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年配者の弱みに寄り添う

つい先日、80歳になったばかりの夫の母を訪ねた。と言っても、義母はすこぶる元気。ただ、現在は一軒家に一人暮らしなので、外出自粛制限中はかなり寂しい思いをしていたようだ。

つい2、3日前に義母から夫へ頻繁に電話があっていた。スマホの操作で分からないことがあったらしく、夫が電話で説明するも、義母にはよく伝わらなかったのだ。しかも、夫も義母が困っているそもそもの根本原因を分かっていなかったみたいだ。

今日、その問題はすべて解決できていたが、義母にはまたまた新しい問題が出てきた。特定のYouTubeを見たいらしいのだが、その方法が分からないという。

早速、夫が義母からスマホを奪い、なんだかんだと説明を始めた。私は夫のその手を遮り、「そんなことをするから、お義母さんは余計に分からなくなる」と、スマホを義母の手に戻した。すると義母が「そうなのよ! 携帯電話の販売店の人も、自分でちゃちゃっと操作して説明して、ハイって渡されるけれど、結局、こっちは何も分かってないのよ」と、嘆いた。夫も、販売店の人も“教えたつもり”になっているだけなのだ。

いかに世の中の人が、年配者に寄り添っていないかを私は知っていた。それは母にスマホを教えた経緯でも分かっていたし、時々連絡がある、母と同い年の会社の元上司の話からも知ることができた。元上司からの連絡はたいてい、LINEが〜とか、メールに〜とか、デジタル機器に関する質問が多いので、それに答えるべく頭を使う。この前の日曜日、元上司から質問があった際、つい「どのデバイスを〜」と言ってしまい、一瞬の沈黙で相手の頭の中に「?」が浮かんだのが分かったので、すぐに「iPadでしますか? スマホで? パソコンで?」と質問を言い換えたら、彼女もすぐに分かって「スマホで」と返事をくれた。

思い出して欲しい、携帯電話の販売店のスタッフに年配者がいるかどうか。もちろんいない。みんな若くて、ハキハキして、爽やか。スマホの文字が小さくて読みづらいとか、指が思い通りに動かなくて画面上のボタンを押せないとか、今、自分が話している用語が通じていないとか、微塵も想像できないような人ばかり。忘れたくなくて、たくさんメモはしていても、今、自分が欲しい情報をどこに書いたかすら思い出せない、年を経ることでそんな悔しい思いをしている人たちがいることなんて、ちっとも思い至ってないのだ。

年配者(に限ったことではないけれど)に、新しいことを説明して理解してもらうには時間がかかる。それも触れたこともないデジタル機器なら、その1.5倍の時間とこちらの根気、それに用語をかみくだいて説明する力が必要だ。おそらく販売店には、そんな“無駄なこと”に人件費や時間を割く余裕も心積りもないだろう。

私は義母の手許を見ながら、辛抱強く説明をした。義母はきちんと理解してくれたようだ。先ほど、YouTubeを見まくっている、と連絡があった。

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