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半身 一人芝居 戯曲

半身


双子の話 一人二役


サス


「私には双子の姉がいる。一卵性双生児で両親ですら見分けはつかない。私は紙を縛らないけど、姉は毎日ツインテールだ」


「まなみ、今日は気分を変えてツインテールで学校に行ってみたら?」

「えー、おもしろそう!じゃあ、ひとみはおろしてね!」

「うん!」


「姉の提案で、今日は気分を変えてツインテールで学校に行くことにしました。まさか、このことが事件を生むことになるなんて……」


地明かり


「どうしてくれるの、この空気。え、じゃないよ。え、じゃ。もう一度、読み上げようか?」


まなみはラブレターを奪われないように読み始める


「入学式で一目見た時からずっと好きでした。二年生になって、同じクラスに成れて、一年生の時よりも近くで過ごし、さらに好きになりました。初めて書くラブレターなのでどういうことを書くべきか、書かないべきかわからないので、書きながらも心臓がバクバクしています。残りの高校生活をあなたと一緒に過ごしていきたいです。大好きです。付き合ってください。竜一より」



「ひとみさんへ」



「ひとみさんへ」


まなみはラブレターを破り捨てる


「ふざけないでよ!何が、入学式で一目見た時から好きでした、よ。全然見分けついてないじゃない。にわかなの、にわかなの?私たちのにわかなの?何?一卵性双生児だから?そんなの、好きだったら何とかしなさいよ!愛の力とかで。しかも、ラブレターの内容もさ、好きになった理由、一目ぼれしか書いてないじゃない!み見た目じゃん、見た目しか好きじゃないじゃん!その上、双子の姉妹を間違えるって。髪型か?髪型で見分けたのか?同じ見た目でツインテールだったから、ひとみのこと好きになったのか?これか、この髪型が良いのか?ばっかじゃないの?」


まなみは髪をほどく


「もお、最低。ねえ、分かる?私、初めてラブレターもらったんだよ?こんな、宛先の間違った、拙いラブレターでもさ、最初に読んでいるときはワクワクしたんだよ?一目ぼれじゃんって嬉しくなったし、クラス一緒で嬉しいなんて光栄だし。竜一君が頑張って書いてくれたんだなって思って。付き合ってもいいかなって、思ってたんだよ。え、そうだよ。竜一君のことは、結構いいなって思ってたよ。さっきまでは。何?え、ちょっと待ってよ」


竜一は去る


「ひとみ、いいな」


暗転

明転


まなみはラブレターを読んでいる


「入学式で一目見た時からずっと好きでした。二年生になって、同じクラスに成れて、一年生の時よりも近くで過ごし、さらに好きになりました。初めて書くラブレターなのでどういうことを書くべきか、書かないべきかわからないので、書きながらも心臓がバクバクしています。残りの高校生活をあなたと一緒に過ごしていきたいです。大好きです。付き合ってください。竜一より」



「まなみさんへ」


まなみはラブレターを破る


「はぁー、そういうことじゃないんだよ!バカじゃないの?そういうことじゃないんだよ、もう間違った時点で違うんだよ」


まなみは破れたラブレターを投げつける


「バカ!死ね!」


竜一は去る


ひとみが後ろから現れる

ひとみはまなみの髪をツインテールにする


「なんでツインテールにしたの?」

「ごめんね、そこに隠れて、ずっと見ちゃってた」

「酷く惨めな気持ちになった」

「お父さんやお母さんも間違えるくらいだし、仕方ないっちゃ仕方ないよね」

「初めてのラブレターだったのに」

「もうあれだね、教育してかなきゃダメみたいだね」

「教育?」

「見分けがつくようにさ」

「つらい」

「よしよし」


暗転

明転


「竜一君へ。昨日は、ラブレターを破っちゃってごめんね。竜一君も初めて書いたモノだったのに。告白も初めてだったのかな。分かりづらくて楽てごめんね。竜一君も、ちょっと慎重であっては欲しかったけど。付き合うことは、今は考えられないけれども、これからの高校生活で仲良くしてくれたら嬉しいな。竜一君のことももっと知りたいし。昨日のことは、お互いに、水に流したいです。これが今の私の気持ちです。返事がもらえると嬉しいな。ところで、今この手紙を書いているのは、まなみでしょうか、ひとみでしょうか。どっちでしょうか?」


end


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