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中二長女と共謀罪

昨日の夜、共謀罪についてのニュースを見ていたら風呂上がりの中二の長女が「共謀罪ってなにー」と聞いてきた。娘はよく政治について聞いてくる。

ぼく えーとね。たとえば藍がこのティッシュを盗んじゃおうとするじゃん。
長女 うん。(そんなの盗まないよという顔)
ぼく 盗んだら警察に捕まるよね。それが窃盗罪。
長女 うん。
ぼく 盗まないんだけど、このティッシュが欲しくて、どうやったら盗めるだろうかって家の間取りを調べたり友だちと相談したら捕まるっていうのが共謀罪。
長女 あ!だから共謀なんだ!
ぼく そうそう。今までは「やったこと」に対して罪をかけてたんだよ。盗んだから捕まるって。
長女 うん。
ぼく だけど、これからは「やる前」でも罪にすることになって。盗もうかって誰かと相談したら捕まるようになる。それがこの法律の特徴。
長女 ふーん。
息子 相談しただけで捕まるのー。(隣室の小六息子が参加してくる)
ぼく うん。でも、ここがむずかしくて。たとえば文人が友だちと喧嘩したとするじゃん。
息子 うん。
ぼく それですごーく腹がたって、あいつぶっとばしてやるって思うとするじゃん。
息子 うん。(そんなこと思わないよという顔)
ぼく だけどそれは自由なんだよ。誰でも何でも思ってもいい。それは思想の自由っていって憲法で守られている大切なことなんだよ。
長女 それ知ってるー。
息子 ふーん。
ぼく 本当はそこまでは自由なんだよ。誰が何を思ってもいい。だから今までの法律は「何を考えてもいいけど、やったらアウト」ってしてたんだけど、この法律は「やってなくても相談や計画したらアウト」って決めたんだよ。それって、「何を考えてもいい」っていう自由にとっては「そうじゃない」っていうふうにも取れるんだよね。
息子 ふーん。
長女 えー。やだなあ。じゃあ、何をしちゃいけないの?
ぼく それがねえ、ぜんぜん分かんない。
長女 ん?
ぼく 国会での説明を聞いていてもぜんぜん分かんないんだよね。
長女 ?
ぼく たとえばさ、お父さん、原発反対のデモに行ったりするじゃん。インターネットで原発反対って書いたりするしさ。
長女 うん。
ぼく 国会の説明ではそういう人も捕まえる対象になるって言ったりするんだよ。
長女 えー!
息子 デモに行ったら捕まるの!
ぼく それがよく分かんないんだよね。あやふやなの。
長女 えー。(すごい怯える)
ぼく だから誰も分かんないっていうのが今の状況なんだよ。捕まるかもしれないし、捕まらないかもしれないみたいなあやふやな説明ばかりで。
長女 だめじゃん!
ぼく うん。でも一番困るのがさ、こんなことしたら捕まるかもしれないって勝手に思うようになっちゃうことなんだよ。あやふやだから。
長女 ん?
ぼく んーとね。例えば学校にすごーく怖い先生がいたとするじゃん。
長女 うん。
ぼく その先生はすごく怖くて、授業中にちょっとでも話したら「静かにしろー!!!」って怒鳴るの。そしたら皆怖いから静かにしてるよね。シーンって。
長女 うん。
ぼく でも、そのとき藍がくしゃみをしたくなったとする。
長女 !
ぼく 本当だったらくしゃみなんてすればいいじゃん。わざとじゃないんだし。ふつうの授業だったら何も思わずにくしゃみするじゃん。
長女 うん。
ぼく でも、すごーく怖い先生が「静かにしろー!!!」って言った後だったら、もしかしたらくしゃみも怒られるんじゃないかって藍は思うかもしれないじゃん。
長女 うん!
ぼく この法律のあやふやさはそういうふうに「これをやったら怒られるんじゃないか」って皆が勝手に思うようになっちゃうかもしれないんだよ。こういうのを表現の萎縮とか内心の自由の侵害っていいます。
長女 だめじゃん!
ぼく だめなんだよなあ。
長女 みんな反対すればいいじゃん。
ぼく みんな反対しても決めるのはこのテレビで映っている国会議員だからね。
長女 国会議員は反対しないの?
ぼく 反対する国会議員もいるけど賛成する議員の方がぜんぜん多いんだよね。
長女 えー。じゃあ決まっちゃうじゃん。
ぼく うん。たぶんこのまま行けば藍が明日起きたら決まってる。
長女 え。
ぼく 今まで話し合いしてたんだけど、そんなのもういいから決めちゃおうぜって急に政府が言ってきたんだよね。
長女 え。だめじゃん。
ぼく だめだよね。すごい勝手なやり方なんだよ。びっくりした。
長女 えー。誰がそんな人たちを選んだの。
ぼく 誰って、うーん…お父さんたちみたいな大人だよなあ。
長女 ふーん。選んだ人はこの法律ができてもいいって思ってたんだ。(信じられないという顔)
ぼく うーん。そういうふうに選んでないと思うよ。選んだときは「こんな法律ができる」って誰も知らされてないもん。
長女 えっ…!(絶句)

絶句したまま寝室に入っていく中二の娘。まあ、そうだよなあと思いつつニュースに目を戻す。空っぽの国会の空っぽな椅子がたくさん映っている。

自民党や公明党、維新を選んだ大人たちはこんな法律、望んでいたのかしら。
そして、また彼らは選ぶのだろうか。こんな権力側の都合しかない法を数の力で押し通す彼らを。


20170615

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