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モノローグ 適応

あらすじ
→素直な話

データ

本文↓

適応

公園
みずきはベンチに座っている

「お帰り。あった、ゴミ箱?そっか。捨ててきてくれてありがとう」

みずきは指をさす

「得意だったなーって。懐かしくなってた。知ってる?砂山のギネス記録。2mとか。だったら面白いなって。うん。知らない」

のぞみは座る

「寒くない?そう。だったら、もう少しここにいない?やった。公園、好きだよ。特に、初めて来る公園は。生活を感じるっていうか。家族とか、恋人とか、友達とか、関係性が見えて。あと、子供が多いのも好。ん?接するのは嫌いだよ、子供は。でも、ほら、経験があるから共感できるっていうか、感情移入できるっていうか。私、感情移入できる人種が少ないんだよね。仲が良さそうな家庭に違和感を持つし。幸せそうなカップルに窮屈さを見るし。睦まじい友人関係に我慢を感じるし。イイ性格でしょ、私」

みずきは手をふりはらう

「ごめん。手をつなぐのは嫌いかな。悪い印象しかなくて」

「別れよっか。疲れるでしょ?嫌いなことばっかりで。捻くれた見方ばかりで。今日だってそう。のぞみがせっかく、動物園デートしよう、って言ってくれたのに、反論しちゃって。結局、観光地でもない公園でのデートになっちゃって。嫌いになったでしょ?」

「でも、本心だから仕方が無いんだよね。本当に、もう。のぞみのことが好き。本心。動物園が嫌い。本心。動物たちがかわいそうに見える。本心。そう感じない人間たちが集まっている空間が、もう吐き気を催す。本心。本心だから。仕方がない」

「手をつなぐのって仲がよさそうだよね。親密だよね。家族と恋人ぐらいじゃない?つなぐの。下手したら、セックスよりも親密を表す記号かもね。手をつなぐって。体だけの関係だったら、わざわざ外で手を繋ぐことなくない?ん?想像だけどさ」

「私にとっての現実は作品の中にはなくて。体験からしか形成されてないからさ。本も映画もほとんど見ないからさ。え?ああ。子供のころかな。お母さんと手をつないだ時は、いつも急いでいて、私が足手まといに感じた。お父さんと手をつないだ時は、私の意思を無視して引きずりまわされてた。それこそ、動物園とか。水族館とか。牧場とか」

みずきは立ち上がる

「別れよう!のぞみのために。疲れたでしょ?」

「うん。そう。私が疲れた。最後の最後に嘘ついたね、私。流石。見抜けるようになったんだ」

のぞみが立ち去る
みずきは大きく手を振る

「ありがとう!大好きだよ!本当に!大好きだよ!のぞみ!ばいばい!」

みずきは見送る
みずきは砂場を見る

「2mはないかな」

END

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