ちが全て、後に5750と呼ばれる曲に向けられた。

講話が終わったあとは資料を死ぬほど見た。
知覧の特攻隊員が乗っていたとされる隼について。原寸大の模型でその色や大きさも見て。
そしてかの有名な零戦の朽ちた姿も見た。
隊員が最後の夜を過ごした三角兵舎の中にも入った。すごく狭くて暗くて淋しかった。
その全てを吸収して、あの曲を書いた。

歌っている俺は、そんな想いを込めて歌っていたし、この曲を聞いて少しでも、何か考えてくれる人が現れたら嬉しいな、と思い歌っていた。
けれど、思っているより人は思った通りに聞いてはくれなかった。

もちろん、聞き方なんて聞き手に委ねられるものだし、それを作曲者が強要するなんてことはあってはならない。
だけど、思っている以上に分かって貰えないことが俺にとってショックだった。

だからこそ、今この文章を書いてどんな思いで歌い、どんな思いを込めてこの曲を書いたのか、みんなに知ってもらいたいと思ってスマートフォンの画面とにらめっこをしている。

5750は造られた隼の機数。
1036の君は知覧の飛行場から特攻し、戦死した若者の数。
1036人もの若者が死んだ。現代で例えるならば、ひとつの高校の生徒数と同じほどの若者。
今では考えられない程の数でしょう。

そんなたくさんの若者が命を落として護った平和を俺たちは何も考えずに生きてていいの?
良いわけが無い。
愛する人のために命をかけなくてはならない、平和を守るため、国を守るために命をかけなくてはいけないなんて、そんな淋しいことない。
だから忘れちゃいけない。
俺の歌じゃなくたっていい。なんだっていい。飛行機が好きだから、プラモデルが好きだから、歴史が好きだから、、、
なんだっていいから忘れないでいて欲しい。
考えて欲しい。
今、俺たちがこんなに笑って、暴力に怯えずに生きていける理由を。
Jアラートが鳴っても普通に出勤できてしまう、平和ボケした世の中で。

特攻した若者たちを知るきっかけになってくれれば良いなと思ってこの曲を歌っています。
気持ちは1036人の優しい神様たちの気持ちを全て背負っているつもりです。
俺には大きすぎるし、全部背負うなんて傲慢かもしれない。
でも、そのくらいの気持ちじゃなきゃこの歌は俺には歌えないんです。
俺がもし有名になってこの曲がカラオケで配信されても、みんなが楽しく歌えるように。
笑い合えるように。
俺は全部気持ち背負って歌い続けます。
この歌を。

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