言霊 一人芝居 戯曲
データ↑
あらすじ↓
優しい嘘の話
本文↓
言霊
リビング 机 下手に父の遺影母子家庭
瑞樹は上手からリビングに入ってくる
「母さん、おはよう。今日?休みだよ」
瑞樹は遺影に線香を上げる
「ん?いってらしゃい。え?ああ、珍しいねインスタントカメラなんて。父さんの荷物から出てきたんだ。良いじゃん。父さんも桜は好きだったし。隣に写真を置いてあげたら良いんじゃない?確かに。どっちもこの時期に行ってたね。あー。僕は駅前の桜の方が好きかな。大っきい木で迫力あるし。え?父さんに聞いて欲しい?父さん?母さんが駅前の桜か近くの公園の桜か、今日どっち行くか決めかねてるんだけど、どっちがいいと思う?うん、うん、なるほど、分かった。父さんも駅前の方が良いんじゃないかなってさ。え?ちゃんと聞きたいって?ちゃんと聞いたよ。分かった、分かったよ」
瑞樹は遺影を持ち立ったまま気を失った雰囲気になる
「文香。駅前の桜を撮りに行ったらどうだ?今日は天気も良いみたいだし、花見日和じゃないか。え?子供の前って?瑞樹はどこにもないじゃないか。大丈夫だ。瑞樹の前では文香なんて呼ばないよ。気恥ずかしいじゃないか」
瑞樹に母さんは抱きつく
「瑞樹が見ていないからって急にどうした?え?寂しかった?ごめんな、文香、先に死んでしまって。どうだ最近は。そうか。瑞樹がいるだろう。頼もしいな。そうだな。遅くなる前に行ってきた方が良いな。ああ。使ってくれ使ってくれ。俺にはもう使えないから。ああ、行ってらっしゃい」
母さんがリビングから出ていく
「疲れた。結局、駅前のに行くじゃん」
瑞樹は遺影を持って鏡を見る
「父さんのフリをするようになってますます似てきたかも。嫌だなー」
瑞樹は笑う
「嘘だよ父さん。母さん未だに父さんのこと大好きだよ。父さんの言うことしか聞かないくらい。母さんのことは任せてね」
母さんがリビングに帰ってくる
「ああ、どうした?え?桜餅?ああ、瑞樹はこしあんが好きなんじゃないか?きっと喜ぶと思うぞ。行ってらっしゃい」
母さんがリビングを出てく
「今のは流石に僕で良かったか」
END
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