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緑の空 一人芝居 戯曲

↑データ

↓あらすじ

大切な場所を守りたい人と、大切な他人の命を守りたい人の一人芝居。

↓本文

緑の空



場所は屋上

空き缶がいくつかある


SE 扉の音


瑞希が扉を開けて屋上に入ってくる

瑞希は二本の缶ジュースを持っている

瑞希は柵まで歩く


「いる?」

「アタリで出てきたものだから、気にしなくてもいいのに」


瑞希は缶を開けて飲み始める


「飛び降りないでね」


「ココ、良い景色だよね」

「見える?あそこのビルの間、微妙に海が覗ける」


「不幸自慢しよっか」

「え、不幸を背負ってるような顔をしているから」

「まず私からね」


瑞希は包帯をほどいて自分の手首を見せる


「5年前の傷なんだけどさ。未だに、たまに、膿んじゃうんだよね」

「高校時代いじめられててさ、もう整理はついたんだけどさ」

「珍しいよね。心の傷は癒えたんだけど、体の傷が癒えてないんだよね」


瑞希は包帯を結びなおす

瑞希は缶ジュースを薦める


「いらないか。まあ、好きだからいいけど」

「君の不幸自慢も聞かせてよ」

「見せてくれてもいいけど」


瑞希は話を聞く


「へー。大変だね」

「みんな色々あるってことかな?」

「この辺で一番高いマンションだからさ、空が広くて清々しくない?」


瑞希は缶ジュースを開ける


「私はさ、死ぬつもりで、ここに来たことがあるんだよ」

「丁度、手首を切っていたころ」

「でもさ、ここ来たら、なんか死ぬ気がなくなっちゃったんだよね」


瑞希は缶ジュースに口をつける


「ちょっとぬるくなっちゃった」

「下から、君が見えたんだけどさ、昔の自分に見えたんだよね」

「今にも死にそう」



「ここは私にとって大切な場所なんだよね」

「ここに来れ無くなったら死ぬくらいには、大切かな」

「命の恩人みたいな感じだし」


瑞希は空き缶を拾う


「だからこうやってゴミ拾いとかしている」

「感謝的な」



「ここで死ぬのは止めて欲しいな」

「誰かがここから飛び降りたらさ、こうやって、ここに立ち入れなくなるんだよね」


陽が傾いていく


「帰るの?そっか。またね」


SE 扉の音



瑞希は少年を見つける

瑞希は少年に手を振る


「死んじゃうんだろうな。今日が最後か」


暗転

明転


花と缶ジュースが舞台に供えられている


END

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