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【書籍レポート①】若者と地域観光|編著: 杉本 興運・磯野 巧

こんにちは!
インパクトラボの戸簾です。

本記事では「若者と地域観光」(編著:杉本 興運・磯野 巧)という書籍を読み、私達の活動と照らし合わせたリフレーミングレポートととしてお伝えします。

あらすじ
だから若者はここに来るのか! 「若者の街」原宿・渋谷、Jリーグ観戦、大久保コリアタウン、クラフトビールイベント、ナイトクルーズからソロキャンプまで、今日の若者が選ぶ場とその理由を地理学の方法論で徹底分析!

私たちは、多くのツーリズムプログラムを開催しています。そこで、書籍から若者と地域観光の関係について学び、今後のプログラムに活かしていこうと思います。

1.若者の定義について

近年は、若者という範囲が広くなっているように感じます。様々な立場から、二十代が若者と捉える方もいれば、三十代後半も若者と捉える方もいると思います。本書では、厚生労働省や内閣府など多くのデータを参考にし、「15歳以上35歳未満の人を若者」と定義することが書かれていました。理由として、東京大都市圏における日帰りや宿泊での観光・レジャーを中心に扱っているため、それが十分可能だと思われる15歳を下限と設定したそうです。

取り扱っている内容や目的によって若者と捉えられる年齢に多少の増減があることを学びました私たちが取り組んでいるSDGsツーリズムは地域魅力発見×SDGsツーリズムというテーマで実施することが多く、どの年代でも楽しんで頂けるので、幅広い年代の方を若者と呼べるのかもしれないと感じました。

2.観光やレジャーの定義について

私たちは「SDGsツーリズム」という言葉をよく使いますが、範囲が広いので定義が曖昧になっていることに気が付きました。本書によると、観光・レジャー・ツーリズムなどの似た意味を持つ言葉の説明がありました。ここからヒントを貰い、SDGsツーリズムの定義を明確化していきたいと思います。

【観光とは】
「観光」という言葉には、「地域の優れたものを観る」行為を強調する狭義の観光(sightseeing)としての意味と、旅行全般や観光事業などを含むより幅広い概念である広義の観光(ツーリズム,tourism)の意味がある。狭義の観光はいわゆる余暇時間の活動の一形態とみなせる。一方で、広義の観光の場合、非日常圏への一時的な移動の意味が強調されるため、観光・レジャーを目的とした観光だけでなく、出張や規制などを目的とした旅行も含まれる。

上記の意味を考えると、私たちが開催するツーリズム関係のイベントは、地域の優れたものを観てもらう狭義の観光とSDGsを絡めた非日常圏の幅広い優れたものを観てもらえる広義の観光(ツーリズム,tourism)の要素が交わっているように感じました。

3.若者による観光・レジャーの行動空間

本書に書かれている若者全体の観光地やレジャー施設の訪問者の数値を見てみると、やはり東京ディズニーリゾートが立地している浦安市が群を抜いて訪問者が多く、次いで文京区や渋谷区、横浜市西区ということがわわかりました。また、訪問先の分析では、若者にとって浦安市が最も人気のある訪問先であること、昼夜別男女別によって訪問先選択の傾向が異なることが判明したとのことでした。そして、それは各ゾーン内にある観光スポットや商業施設などの魅力、営業時間、立地といった空間的要素に加え、若者が持つ嗜好性の属性差といった人的要素複合による影響で生じたものと考えられるとつづってありました。

上記から若者の興味関心について分析し、性別や職業などによっても観光・レジャー目的の選択が異なることがわかりました。そして、観光・レジャーの時間の使い方も人それぞれであり、観光の工程を考える際には細やかな対象の設定が必要だと感じました。

4.クラフトビールのイベント

本書によると、ビールの消費量が減少している日本においてもクラフトビールの人気が高まりを見せており、大手のビール会社もクラフトビールの動向に注目する動きもあるようです。そして、従来のピルスナースタイルビールではなく、特定のスタイルにとらわれないクラフトビールの在り方は、形式にとらわれることを好まず、個性を大事にしようとする若者の感性や嗜好に合致し彼らにとってのアイデンティティを示すためのフードアイテムとなっていったそうです。そして、クラフトビールの様々なイベント開催により、幅広い顧客層を確保できるとありました。

私たちの活動拠点となる滋賀県にもクラフトビールがあり、ビール自体やパッケージなどそれぞれの個性が出ていて、つい手を伸ばしたくなります。今後、観光の工程を考えていく上で、若者の感性や嗜好とうまく合致するコンテンツやスポットを見つけていきたいと思います。

5.研究成果

本書籍の研究の成果として、3部に分けられ説明されていました。

【若者の視点からみる地域観光の今】
今の若者は心の豊かさを重視する価値観をもち、余暇生活を重視している。若者の余暇活動の特異性としてファッションやアニメなど若者文化の消費があり、それは若者特有の観光行動とも深く関係している。そして、インターネットの発達やメディアの多様化により、若者の余暇活動の選択肢は拡大するとともに、ソーシャルメディアを介した新しい観光・レジャーの楽しみ方がなされるようになった。
【若者特有の観光行動の様相】
今の若者が好んで行う傾向にある観光・レジャー形態について若者の活動やそれらが展開する場所の特性の観点を検討した。アニメの聖地巡礼、Jリーグサッカー観戦、クラフトビールイベントへの参加にみられるように、若者に特有の観光・レジャーの特徴として、地域の自然や文化を見るような一般的な観光と比較して、観光消費の対象となる資源やコンテンツの娯楽性が高く、また刺激が強い
【若者の観光を支える地域の受容基盤】
主に若者向けの観光資源・施設の特性や地域や事業者による若者の観光需要への対応について検討した。若者が好むコンテンツを積極的に導入したことで経済活性化がもたらせた事例を確認した。

この研究成果から、若者は心の豊かさを重視する価値観を持ちながら、刺激を求めていることを学びました。更に若者が好むコンテンツを用意することで、経済効果や地域活性化にも繋がることもわかりました。

本書では東京大都市圏が対象だったが、これを関西に落とし込んだ際、滋賀県の役割として若者の余暇時間の選択肢に入るためのアプローチ方法や観光・レジャーの特徴として挙げられるコンテンツや資源の発掘をしながら、今後の活動でSDGsツーリズムを実践していこうと思います。

6.さいごに

最後までお読みいただきありがとうございました。
本書籍から若者と地域観光に関する学びを得ました。現在実施している、カンジョディスカバリープログラムにて、大学生メンターとして書籍で学んだ知識を参加者に還元していきたいと思います。

カンジョディスカバリープログラムは、冬休みの間にフィールドワークなどのグループワークを行い、1月の末に成果発表会を行います。

カンジョディスカバリープログラムとは:
ディスカバリープログラムとは、館林市・太田市をフィールドとして、SDGsの視点で地域の魅力や問題を発見し、ツーリズム(観光)としてのプランを作成、発表します。プラン作成や現地調査は各チームで行い、SDGsに取り組む大学生がオンラインでアドバイスやサポートをしていきます。

インパクトラボでは、取材・記事作成レクチャーやSDGsレクチャーなど各種講演・ワークショップ、SDGsツーリズム、新規事業立ち上げ支援などを実施しています。興味を持たれた方は、ぜひインパクトラボのWebサイトをご覧ください。



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