初めまして 一人芝居 戯曲
あらすじ↓
海の話
データ↓
本文↓
初めまして
📢海の音
「海さん。初めまして」
明転
「長野から来ました!今日までずっと会いたいと思って生きていました。海さん。やっぱり大きいですね。いや、大きいというか、広いですね。もしくは、でっかい!」
📢海の音
みずきはサンダルを脱ぐ
「では、失礼します。おお!砂浜ってこんな感じなんですね!海さん!砂浜も初めてなんですよ。なんと言うか、公園の砂場とは違いますね」
📢海の音
「独特な香りですね!海さん!嗅覚で感じることは疎かになっていました。不覚!これが磯の香りってやつですね!」
みずきは深呼吸する
「はあ。少し落ち着きました。興奮しちゃっていて。この年まで、長野県を出たことがなくて、ようやく県外に出て、海さんに会いに来れたんですよ。海を見ずには死ねないなって。そう思って生きてきたんですよ」
📢海の音
「ようやく死ねる」
📢海の音
「海さん、すきです。こんなことを言っても、何で、とか、どうして、とか、聞いてこない。アドバイスもしてこない」
📢海の音
「何でって、死にたいから死にたいのに。どうしてって、死にたいから死にたい。私のことよく知りもしないくせに、アドバイスなんて」
📢海の音
「あ、ごめんなさい。愚痴っちゃって。海さんは聞き上手ですね。大きい。優しい顔だし。こんな私でも、受け入れてくれそう」
📢海の音
「死ぬことってダメなことですかね?海さんは、たくさんの生と死を知っているでしょ?それどころか、海さんの中で今も繰り返されていますよね?日常じゃないですか?」
📢海の音
「そうですか。あ。しょっぱい。海さんて、味もするんですね。カップラーメンのシーフードとは大違い」
📢海の音
「え?孤独なんですよ。海さん。こうやって、人間以外に話しかけるのって変なんですって。」
📢海の音
「えーと、例えば、山とか。雲とか。川とか。長生きだし、相談しがいがあるって言うか……。こんな風に、海さんの声と顔とか、一緒に感じれる人がいたら嬉しいんですけど」
📢雨の音
みずきはリュックから折り畳み傘を取り出す
「降ってきましたね。笑っちゃう。ばれちゃいましたね。死のうって言っている人が折り畳み傘を持ってきている。しかも、二本も。勇気がないんですよね、私」
📢海の音
「え?確かに。叫んでいる場面とか見たことある」
📢海の音
「友達が欲しい!」
📢海の音
「はい!スッキリしました!え?」
みずきは横を見る
📢海の音
「よく話されるんですか?え?仲間だ」
📢海の音
「え?無理ですよ。確かに傘は余っていますけど。どう話しかければいいかも分かりませんし。え、今の海さんへの印象?」
間
「分かりました」
暗転
傘の音
明転
「雨の海さんて優しいをしていません?」
暗転
「一緒ですね」
end
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