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day30 なんとか最後の夜らしく(帝国ホテルライフ)

昨日から降り続いた雨が止まずに、窓ガラスに水滴をつけていく。
いやあ、ずっと雨だねえ。

明日にはここを出るので、実質的には今日が最終日、そして日曜日。
なんだけどあたしは残念ながらこれから普通に休日出勤だった。

昨日、母に持たされた2つの梨のうち、大きいほうは 従姉のユキちゃんが送ってくれたもので、こちらのほうが甘くておいしいとのこと。
小さいほうはあたしの小学校からの幼馴染が、近くの梨農園に行ったよ、とお土産で家に持ってきてくれたのだそうだ。

とりあえず、小さいほうを半分だけ切って朝食に添える。

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今年初めての梨だ。東を向いて笑わないと。
東が分からなかったので、一応 首が回る範囲180°に軽く笑っておくことにする。
客観的に見たら不気味だから、ここは我に返らないのが正解だ。

おお、甘くて瑞々しい。さわやかな甘みって感じ。
甘くない方を切ったのに、じゅうぶん甘いよ。これもう一つの方はどんだけ甘いんだろう。

半分の残りは、明日の朝に食べよう。さっき共用スペースにパンを焼きに行ったときに、置いてあるラップを少しだけ切ってもらってきてあったから、それで残った梨を包んで、冷蔵庫に戻す。

それにしても、休日出勤とはいえ今日が最後の夜だ。

このままだと、食いっぱぐれを心配しながら会社近くのお店でテイクアウトを買うだけの普通の夜になってしまいそうで寂しすぎるので、この日来てくれそうなキウイ仲間を緊急招集し、つい数日前に「どうかテイクアウトを買っておいてくださいー(泣)」とLINEで泣きついた。

ユキちゃんからもらった大きいほうの梨は、その時にデザートに出せば形になるだろう。

どこのお店のテイクアウトがいいか、友人も頭を絞ってくれたのだけど、結局は、せっかくの帝国ホテルの最後の夜なので、このホテル内のお惣菜を買うのがいいなと思って、帝国ホテルのお菓子やお惣菜、パンやカレーレトルトなどがある1階の「ガルガンチュワ」で売っている”洋総菜”の中から検討する事でまとまった。

”和惣菜”も食べたかったけど、緊急事態宣言の影響でホテル内のレストランもいくつか休業になっていたらしく、和惣菜はすべてお休み中だったので今回は諦める。

洋総菜のうち何を頼むかについて、LINEでやりとりしながら考えてたんだけど、友人の提案してきたのが、”前菜とメイン2品が各自ひとつずつ、それ以外にシェアで2品” (=合計で8品)という、お、おお、それ全部頼むと結構大変な量と金額になるよ?っていう感じだったので、なんとか削って削って、”前菜は各自ひとつずつ、それ以外にシェア4品” (=合計で6品)というところで落ち着いた。

そして、ガルガンチュワはなんとこの時期、閉店がよる8時どころか7時に繰り上がってて、あたしには全く勝算のないお話だったので、予約しておいて7時までには取りに行っておくよ、と言ってくれた友人にありがたーくありがたーく乗っかる。

夜。会社を出て電車を待っていると、キウイ仲間から連絡。
無事にテイクアウトを引き上げて、ロビーのソファに座っているという。
なんとか7時半くらいにはそちらに着けそうだったけど、ロビーのソファって距離はあるけど目の前にフロントがあって、あんまり長い時間いて居心地いいところでもないから、今から30分ちょっとはそのまま待ってもらうことになるのが忍びなくて、余裕あるなら17階のレストラン階の待ち合わせスペースに行ってみたら眺めもいいし居心地もいいはず、と返信しておく。

移動している間、17階に来てみたよ、という写真が送られてきた。
わあ、すごいなこの写真。

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カメラのせいなのか、東京ミッドタウン日比谷が青く光って輝いている。

朝に伝えた予定よりは早く着けて、7時半過ぎにロビーの一つ上の階で合流できた。
部屋まで歩いて、買っておいてくれた6品のテイクアウトをざっと確認したあと、一緒に共用スペースに温めに行くことにする。

テイクアウトというか、お惣菜の販売、なんだな。
テイクアウトって言ったら、すぐに食べられる温かい状態のものを持ってくるような感じだけど、今回のはケーキ屋さんにあるようなガラスケースで冷やして陳列して売っていたものだから、温めるのにひとつひとつ結構時間がかかりそうだ。
しかも、品によって温めの指定時間がどれも違う。

予想通り、共用スペースには誰もいなくて、バルミューダの電子レンジにいっぺんに2品入れ、誰もいないのをいいことに、もうひとつの電子レンジバルミューダも使わせてもらって時間短縮を狙っ……あ、人が来た。

上品そうな奥様が入ってきてこちらを見ている。
その手には我々と全く同じ、ガルガンチュワの紙袋。

さすがに2つの電子レンジを使わせてもらう作戦を続けることはできず、セッティングしていた料理をすごすごと引きあげて友人の方に身を寄せる。

とりあえず電子レンジ1台で温め開始。
その間、温め分数の違う残り2品の、時間を増やしていっぺんにするのと指定通りで別々にするのとどちらが効率的に温められるかをふたりで考えていると、なんともう一人 住人が入ってきて、こちらを見ている。とてもラフな服を着た推定20代の女子で、ぱっと見はコンビニ弁当のような形の黒いパックを持っていた。

え、こんなに共用スペースって混むっけ!?
たいてい いつも人なんか来ないよ!?

最後の夜に、こんなにみんな電子レンジに群がることになるとは思ってなかった。たまーに、人に会うことはあったけど、それも昼夜通してこれまでで3回くらいだ。

それにしても、うちらの温めは申し訳ないけどあと5分以上はかかるよ。
だってまだ始めたばかりだし、残りの品も2分~4分くらいかかる。彼女のお弁当ひとつなら早そうだけど、わさわさとレンジ周りのテイクアウトたちを撤収するのも大変なので、もうこれは待ってもらうしかない。

あたしたちよりも少し早く、奥様の方の温めが終わったようで、20代女子がそちらの電子レンジに向かってくれて安心する。

こちらの5品の温めが終わった時には、女子はもういなくなっていた。持って来た時と同様、紙袋に詰め直して、ふたりで部屋に持ち帰る。
(買った6品のうち2品は前菜なので温めなくていいやつ、+頂き物)


そしてようやく宴です。

「ガルガンチュワ」帝国ホテルのお惣菜
・蛸のトマト煮込みとカポナータ ジェノバ風 (1,100円)(×2つ)
・スパイシージャークチキン (2,300円)
・ビーフシチュー 野菜、ヌードル添え (2,200円)
・チキンマカロニグラタン (1,200円)
・エスカルゴ モンターニュ (2,200円)
・バゲット (450円)(×2本)
・足もみの先生が作ってくれた玉子焼き (プライスレス)

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(ちょっと写真残念ですいません)

やっぱり2品同時に温めようとすると時間が読めなくて、もうちょっとだけ長く温めたほうがよかったかも?ってものもあったりして、冷めてしまうのが不安ですぐに食べ始めたので、ラップや蓋を取って完全にセッティングされた状態を撮るタイミングを逸してしまったのが悔やまれる。

玉子焼きは、テイクアウトに疲れたと嘆いていたあたしの栄養バランスを心配して、足もみの先生が作ってきてくれたもの。
スパークリングワインはキウイ仲間が持ってきてくれた。

それにしても、おかげさまで大いに豪華だ。
味も、さすが帝国ホテル、ひとつひとつがしっかりした味付けで、ちゃんとしたレストランで食べるような味がする。どれもいい値段するだけある。

個人的には、エスカルゴ モンターニュが出色だと思う。
マッシュルームにエスカルゴが詰めてあって、ガーリックとオイルベースのものに漬かってるアヒージョのようなものなんだけど、これはあたしのチョイスじゃなかったから、余計に「思ってたよりずっと美味しい」っていう落差が大きかった。そしてバゲットに合う。

玉子焼きも、甘すぎなくておいしいし、お総菜たちが味がはっきり濃い感じなので、この玉子焼きがちょうどよくて、おかげで全体のバランスが取れている。

そして、本当に、お腹がいっぱいです…。
食べた…。
品数 削ってよかったよ。これ最初は、前菜のカポナータだけじゃなくて、スパイシージャークチキンとビーフシチューも各自1つずつある予定だったからね。危ない危ない。

お腹がいっぱい過ぎて、味が濃い目なカポナータがもう喉を通らず、明日の朝食べることにした。
バゲットの余りは友人に持ち帰ってもらう。

それでも、果物は別腹です。
とっておいた「おいしいほう」の大きな梨を、もらった経緯を説明しながら、ホテルに借りたナイフで皮をむく。が、なんか怪しい気配がする。
なんとなく、ぼよぼよしてるっていうか…。
とりあえず切ってみよう、と剥き終えた梨を半分にしてみたところ、

なんじゃこりゃ! 腐ってんじゃん!!!

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えええええーーーーー。楽しみにしてたのにーーーー。
白く残っているように見える部分も、ほとんどが半透明になりかけていて、全体的に薄く茶色い。水分はたっぷり含んでいるのでずっしり重く、そしてぶよぶよと柔らかい。柔らかい梨が美味しいはずがない。

これは…白い部分なら、味は落ちてるのが見て分かるけど、ギリ食べられなくはなさそう。たぶんおいしくないけどね…でもあたしが食べるんならいいけど、人には出せないよ。
これではキウイ仲間にさすがに申し訳なくて、明日の朝食べる用に取っておいた半分の梨を切る。
ふたりで食べるには少ないけど、ないよりはよかった。いい口直しになったし、とりあえず形にはなった…。


帝国ホテルのサービスアパートメントは、部屋に人を呼んでいいんだけど、ゲストの滞在が許されているのは朝8時からよる10時までの間だ。
ごはん食べ始めたのが8時過ぎてたからねえ…せっかく来てもらって、いろいろ動いてもらった挙句、2時間もいられずに急がせて食べてもらうのが悪いなあと思ってしまって、確信犯でちょっとだけ時間オーバーしてしまったところで(すみません…)、10時過ぎに友人を送り出す。

なので、ロビーやフロントを通らずに行ける違うルートで帰ってもらいました。

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なんとか「最後の夜」らしく、親しい友人を呼んで賑やかに ”帝国ホテルの美味しい食事” でお腹いっぱいになれたので大満足です。お惣菜(テイクアウト)だけどね、って、いやそれでも結構な金額よ。
じゅうぶん過ぎるほど、おかげさまで豪華な夜になりました。

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