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KJ法で沈黙が生まれたあなたへ

KJ法。
雑多な情報を分類し、関連性の中から発想していくこの手法を、大学や新人研修などで学んだ人も多いだろう。

付箋に書き出し、分類し、グループごとの関連性に線をつけ文章化する。
そのシンプルさから、KJ法を知らずとも無意識にやっている人も多いと思う。

とあるプロジェクトの振り返りの場で、業務上の課題を洗い出し、ファシリテーターの呼びかけで付箋をグルーピングしはじめた。
(グルーピングすることで解決策が出やすくなると思ったのだろう)

みんなで分類を終えたそのあと...
訪れたのは沈黙だった。

白板の前に棒立ちで沈黙しているメンバー。
明らかに焦るファシリテーター。

分類はできた。
ただ、そこから何を解決したらいいか全く見えない。
どのグループに課題が多いか、くらいの議論しかできない。
関連性も見えてこない。

結局、ファシリテーターが半ば強引に結論づけたが、あきらかにメンバーがついてきていない。

メンバーの足並みをそろえるための振り返りでどうしてこうなった...。
(とはいえ若かりし頃自分もそうだった...トラウマだ)

そもそもKJ法とは

文化人類学者の川喜田二郎氏が考案した、大量の定性情報を、俯瞰し、関連性を見つけ、新たな発想を得るための手法である。

前述のとおり、付箋に書き出し、グループ化し、グループごとの関連性を見つけ、文章化する。というシンプルな手順のため、様々なシーンで活用される。

ビジネスにおいては、課題同士の関連性を見つけ解決策を考えたり、ブレストのアイデア収束に用いられることが多いだろう。

ただし、付箋のグルーピングがとても重要で、ミスると何も発見できなくなってしまう。

今回は、課題解決のためにKJ法を利用するシーンを想定し、例を上げながら解説したいと思う。

LATCHでグルーピングすると沈黙が訪れる

LATCHという情報分類の軸がある。
Location(場所)Alphabet(50音)Time(時間)Category(種類)Hierarchy(階層)の頭文字をとった言葉で、世の中の情報はこれらで必ず分類できるという、情報整理の軸である。

我々が日常触れている情報は、この軸で分類されているものがほとんどだ。
会議の予定はTimeごとに並んでいて、会議室はLocationごとに分類され、連絡先はAlphabet順で並んでおり、所属部署はCategoryごとに、組織図はHierarchyで表現される。

あまりにも目にする機会が多く、カンタンに扱える軸なので、KJ法の付箋もついつい、このLATCHで分類してしまいがち。

KJ法においては、これが元凶だ。
分類をミスって沈黙してしまっている現場を何度みたことだろう。

(ちなみにLATCHそのものは悪でも何でもない。むしろ有益。
KJ法のグルーピングには向かないというだけである。)

沈黙になりやすい、グルーピング例

例えば、ここに6つの課題があったとする

・メンバーがあまり発言できない空気
・残業が増えてきている
・スケジュールが遅延気味
・リーダーが細かく口を出しすぎる
・コミュニケーションロスでやり直しが何度か発生した
・遅延を取り戻すためMTGの量が減らされた

これらの課題をLATCHでグルーピングするとどうなるか、一度、試してみよう。

Location(場所)Alphabet(50音)で分類しても、意味がないのは自明なので、陥りがちなTime(時間)Category(種類)Hierarchy(階層)で例を上げてみる。

Category(種類)

一番陥りやすく、陥ったことすら気づきにくいのがCategory(種類)である。

グループ同士が分断されてしまい、関連性が見えなくなってしまう。
(ファシリテーターがむりやり関連性をつける羽目になる)

各グループにある付箋の量がわかるだけで、関連性を見つけ、解決策に結びつけるのは難しい。

ラベル(緑の付箋)に「〇〇系」と書かれていたり、単語のみのラベルだったり、妙に系統だった粒度のラベルが出ていると、Categoryになっている可能性がある。要注意だ。

Time(時間)

単純に起こった時系列に沿って並べるとこうなる。

見ての通り何もわからない。
「そうなんだー。ふーん。」という感想しか出ない。

KJ法で、このグルーピングに陥ることは少ないが、実はカスタマージャーニーマップはTime(時間)で分類する手法である。

ジャーニーマップで落胆しやすい理由がここにある。
時系列から何かを読み取るのは、深い洞察が必要になるため、何も発見できず沈黙が訪れる。
(落胆しないためのヒントは前記事を参照してほしい)

Hierarchy(階層)

課題が構造化され、一見ロジカルに見えるが、結論ありきの恣意的なグルーピングになりやすい。

上流から下流への関連性は見えるが、それゆえに上流が悪い、下流が悪いという建設的でない議論になりがち。
解決したいのは課題であり、犯人探しではない。

また、上記例の「結果」のグループのように一つのラベルのもとに付箋が集中する場合も要注意だ。

そのラベルは実質「その他」扱いになっていて分類しづらいものが思考停止状態でまとめられている可能性がある。

分類方法に答えはあるのか?

結論からいうと、「答えはない」

そもそもKJ法は発想法である。
情報をどういう切り口で分類し、なにを見つけるかは、あなた次第なのだ。

ただし、LATCHで分類すると発想が生まれにくいことは確実だし、
LATCHにならない進め方のコツはある。

1. 2枚の付箋をならべ、意味が近ければ近づけ、遠ければ遠ざけて貼る
2. 1を黙々と繰り返すとなんとなくグループができてくる
3. ある程度グループができてからラベルをつける
4. グループから見えてくる洞察をラベルに"文章で"書く

すごくフンワリして聞こえるが、こうするしかないのだ。
効率的に進めるべく基準を設けると、あっという間にLATCHになる。

軸とか粒度なんかどうだっていい。
曇りなき眼でグルーピングし、まとまりから見えてくる情景をラベルにするイメージ。

このプロセスで、先程の課題をグルーピング、関連付け、文章化をするとこうなる。

LATCHで分類したときと比べて、グループごとの因果関係がわかりやすくないだろうか。

もちろんこれが答えというわけではない。
が、少なくとも「リーダーはもっと権限委譲したほうがいい」とか「メンバーが自発的に課題解決できるような枠組みを提案したほうがいい」とか、建設的な解決策は浮かんできやすいだろう。

先入観なくグルーピングし、得られた発見をラベルに具体的に記述するだけで、LATCHは避けられる。

KJ法は、グルーピングすれば、自動的に答えが出てくる手法ではない。
グルーピングという作業を通して、関連性の中から新たなアイデアをみつけだす、「発想法」なのである。

何かを見つけるためにグルーピングするのではなく、「何かが見つかるまでグルーピングを試行錯誤する」というのが、KJ法に対する正しい向き合い方だろう。

先入観を持たないというのは、不安かもしれない。
けど、必ず何かが見つかるはずだと信じることで見えてくる世界がある。
あなたが見つける答えを待っている人がいるはずだから。

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