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素直 一人芝居 戯曲

データ↑
あらすじ↓
吹っ切れる話
本文↓

素直

部屋。机。椅子。花火が見れる二階建てのアパート。机にはパソコン。スマホ。無線イヤホン。

♪ミンミンゼミ

「めっちゃ元気じゃん」

夏海は浴衣を着ている

夏海は素直と書かれた紙を壁に貼っている

「よし」

夏海はパソコンで曲をかける

♪著作権の切れた洋楽

夏海は口ずさむ

「うーん。未だに良さが分からない」

♪着信

夏海はイヤホンをつけて電話に出る

「もしもし?たかし?うん。久しぶり。久しぶりでしょ?付き合っていた時には毎日のように電話してたんだから。そうだよ。だから、一ヶ月ぶりは久しぶりだって。そうだよ。元気してた?まあ、そうだけど。え?そろそろ?」

夏海は窓から打ち上げ花火を見る

♪花火の音

「たかしは見えてる?良かった!こっちも、見えてるよ。小さくだけど。音も聞こえるよ。小さく」

「え?そう。たかしが教えてくれた洋楽。せっかく、久々にたかしと話すから。つけてみた。まあ、良さは未だに分からないんだけどね。そうだよ。分からずに聞いていたんだよ」

♪花火の音

♪花火の音

「まさか、覚えているとは思わなかったよ。え?何をって。約束のこと。また二人で見たいねって。私は覚えていたけどさ。でも良かったね、お互いの家から見れて。え?会えないって。もう別れたんだから」

♪花火の音

「それに、たかし、彼女できたでしょ?」

「やっぱり。え?聞いてないよ。でも、できたんじゃないかなって。SNS とか、この間の電話の雰囲気とか。分かるよ。人類の勘って凄いんだからね」

♪花火の音

「ほら、たかし、優しいから。約束を守ろうとするし。花火大会、二人で行こうって誘っていたら、来てたでしょ?ダメだよ。彼女さんに悪いし。ね?」

♪花火の音

「何か話したいこと、あるでしょ?分かるよ。そう。私は人類だから。ちなみに、どっちがついで?え?話したいことがあったから約束を利用したのか、約束を思い出して機会にしたのか。そうね。どっちもだよね。で、何ですか?え?」

♪花火の音

「おめでとう。おめでとう!結婚するんだ。うん。うん。そうなんだ、スピード婚じゃん。おめでとう!え?怒らないよ。だって、別れた後に知り合った人でしょ?疑わないよ。たかしのことは。だから、純粋に嬉しいんだって。好きな人が幸せになれそうで」

「ちょうどよかった。私からも話したいことがあるんだよね。聞いてくれますか?」

「あのね。もう連絡を取らないで欲しいの。結婚もするし。嫌じゃなかったよ。今日も、先月に約束を思い出して聯絡をくれたのは嬉しかったけど、こうやって同じ花火を見れているのは嬉しいけど」

♪花火の音

「辛いっちゃ、辛いんだよねー。好きだから。好きだからこそ。もう、たかしの特別じゃないんだって。そう思うとさ。謝らないでよ。たかしが悪いわけじゃないから。私の問題。電話も着信拒否するし、ラインもブロックするし、SNSもブロックする。あと、引っ越すんだよね、ここ。だって、たかしの香りを感じるし、それに」

♪花火の音

「夏になると思い出しちゃうから」

♪花火の音

「だから、連絡が取れなくなっても気にしないでってこと。それが、伝えたかったの。え?馬鹿じゃないの?結婚式に行くわけ無いじゃん。たかし。ばか。そうだよ。無理。絶対、嫌だ。うん。勝手に幸せになってください」

「お互いに話したいこと話せたね。よかった、よかった。あ、電源切れそうだから切るね?え。充電?あのね、察して。そう、察して。結婚前に忠告。人類は勘が良いのですが、たかしは人類なのに感が悪いです。優しいけど、鈍いです。奥さんとお幸せに。ああ、0%になった」

夏海は電話を切る

「幸せにね」

夏海はスマホを操作する

夏海はCDを取り出し捨てる

夏海は素直の紙を見る

「頑張ったぞ、私」

♪花火の音

「ここから見る最後の花火か」

♪ミンミンゼミ

「うるさい!元気だな、もう」

END

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