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一人芝居 戯曲 ついていい嘘

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あらすじ↓

嘘つきの話

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ついていい嘘

「久しぶり。え?会えると思ってたの?どうして?バクのぬいぐるみ捨てちゃったの?なんで?そうだよ。バクは夢を食べるけど。あ、母さんと会うために捨てたんだ。大丈夫だよ。ぬいぐるみのバクは夢は食べないから。え?ぬいぐるみのバクはね、蜘蛛とか食べてくれるよ。朱音は蜘が苦手でしょ?守ってくれるから。そうだよね、別の部屋に置いているだけだよね。起きたら、朱音の部屋に戻してあげなね。朱音のこと守ってくれるよ。母さんからのプレゼントだし。ね?」

母さんは朱音と並んで座る

「え?もちろんだよ。母さんは、なんでも知っているよ。牛乳が白い理由?牛はね、本当は真っ白なんだよ。そうそう。白黒になるために、牛乳に体の表面の白を溶かしているの。雄?さあ、母さんはメスのことしか分からないよ。女の子だし。そうだよ。そうね。雄のことは父さんに聞いてみたら?なに?バナナの皮が食べれない理由?食べれないの?母さんは食べないけど。唯は食べたこと無いでしょ?試してみたら?食べれるかもしれないし。え?母さんは嫌いだったな。死ぬ前のことだから忘れちゃった。え、カラスがゴミ捨て場に集まる理由?ご飯を食べに来ているからだよ。ん?そうだね。他の鳥は、ゴミ捨て場に集まらないね。え?食べてないよ。うん。カラスはゴミ捨て場にデリバリーしてもらってるんだよ。嘴で紙に食べたいものを書いて。マックとかモスとかに紙を持っていって。袋に入れてもらって。ゴミ捨て場に置いてもらうの。カモフラージュ。カラスは代金として、盗んだ宝石とかを渡しているから、大っぴらには買い物できないの。そうだよ、今度カラスに聞いてご覧。たまに、喋れるカラスもいるから」

朱音はまぶしそうにする

「もうそろそろ朝だね?え?まだ聞きたいことあるの?栗のイガイガ?雲丹のマネしているの。雲丹のイガイガ?栗のマネ。海が青い理由?空をこぼしちゃったんだって、神様が言ってた。空が青い理由?空って鏡だから、海を映しているの。夏が暑い理由?春が夏風邪をひいたから。冬が寒い理由?秋がインフルエンザになったから。春と秋が丁度いいのは、薬が効いているから。そうだよ。四季は生き物だから」

「違うよ。それも違う。死んだ人は、星にもならないし、あの世にもいかない。大切な人の夢の中で生き続けるんだよ。そして、こうやってたまに会える。そうだよ。朱音が望めば、こうやってまた会えるよ」

母さんは朱音を送り出す

「じゃあまたね。父さんにもよろしく。え?もちろん!朱音がいい子にしてたら、必ず母さんは生き返るから。ほら、朝だよ!行ってらっしゃい!」

「また嘘ついちゃった」

END

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