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煙草 一人芝居 戯曲

データ↑
あらすじ↓
不器用な優しさの話
本文↓

煙草

BGMでうっすらラジオがかかってる

場所は椿の部屋
椿はよろよろと部屋に入ってくる
椿は片腕と片足が不調
椿はビニール袋を持っている
椿は電話をかけている

「うん。ありがとう。色々と、買ってくれたんだね。ごめんね。寝ちゃってて。ううん。体調は大丈夫なんだけど、眠くて。まあ、動かすとちょっと痛いけど。え?ああ、言ってなかったね。精密検査の結果、原因はよく分かんなくて。健康だってさ。心因的なものかもって。ちょっと嫌なことが重なっちゃっててさ。あ、ちょっと嫌なこと、ね。いや、そうじゃなくて。微々たる嫌なことが重なったって意味」

椿は話しながら座る
椿は話しながらタバコを取り出している

「そうそう。ゼミ決めるのが大変だったーとか。バイト変わったーとか。親と喧嘩したーとか。細かいのがいくつかね。全然大丈夫。え?結花だって色々あるでしょ?この間、何だっけ?簿記だっけ?落ちてたじゃん。ごめん。ごめんて」

椿はマッチでタバコに火をつけようとするが苦労している

「いつも感謝してるよ。去年とか。一昨年かな。1年生の冬休みのときも、こうやって物資を部屋まで持ってきてくれたじゃん。インフルって辛いのね。結花が神様に見えた。あのときの経口補水液は美味しかったなー」

椿はタバコを吸うのを諦める
椿は栄養ドリンクの瓶を開けようとする

「こんなこと頼めるのは結花くらいだよ。え?バイト先?店長しか連絡先は知らないし。希薄だからね。大学も、うーん。ちょっと家までってなるとねー。ほら、結花には借り?貸し?もあるし。うん。助け合っていこうって思えて。これって私だけ?そっか。結花もそう思ってるんだ。嬉しいね。なんか」

椿は栄養剤を開けるのを諦める

「そういえば、結花ってタバコ吸わないんだっけ?そっか。あ、そうなんだ、お父さんが吸ってるんだ。へーそう。あ、あと、エナジードリンク?ってあんまり飲まない?そっか。あ、そうなんだ。あー。いたね、お兄ちゃん。写真、見た見た。へー。忙しいんだね。うん。ありがと。え?見てない」

椿は袋からアロマセットを取り出す

「おしゃれ。無印にあるんだ。へー。多分、大丈夫。そんなに繊細じゃないから。そうなんだ。凄いね。リラックスと鎮痛作用。知らなかった。うん、ありがとう。うん、分かった。また連絡するね。はいはーい」

椿は通話を切る
椿はアロマセットを組み立てる

♪着信

「はい。うん、メールで送った通り。とりあえず健康そう。大丈夫。いいよ。母さんもわざわざ来るの大変でしょ。え・友達に頼めたから。心配しないでいいって。え?タバコ?吸ってないよ。吸えないし。うん。ちゃんと栄養も取るよ」

椿は袋から野菜ジュースとカロリーメイトを見つける

「分かったって。大切にするから。連絡も取るようにするから。はい。はーい。じゃあねー」

椿は通話を切る

「なるほど」

椿はタバコを捨てる
椿は野菜ジュースにストローを刺す
椿は野菜ジュースを飲む

「まあまあ」

椿は匂いに気づく

「いいかも」

暗転していく

「ありがとう」

END

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