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もし国会の予算委員会で質問できたら、宇宙関係でこう質問する

2024年3月、某所向けにある程度中立的な立場で質問するために書いた文書。多少使われたけど、少しだったので供養のためにnoteの記事で公開。エッセンスだけでもどこかで使われたらうれしい。


  • 今後、成長産業として大きく期待される「宇宙産業の振興」について質問します。

  • 我が国の宇宙技術は世界でも高いレベルにあります。日本は人工衛星の打ち上げに成功した世界で4カ国目の国であり、今年1月には月面探査機のSLIM(スリム)は世界で5カ国目となる月面着陸に成功し、世界初のピンポイント着陸など偉業を達成しています。

  • また、新型の大型基幹ロケットH3(エイチスリー)今年2月には2号機で成功させ、改めて日本の宇宙技術の底力を示しました。

  • また、宇宙産業においては国内の民間企業の活躍も着実に出てきています。民間ロケット、民間月面開発、民間光学衛星、民間レーダー衛星、宇宙ゴミの除去など複数のスタートアップ企業が出てきています。

  • 先日、和歌山県からの民間ロケット「カイロス」の初号機打上げは残念ながら成功とはなりませんでしたが、他の民間ロケットとして北海道からインターステラ社も開発しているなど、複数の民間企業が果敢に挑戦していることは大いに期待できます。

  • ロケット打上げには多くの観光客が訪れ、経済効果もあります。北海道のロケット発射場のある大樹町(たいきちょう)ではインターステラ社を誘致したことで60年ぶりに人口増加するなど、地方創生にも効果が出ています。

  • 宇宙産業は世界的には2030年には90兆円規模と現在の半導体産業と肩を並べ、2040年には150兆円規模となると言われています。

  • そういった中で、我が国は、アメリカだけではなく、その他の国にも遅れを取っているのではないでしょうか。例えば、2023年にロケット打上げ成功した回数は、アメリカ110回、中国62回です。これに比べて、日本は年間2回と大きな差がついています。

  • 先月示された内閣府の宇宙技術戦略の基本的考え方の中で「2030 年代前半までにロケットの国内打上げ能力を年間 30 件程度確保」とあり、政府として着実な実行が必要です。また、ロケットの発射場整備など、従来の予算措置だけでは足りない部分への対策も必要です。

  • このままでは成長産業に取り残され、「デジタル赤字」に続いて、今後「宇宙赤字」を生み出す危険性があります。

  • 特に、民間宇宙産業を牽引しているアメリカのSpaceX社(スペースエックス)は超巨大ロケット「スターシップ」の試験を進めています。宇宙飛行士を運ぶのもSpaceX、さらには「スターリンク」という現在でも 5500基の人工衛星を使って宇宙からインターネット接続するサービスでイノベーションを起こしています。SpaceXは単独で成長したのではなく、アメリカ政府の大きな支援があったからこそ現在があります。

  • 今やアメリカでは宇宙開発を加速しているのは民間企業です。我が国も国主導の宇宙開発に加えて、民間をさらに支援し、活かさないといけません。

  • 能登半島地震でもSpaceX社のスターリンクによって基地局の停電や光ファイバーが切れた状態でも通信確保が出来たことは大いに役立ちました。防災や有事を考えると、宇宙通信は不可欠になっています。一方で、アメリカのイチ民間企業頼みであることやイーロン・マスク氏頼みという安全保障上の大きな課題でもあります。日本としても独自の宇宙通信網を構築することが必要ではないでしょうか。

  1. このような背景を踏まえ、民間企業の育成および国内産業の自立性の確保のため、総額1兆円規模の支援を目指すとされている「宇宙戦略基金」について、令和5年度補正予算ではまだ3000億円しか手当てがされていませんので、来年度、早急に残りの7000億円の研究開発予算の措置を行うことが必要と考えますが、ご見解を伺いたいと思います。

  2. また、こうした研究開発予算に加え、民間企業を成長させるためには防衛省、国交省、農水省等のユーザ省庁が積極的に調達する、いわゆるアンカーテナンシーによりロケットや人工衛星など宇宙を利用したサービスを買い支えることも重要です。宇宙技術は安全保障上も重要なデュアルユース技術であり、政府としてこうしたアンカーテナンシーによる大胆かつ継続的な支援を政府一体で講じるべきだと考えますが、ご見解を伺いたいと思います。

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