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一人芝居 戯曲 すみの友達

↑データ

↓あらすじ

最初の友達の話

↓本文

すみの友達

椅子とテーブル
友達は椅子の後ろに立っている

「私を無視し始めてから、生きやすそうだね。友達もできちゃって。小学生の頃までは、私さえいれば他の友達はいらないって言ってたのに。まあいいけど。幸せになってください。けど、あれだよ、みずきの初めての友達の座は譲らないし、譲れない確固たる事実だから、それを忘れないでね」

友達はみずきの頭を叩く

「まあ。触れないけど。イマジナリーだから。今、話している子から教えてもらったんでしょ。イマジナリーフレンドなんて、そんな難しい言葉。みずきの興味の範囲じゃあ、まず目につかない単語だもんね。分かるよ。十年来の付き合いだもの。あーあー。そんな言葉を知らなければ私は友達でいられたのかもなー。そう思うと」

友達は中指を立てる

「まあ見えないんだけど。あだ名で呼ぶようになったんだ。仲がよろしいこと。みずきはあだ名で呼ばれてないんだ。じゃあ、無視され続けているし、暇だからみずきのあだ名を考えてあげようかな」

「私の名前って?あ、私は名前が決まってない。は?嘘。えー。いや、もらってないもらってない。決まってない、決まってない。みずき!」

友達はみずきにチョップする

「まあ、触れないんだけど。はー。みずきが忘れたら、私は死んだようなもんなんだからね?あ、でも私の自我があるってことは、無意識の記憶には私は残っているのかな。というか、イマジナリーフレンドって自我なんてあるのかな。まあ、私がわちゃわちゃ考えられているってことは、きっとあるんだろうね。難しい。是非とも誰かと討論したいけど、相手もいないし。あーあ、みずきが複数人のイマジナリーフレンドを作っておいてくれれば、討論できたのに」

「楽しそうだね。二人あや取り?わー。私がみずきと一緒にできなかった遊びだ。実在しないから。楽しそう」

友達はあや取りを見ている

「楽しそうだね。へー。イマジナリーフレンドも感情ってあるんだ」

「まあいいや。みずきが生んでくれなかったら、存在できなかったわけだから。仕方ないよね。みずき。友達がいなくなったり、何でもいいけどさ、必要になったら、また見つけてよ」

友達はみずきの首を絞める

「殺せないけど。あー、そこ、ちがうよ!おかあさんから教わってたでしょ!二人あや取り!あー、あー」

暗転

📢心電音

明転

「久しぶり。覚えてる?そうそう、子供の頃。うん。見えなくなった友達。今際の際まで放って置かれたんだよ。ひどいなー。夢かもね。もう、目も見えないんでしょ。喋れないんでしょ。管まみれで。老いちゃって。いいでしょ。私は、子供の頃から変わらないでしょ?成長できなかったからね、ある日から私はいなくなったんだから。幸せな人生だった?そう。え?」

友達はみずきと握手する

「触れないけど。あ、名前!名前が欲しい!死ぬ前に、つけて。え?聞こえない。もっと口を大きく開けて。読唇するから。大変だよね。あー。みずき。お揃い。もらっていい?やった!ありがとう、みずき!」

みずきはみずきに握手を求める

「あ、さわれた?暖かい」

「冷たい」


暗転

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