一人芝居 戯曲 ねこにあこがれて
猫にあこがれて
机にからの薬の空箱
ビニールテープでぐるぐるの瓶が二つ
ゆうきは瓶にミニコーラを詰めている
♪上の階からドンドン音が聞こえる
ゆうきは反応する
「できた」
ゆうきは鼻を洗濯ばさみで挟む
ゆうきは瓶をシャッフルする
ゆうきは瓶をあおる
ゆうきは水で嚥下しきる
「はあ。これで、猫。にゃあ」
ゆうきは鏡で自分を見る
「量子的。2時間くらいだっけ。書かなきゃ」
ゆうきは手紙を用意する
ゆうきは手紙を書く
♪上の階からドンドン音が聞こえる
ゆうきは反応する
「はあ。せっかくだし。うるさい!毎晩毎晩、どんどんどんどん!人の生活圏に来たことないのか!野蛮人!無神経!うるさいんだよ!ばか!あほ!想像力皆無!人類やめちまえ!」
ゆうきは息を整える
「聞こえているかな。どっちでもいいけど。すっきりした。いいよね、猫だもの。ナ゛ァーゴ」
ゆうきはパソコンを見る
「あ、消さないと」
ゆうきはパソコンを操作する
「恥ずかしいモノ、別にないや。あ、履歴」
ゆうきはパソコンを操作する
「おわり。スマホも、かな」
ゆうきはスマホを操作する
「おわり。独り言、多くなったかも。さっき大声を出したからかな。まあ、いいや、猫だし。猫も一匹で鳴いているし。ナーゴ」
ゆうきは手紙を書く
「眠くなってきた。どっちだろう。間に合わないかも。電話しなきゃ」
ゆうきは電話をかける
「もしもし。あの」
間
ゆうきは電話を切る
♪着信
ゆうきはワン切りする
♪着信
「もしもし。はい、そうです。え?よくわかりましたね。あ。え?何で知っているんですか?
しましたっけ?ああ、卒業式で。そういえば、そうですね。え?あ。生きにくくて。へー。幹事をやっているんですね、流石です。
行かないですね。気まずくて。いじめられてたんですよ。謝らないでくださいよ。救われていましたから。委員長がいなかったら。
え?確かに、懐かしい響きですね、委員長。あー。なんか、感謝を伝えたくて。ありがとう。何もないですよ。すっきりしました。うん。そうですね。
また電話します。運が良ければ。さようなら」
ゆうきは電話を切る
「言えた。よっしゃ」
ゆうきは電話をかける
「――もしもし?あ、留守電か。お母さん生んでくれてありがとう。お父さん、育ててくれてありがとう。
自転車の練習中にたたかれたのが一生のトラウマでした。そこはうらんでます」
ゆうきは電話を切る
「言えた」
ゆうきは立ち上がる
ゆうきはたちくらむ
「ナーーーゴ。どっちの眠気かな。どっちでもいいや。ニャーゴ。猫だし。半分死んでるし」
ゆうきは遠くを見る
「でも半分生きてるんだよな」
間
「量子的な私、好きだったな」
暗転
倒れる
アラーム
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