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一人芝居 戯曲 空平線

データ↑

あらすじ↓

空平線の話

内容↓

空平線

📢海の音
📢海猫の声

明転

「海猫だ。え?今、鳴いていた生き物。あー。確かに。鴎の可能性も捨てきれないね。考えたことなかったかも。海にはよく来るんだけど、家近いし。一々、声の主なんて調べてなかった。確かに。海猫か、カモメか、区別できないかも」

📢波の音

「でも、ここでそんなこと考えたくはないな」

📢波の音

「こうやって、足だけ海に入って、遠くの水平線か空平線を眺めるのが好きなんだー。子供の頃から。え?空平線。うん、空平線。海から空へ変わる境界線が水平線なら、空から海へ変わる境界線は空平線。でしょ?意味が一緒?君にはそう思えるんだね。私には違う。え?ないよ?私が作った造語。空平線」

📢波の音

「さて、私は今、どっちを見ているでしょうか?」

「正解は」

📢大きな波の音

表情

「すきだよ、海。うーん。こことか、子供の頃から来ていた思いでの場所っていうのもあるけど。」

📢波の音

「私、曖昧なモノが好きなんだよね。さっき、鳴き声の区別がつかなかったでしょ?なんか、海でよく聞く鳴き声だなって。流石に、今では鳥ってことは推測できるけど、子供の頃は分からなかったし、それでワクワクした」

📢海猫の声

「この音が、海猫なのか、鴎なのか。鳥の鳴き声か。魚の鳴き声かもしれない。もしかしたら、波の音かもしれないし、風の音かもしれないし。海の声や、空の声の可能性だってある。ありえない?想像力が乏しいな、君は。こういう、想像力の余地がある、曖昧なモノが好きなんだよね」

📢波の音

「こうしているのが好きなのもそう。あ、人って十センチの水深で死ねるんだって。ちょうど、今、私の足が入っている深さ位かな」

📢波の音

「だから、私は今、死ぬ可能性の中にいる。言い換えれば、ちょっと死んでいる」

📢波の音

「生と死の狭間にいる。曖昧なところにいる。なんか素敵じゃない?君も少し死んでいるんだよ。ねえ、ちょっと実感してみてよ」

「どう?良くない?わかんないか。少し、残念。分かり会えるかもって思ったり思わなかったりしていたのに」

「あ、空平線に日が溶け始めたよ。この時間も好きだなー。夕方と夜の狭間で」

📢波の音

「帰ろうかな。足も冷えてきたし」

みずきは海に背を向ける
みずきは海から出る

「あ」

みずきは海にふりかえる

「そういえば、君は誰?」

📢大きな波の音

表情

暗転

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