院生森
136字の(雑記)を詰めている
いきぬきまぐれ。新↑
中学生編
(雑記)二人で違う色の襷をかけ競ったことを覚えていますか衣替えの白にゆれる木漏れ日を覚えていますか朝露に濡れる新緑を覚えていますか夕日に照らされた髪の艶やかさを覚えていますか雪の日の白く細い息とまつげを飾る結晶を覚えていますか桜吹雪で迷子になりかけて手を繋いだことを覚えていますか
(雑記)ストロベリースペシャル、乳製品いちご果汁砂糖水あめと読み上げる声を右から左に受け流しながら俺は思った。 このアイスあんまり冷たくねえな。 そのまま声に出すと栄養成分の読み上げが止まり、オレンジ色のキャップが馬鹿じゃねえのと言ってきた。 おとなしく食べ進める事にした。
(雑記)旅立ちのホームから見た海は白っぽくそらに滲んでいた。小舟でずっと漕いでいけば空へ登れそうな気がした。
焼き林檎美味しいし簡単です。吉祥寺の喫茶店で一度食べてから好きになった。
(雑記)りんごの芯をくり抜いてレーズンと砂糖を適当に入れる。くそ。甘くすりゃあ良いんだろ。お前の嫌いなシナモンも入れてやるよ。辛いとか言って舌をこちらに見せるんだろうな。皮の赤で目がチカチカする。オーブンからはすぐに清涼な青さのないひたすらに甘ったるい焼き林檎の香りが噴き出した。
(雑記)大家さんの家は竹林の中にある。 ブロック塀のかたつむりが這った跡を横目に坂を上って左に曲がると塀が途切れる。そこから竹林に分け入って飛び石を下って行く。 坂の下にも入り口を作ればいいのに大家さんはそうしない。 上ってから敷地に入るのがいいんだよ。 疲れるだけじゃない?
一緒に学ぼうフランス語 みたいなことしようかな
(雑記)僕らが愛してやまない彼女らは 去年の今日は8月の終わりにしてはやけに涼しかった。日本の夏独特の纏わりつく暑さはなくどことなく空気の軽い日。袖口をなぞっていく風は爽やかだった。確か、そう、電気街にいたのだ。ガラスの向こうに並ぶディスプレイ全てに、アナウンサーの姿が映った。
君と痛いだけ 君と遺体だけ 君と居たいだけ
僕の、まち。
(雑記)20分程で頂上に着いた。緩やかだが舗装されていない坂道は、長いこと歩いていなかった僕を疲れさせるのには充分だった。君は休む暇もくれずにほら、と上ずった声で言った。こちらを向いてくれないけれど、君の瞳に街の灯りが反射している事がわかる。しゃがんでいても僕の、僕の町が見える。
夏はフォトジェニック。
(雑記)実は一昨年、落ち葉が堅いことを知ったのです。ええ、コンクリートに落ちるとカキンと音がするでしょう?私の田舎では木は土から生え、赤くなった葉は土の上に落ちます。音はしません。はじめはこの音はどこからするのか訝しがったものです。今ではあのカキンという音で秋の終わりを知ります。
(雑記)風も身にしみて火鉢のそばに半刻などいても人心地つかぬ頃格子の外からかきんといふ音の聞こえけるまことに寒さも増すやふで、陽の短くなるとあはせて冬の近づきを知るものなり。落ちる紅色の葉の地に落ちてかきんと音を立つることいつの頃からであらふか曾の祖父は音なぞせんかつたといふに。
(雑記)膝まで伸びた草の匂いを覚えていますか向こう岸へ渡ろうとして足をかけた岩のぬめりを覚えていますかふくらはぎを締め付ける靴下の長さを覚えていますか浅い角度にある太陽の赤さを覚えていますか私たちが肩にかけていた鞄の重みを覚えていますか私とあなたが六歳だったことを覚えていますか。