一人芝居 戯曲 邂逅
↑データ
↓あらすじ
何も起きない話
↓本文
邂逅
のぞみは扉の前で座っている
♪着信
のぞみはスマホを見る
「もしもし。何?久しぶり。何?こんばんは。何?いや、話すことないから。用事があるなら、何?そうだよ。話したくないから、無視していた。だから、用事は何?え?良いでしょ、何でも。たまたま、今はやることがなかったから。出てあげただけ。そう。だから、何、用事は。うん。元気だよ。バイバイ。え?いいよ。着払いで送るのも気が引けただけだから。あれで全部だった?そう、よかった。じゃあこれからみずきのモノが見つかったら、捨てるね。じゃあ、バイバイ。え?ないない。会いたくない。怒っている訳じゃなくて、冷めただけだから。うん。仕方ないよ。みずきは悪くないから。うん。え?うん。わかった。戸締まり?」
のぞみは後ろを見る
「わかった、気を付けるよ。最近は気を付けているから。うん。ありがとう。じゃあ、バイバイ」
のぞみは電話を切る
「あーあ」
♪着信
「はい。もしもし。うん、大丈夫。え?何で知ってるの?あー、なるほど。いや、母さんがSNSをやっているのが意外で。大丈夫、鍵屋さんに電話して、来てくれるみたいだから。うん。交換もするよ。寒いけど。厚着してるから大丈夫。え?うん。別れたけど。あー。あのさ。提案だけしてみて良い?SNS見ないで欲しいなって。マメに連絡するようにするからさ。まあ、そうなんだけど。はいはい、母さんが正しいです。え?元気、元気。うん。年末に帰るから。あ、着信が入った。うん。バイバイ」
のぞみはかけ直す
「もしもし、あにき?どうしたの?あー。そういえば知ってた?母さん、SNSチェックしてるみたいだよ。うん、それでさっき電話が来た。うん、平気平気。鍵屋さんにも連絡したし。うん。だから、あにきのSNSもチェックされているかもよ。ねー。鍵ついていない方は全然。見られて大丈夫。あにき、アイドルにリプとか送ってるじゃん、見られて平気?恥ずかしくない?あ、確かに。誰のポスターだっけ?AKBの誰かってことまでは覚えてるけど。あー。思い出した。うん。確かに、ずっと部屋に貼ってたもんね、しかも天井に。そりゃ、恥ずかしくないね。うん。帰るよ。あにきは?そう。分かった。うん。またね」
のぞみは電話を切る
間
♪着信
「はい。こんばんは。うん、さっきぶり。おー、よかった。でしょ。乗り換え、楽だったでしょ。大江戸線は深いからね。え?こちらこそ。楽しかった。美術館なんて初めて行ったよ。全然。君がコソコソ解説してくれたから、楽しかった。今度は予習してから行きたいなって思ったよ。え?ほんと?行きたい行きたい。うん。また一緒に行こう。うん。え?外。えーとね。鍵が見つかんなくて。まあ。鍵屋さんには電話して、そろそろ来ると思う。うん。厚着だったでしょ?だから、大丈夫。気をつけます。寝なくて良いの?明日は早いんでしょ?うん。またね。おやすみ。ばいばい」
のぞみは電話を切る
「おそいなー」
のぞみはドアノブを回す
「あ、鍵かけ忘れてた。みずきごめん」
のぞみは扉を開ける
END
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?