優しい人 一人芝居 戯曲

データ↑

あらすじ↓

優しい家族の話

本文↓

優しい人

舞台上

机。椅子。リンゴ。果物ナイフ。ビニ―ル手袋。ウエットティッシュ。

💡明転

紅井実が椅子に座っている

📢流水音

「え?コンビニに行ってくる?逃げるの?ちゃんと話すって言ったよね。あー。持ってきてないんだ。迂闊ね。わかった。ちょっと御手洗いで待ってて」

実は部屋を出る

実はポーチを持って戻ってくる

実は御手洗いに向かう

実は戻ってくる

実はウエットティッシュで手を拭く

実はビニール手袋をはめる

実はリンゴを桂剥きし始める

📢流水音

「使えそう?よかった。どうぞ。座って。え、これ。リンゴ。実家から送られてきたの。でも、彼、あんまり果物を食べる習慣がないから。台所にあって。もったいない」

実は手を止めない

「どっちが、浮気相手なのかな?」

実は手を止めない

「そういえば。お名前は?聞いてなかった」

実は手を止めない

「どうも。私は赤井実です。初めまして」

実は手を止めない

「そうだよ。それがどうかした?」

実は手を止めない

「そう。で、どっちが浮気相手なのかな?あなたはどっちだと思う?」

実は手を止めない

「あー、そうなんだ。二回目のデートの帰りだったんだ。家に来た行って言ったのはどっち?あなた。へー」

実は手を止めない

「名前で読んで。わたし?いいえ。ここには住んでないよ。住めるわけないし。流石に同棲している部屋に来たら、鈍感なあなたでも、色々と気が付くでしょ?」

実は手を止めない

「あなたは彼のことが好きなの?そう。私も好きよ」

実は手を止める

「良かった。彼のことを好きな人で」

「遊びだったら。刺してたかも」

実は手袋を外す

「冗談よ。ちょっと待っててね」

実は席を立つ

実はタッパーを持ってくる

実はタッパーにリンゴを入れる

実はタッパーを差し出す

「はい。お土産。家で食べて。遠慮しないで。美味しいから。タッパーも返さないでいいから。そう」

実はタッパーを置く

実は果物ナイフを拭き始める

「え。話は終わりよ?あなたから話したいことでもあるの?そう。じゃあ、さようなら。あ。彼に伝えたいことある?」

📢扉の開閉音

📢階段の音

「酷いこと言うわね」

💡暗転

💡明転

📢扉の開閉音

実はリンゴを食べている

「おかえり。ん?あの子?帰ったよ。事付け頼まれた」

実は正弘に耳打ちする

「酷いよね」

「大丈夫だよ。うん。かわいい弟のためだもん。これくらいなんでも無いって」

実は正弘の座っている椅子の後ろに立つ

「そうだよね。流されちゃうこともあるよね。でも、今回はちゃんとお姉ちゃんのことを頼れて偉いね」

実は正弘を撫でる

「良い人が見つかると良いね。お姉ちゃん手伝うから。ね」

💡暗転FO

「大好きだよ」

💡暗転

END

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