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起業家体験ワークショップ|第2回起業家教育研究会

2022年1月13日(木)18:30-20:00に、Zoom上で、起業家・経営者が体験する難しい経営判断について、グループワーク体験を通して学ぶ「起業家体験ワークショップ」を実施しました。

本ワークショップは、立命館大学社会システム研究所・重点研究プログラム山中司グループの取り組みの1つとして実施しました。今回は、本プログラムを担当した杉山より報告をしたいと思います。

第1回の内容は下記をご覧ください。

起業家「体験」ワークショップ

アントレプレナーシップ教育の必要性が盛んに議論され、起業するまでに必要なビジネスプランの考え方を学ぶプログラムが多く実施されている昨今、今回は、起業した際に経営者として必要な考え方についてディスカッションを通して学ぶことを目的としたワークショップを実施しました。

今回のワークショップは、立命館大学OBで日本最大のベンチャーキャピタルであるJAFCOグループの西中孝幸氏、有限責任監査法人トーマツの永井希依彦氏のご協力のもと実施されました。

はじめに参加した立命館守山高校の10名の高校生からこのプログラムに参加した理由と今年の抱負を踏まえて自己紹介をいただきました。
参加した高校生は、「これまで起業に向けて考えるプログラムに参加したことがあったが、起業した後について考えるプログラムに参加したことなかったため、それを学びたい」という理由で参加していました。

今回のワークショップは、5人1組のグループを作り、テーマに沿ってグループ内で議論してもらう内容でした。
グループ内は、社長役1人と社員役4人と区別し、社員役4人がまた2人1組の2チームに別れました。

ルールは、
1. 解決するべきテーマ(経営課題)が与えられ、
2. それに対して社員役はチーム毎に解決案をまとめ、
3. グループ内で案の発表し、
4. チーム同士、社長で意見を交換し合い
5. 最後に社長が与えられたテーマに対する対策案を決定する

というものでした。

この流れを1テーマ30分で行いました。社員役はチーム同士で課題を解決する案とその理由を話し合い、端的にまとめ、グループ内に発表すること、社長役はグループ内で提案する2チームのからの意見を聞き、限られた時間で最終的な経営判断を下すことが求められました

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ワークショップの様子

今回は2つのテーマでワークショップを実施しました。実際にグループで行われていた、社長と社員の意見交換の内容も踏まえて、参加者同士の様子をまとめました。

<テーマ1>自分たちの会社は労働力不足である。従業員のために営業短縮すべきか。売り上げを確保するべきか。

チームA「お金がないと会社は新しいことができないため、営業時間は短縮するべきではない。また従業員のお金がなくなる方が困るのでは」

チームB「社員を優先するべき。労働力不足という状況打破するためにアイデアを出す必要があり、そのために休むのは?また忙しいことが原因で社内の人間関係が悪くなることが一番のリスクだと考える」

社長「人間関係が悪くなることがリスクと考える理由は?」
チームB「仲良くコミュニケーションを取れる社内環境が仕事のモチベーションになると思う」

チームA「経営的に大事な時期である(という設定)だから、今を踏ん張らないと今後はない。長期的に見て会社が無くなる方がリスクがある」
チームB「それは従業員が元気だから成り立つ話では?給料が少なくてもやりがいがあれば仕事をしたいという人が多いと聞いている」
チームA「それならば売り上げに大きな影響が出ない程度に短縮営業していくのはどうか」

社長「長い目で会社を経営していくことが大事と考えているから、まずは営業短縮していく。その上でこの労働力不足を解決する方法を考えていく」

このテーマでは、自分たちはどのような軸を持って働いているかを論点に提案していく様子が見られました。

<テーマ2>大繁盛している京都の老舗の店の第2店舗をどこに展開するか。ただし失敗すると現在の店の経営が悪くなる。展開する候補地はNYかベトナムか。または他の海外の都市が良いか、国内が良いか。

チームA「欧米よりアジアの方が日本の食文化に近いため、ベトナムに展開すると良いと考えた」
チームB「NYに展開すると良いと考えた。理由はたくさん企業があり、お金を持っている人が多いため需要があるのでは」

チームA「老舗料理はNYに向いていないのでは。NYは競合が多い。人気があるところに人は集まる。食文化が全く異なるNYだと、人気が無いうちは難しいのでは?一方で、ベトナム料理は、比較的食文化が似ているので受け入れやすいのでは」

社長「なぜ私たちの店舗が老舗になったのか、どう思うか?」
チームB「いろんな方に長くお付き合いさせていただいたから老舗になったのでは。その価値があるため、競合が多いけど接待に使用してもらえるのでは?」

チームA「2店舗目の失敗は1店舗目に影響が出る。NYは初期投資高く、リスキーでは?」
チームB「初期投資はベトナムで展開する場合より高いかも知れないが、海外初進出することで、(老舗だから)宣伝効果は大きく、名前を集めやすいのでは?最初は大変であるがアメリカの主要で重要な都市であるためリターンは大きいと思う」

チームA「新店舗展開の失敗はこれまでのお店にリスクがあるというならば、国内で展開することは安易か?例えば東京。」
チームB「最初は良いが、伸び悩むのでは。しかし継続的に安定した経営ができるのでは」
社長「それならば、実績があり、需要も高いと考えられる京都にもう一店舗展開するのはどうか。今度は京都駅内に展開するなど」

このテーマでは、老舗になれた理由、初期投資、需要といった要素を、文化的な観点、経営的な観点からそれぞれ意見を出し合う様子が見られました。

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フィードバック

1時間のワークショップの後は、ゲストの西中氏と永井氏よりフィードバックをいただきました。

西中氏(JAFCOグループ)
味なのか文化なのかと大事にしていることは何か?なぜそこの街で展開するのか、という幅広い視点を持って最低限議論するべき内容をしていたことが良かった。

永井氏(有限責任監査法人トーマツ)
大学卒業後に必要な考え方を身につけている。答えのないことに答えを出し続けることが経営であり、それが良くできていた。知識があるかないかで議論の幅が変わる。経験の無い状況でどのように意思決定をしていくか、自分たちができる範囲で意見を出しながら、メンバー同士お互いブラッシュアップしながら答えを出していく姿勢が良かった。

また、永井氏より「実際は経営のお金がない、多くの従業員、社員の生活が関わっていることなどシビアな条件が付き纏うのが現実です。その一面を少しでも感じてもらえれば嬉しい」と総括をいただきました。

参加いただいた高校生からは次のような意見をいただきました。

高校生からの意見
・今回2つ目のテーマが難しかった。
・知らないことが多かったかため、学ぶべきことが多いと思った。
・責任を持って決断することの難しさを感じた。
・社長の立場とは何か考えられた。
・相手の意見を理解しながら、自分の意見に軸や説得力を持って検討し議論する体験ができて良かった。
・新鮮な体験ができた。論点は何かということについて考えながら議論することの大事さを感じた
・意見が対立した状態で自分の意見をまとめ、最適解を出していく議論の過程を楽しめた
・今回挙げられたたテーマの一部は今度入学する大学の専門に近いところがあったため、経営者の視点も身につけることも見据えて専門知識を学べたらと思った。

今回のワークショップを通して、多角的な視点を持って議論すること、その上で経営の視点を学ぶことを狙いました。結果、この「起業家を疑似体験し、考え方を学ぶプログラム」について参加者から好意的な感想をいただくことができました。起業家になった後の考え方、「答えのないことについて考えて答えを出す」というこれから必要とされている考え方を身につけるために、今後もこのようなワークショップを実施できたらと思います。

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最後に参加者全員で撮影

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