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興味を持つことが伝えるきっかけに|地域共生型社会推進事業 実施レポートNo.6

こんにちは。
インパクトラボの上田です。

インパクトラボでは、「コミュニティ・オーガナイザーの育成」の一環で、メタバース保健室の実証実験に取り組んでいます。

一般財団法人滋賀県民間社会福祉事業職員共済会の地域共生型社会推進事業助成金採択団体として「コミュニティ・オーガナイザーの育成」をテーマに活動しています。事業に取り組む経緯や、テーマであるコミュニティ・オーガナイザーについては、こちらの記事をご覧ください。

メタバース保健室とは、最近注目されているデジタル空間【メタバース】で、学校に行きづらい、人前で話すのが苦手などの不安を抱えている生徒が、自分の分身であるアバターとなり、同じような問題意識を抱える仲間と出会うことができる【次世代の保健室】のことです。この保健室を利用することで、少しでも不安を解消することが見込まれています。

NHK大津放送局「しがばな」のVR収録:三角さん(左)と上田(右)

そこで、今回はこのメタバース保健室を取材していただいたNHK大津放送局の三角 朋子さんにメタバースを体験された感想や地域のニュースをひとに伝えるプロであるアナウンサーの視点からこれからのコミュニケーションの可能性について意見を伺いましたので、皆さんにご紹介します。

三角朋子さん

今回、インタビューをしたのは、NHK大津放送局でキャスターをされている三角 朋子さんです。普段は、NHK大津放送局「おうみ発630」の番組でキャスターとして、滋賀県内の最新のニュースや特集コーナーの番組制作を担当されています。また、メタバースを特集したコーナーである「しがばな」は、毎週木曜日に放送のインタビューコーナーとなっており、旬のゲストとの会話に“はな”を咲かせるというコンセプトで番組を制作されています。

三角 朋子さん

メタバースを体験してみた感想

三角さんは、メタバースについて昨年の夏頃から関心を持っていたそうです。最近でこそ様々なメディアで取り上げられることが多いメタバースですが、滋賀県内で何かメタバースに関する取り組みがないかと調査していた時に、インパクトラボの活動【メタモリ】を見つけてくださったそうです。単発でのイベントではなく、継続的にプロジェクトとして活動をしていたのが興味を惹かれたポイントだったそうです。また、取材の過程でVRの体験をしていただきました。

初めてVRを体験する三角さん

番組では、三角さんも私もリアルなスタジオとVRの両方を活用して収録をしましたが、VRゴーグルやスティックを動かす動作が難しいと感じたそうです。今の中学生や高校生は、ゲームに慣れている世代で、事前に操作するポイントを教えると勝手にVR内を動き回ったり、ジャンプしたり、遊び回っています。三角さんや私の世代は、子どもの頃にアニメを見ることはあっても、ゲームに日常から触れていなかったので、操作に慣れるまで少し時間がかかったのかもしれないです。

NHK大津放送局をメタバース上で再現

一方で、しがばなのコーナーで、NHK大津放送局をVR上に再現したことで、自宅からアバターで番組に出演するイメージを持つことができたそうです。アナウンサーは、出演するにあたりメイクなどの準備にも時間がかかるそうですが、アバターの出演となると少しは準備する手間が省けるのではないかというユニークな意見をいただきました。ただし、コロナ禍で流行したオンライン飲み会のように"1,2回お試しでやってみて、結果的に日常生活への定着が難しい"となる可能性もあり、継続することが課題になりそうとのことです。
私は、今回しがばなに出演するにあたり、事前にメタバース上で再現されたNHK大津放送局のスタジオでトークや動作の練習をすることができました。そのため、普段からスタジオを使われている三角さんと話す際には、ほとんど緊張することなかったです。むしろ、スタジオが見慣れた場所になっていました。さらに、メタバースでスタジオを再現したことにより、コロナ禍で実施が難しかったアナウンサー体験やNHK大津放送局のスタジオ見学ができそうなイメージが湧いたとのことです。

デジタル時代のアナウンサーの役割

感想の後に、三角さんのお仕事であるアナウンサーの業務の一部がデジタルツール(AI、メタバース)を活用したVTuberなどに置き換わることについて話題が移りました。現在でも、AIアナウンサーによるニュース配信はあるそうで、技術の向上スピードが上がっており、ニュースを伝えるのが上手くなっていると感じるそうです。三角さんにニュースを伝える際の工夫などについて伺ったところ、例えば、季節の花が咲いた話題や卒業式のニュースは、ゆっくり丁寧に、視聴者の方にも喜びが伝わるような話し方をしているとのことです。他にも、私が驚いたのは、番組制作の現場で三角さんが積極的にカメラマンの方や裏方の方に指示を出していたことです。

"サンカク"アナになる三角さん

私の勝手な印象で、アナウンサーといえば、スタジオで原稿を丁寧に読み、視聴者に伝えることが仕事の多くを占めていると思っていたのですが、実際は、原稿を読む以上に取材先の選定から番組の台本作りまで多くの裏方と言われる業務を担われていました。このような綿密な取材を通して、取材をされる方の想いを汲み取りながら、心のこもった番組を作ることは、デジタル時代に入ってもアナウンサーをはじめ、人間が担う部分になっていくのではないかと思いました。

何ごとにも興味を持つことの大切さ

インタビューを通じて、アナウンサーの仕事について話を伺う中でも、知らないことがたくさんありましたが、1つのニュースを伝えるにあたって、丁寧に取材を重ねる過程で、知っているふりをすることなく、何事も教えてもらう姿勢を大切にしているということです。三角さんが、過去に大学教員の取材をしていたときに、「三角さんに話を聞いてもらって、とても話しやすかった」という意見をもらったことがあるそうです。事前に下調べはするそうですが、わからないことはその場できちんとわからないと伝えて、教えてもらうようにしているそうです。

何事も興味を持って取材する姿勢が大切

そして、とても意外だったのは、三角さんがアナウンサーとして8年目になるそうですが、他のアナウンサーよりも仕事を覚えるのが早い方ではないとのことで、最近になってやっと自分の声や自分が作った番組を客観的に見ることができるようになったということです。スタジオで収録させてもらった時に、三角さんの話し方を見て、プロであるアナウンサーはすごいと思っていました。ついつい話すのが上手いという表面だけを取り上げてしまいそうなアナウンサーという仕事ですが、実はその裏には、相手の話を聞くことや教えてもらおうとする姿勢、さらには、客観的に自分の話し方を振り返ることが大切だということは、コロナ禍で人との密なコミュニケーションが希薄になってしまい、大切なことを誰かに伝えることが苦手に感じている若い世代にとっても参考になるのではないでしょうか。

最後に

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

番組制作の過程で、三角さんが、立命館守山高校の授業に来て、iPadを積極的に利用していた生徒に興味を持たれたり、養護教諭やメタバース保健室に関わる生徒たちの話を丁寧に聞いてくださったことが印象的でした。アナウンサーという職業は、視聴者にニュースを伝えることに限らず、取材する方の話を聞く姿勢や相手に興味を持つことが、想いを伝えることにつながると教えていただきました。

メタバースでの新しいコニュニケーションが生まれる予感

マスクを外した生活が当たり前になる状況で、ひとと話すのが苦手で、どうしようと考えている若い世代にとって、どんなに技術が進歩しても相手に何かを伝えることの本質は変わらないはずです。今後、アバターによる最適なコミュニケーションの方法などが生まれてくると思いますが、まずは相手の話を聞く姿勢を大切にしていきたいところです。

これからもメタバース保健室の実証実験は続きますので、引き続き応援よろしくお願いします。インパクトラボでは、地域共生型社会推進事業交付金採択事業としてインタビューやワークショップの活動を行っています。他の活動のレポートも是非ご覧ください。

https://note.com/impactlab/


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