透明猫 童話
1週間前から透明猫のコロを飼うことになった。
最近、空っぽの家に帰るのが寂しいのである。そのため、猫を飼う必要がある。そう思い至った。
私は小さい頃、それこそ小学生ぐらいの頃に猫を飼っていた。老描のコロを飼っていた。
その頃は両親が仕事で帰って来なくてもまったく寂しくなかった。コロがいたから。
そんな過去の思い出が寂しさの処方箋として猫を飼うことを薦めたのであろう。
コロと名付けた透明猫はとても人懐っこい。はじめて家に来たときから、まるで十年来の友人のように接してくれる。
出かけるときは玄関まで来て見送ってくれるし、帰ってくると玄関で待ち構えてくれる。
本を読んでいたり、料理をしていたり、洗濯をしていたり、私が何かしているとじーっとこちらを見てくれる。
寂しくない。
コロが家に来てから寂しく思うことがなくなった。家が空っぽじゃないから。
最近は家に帰る途中に近くのコンビニで猫缶を買っていく。だから、買い物の袋が缶詰で一個分いつもより重い。
幸せの重さ。
鍵を開ける。
扉を押す。
コロがいる。
寂しくない。
家に入る。
缶詰をしまうために戸棚を開ける。
今日でコロが来てから8日目。
そこには7個の猫缶がある。
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