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子どものころにチヤホヤされた場所

モモちゃんにとって
美容院に行くのがどれほど一大事なのか、
私はピンときてなかったんだと思う。

だから前回は
ヘルパーさんとモモちゃんの
二人で行っても大丈夫、
何度か同じ美容院に行けば、
美容師さんにもきっと慣れるはず、
頭のどこかに、
そんな見通しがあったのだと思う。

でもすでに1年近く通ってみて、
「そういう甘いもんじゃないんだな」と、
あらためて思った。

スーパーでお菓子を買うとして、
好みのお菓子が買えたなら、
モモちゃんにとって
スーパーはどこでもそんなに変わらないようだ。
そこは助かっている。

でも、美容院はちがう。
ちょっと危険なにおいがする。

昔、順番待ちが長すぎて、
子ども番組に間に合わなかったとか、
襟足に髪の毛がついて気持ち悪かったとか、
そういうのは
気をつけていれば解決できる。

でも、私が一番引っ掛かっているのは、
モモちゃんが「行きたい」という美容院が、
10代から20年くらい通った
美容院だということだ。
広島で15年も暮らしたのに、
そちらで行った美容院の話は出てこない。
「イヤだった」とも言わない。

モモちゃんにとって美容院とは、
「子どものころにチヤホヤされた場所」
のままなんじゃないか?

10代から20年くらいというのは、
ちょうどモモちゃんが
好きな音楽やテレビ番組をやっていた
時期とも重なる。

美容院という場所は
モモちゃんにとって、
「可愛いね、おりこうさんね」とチヤホヤされ、
好きな音楽やテレビ番組の話をすれば、
「おもしろいね、かっこいいね」と、
話が盛り上がる場所だったのではないか。

美容師さんには申し訳ない話だけど、
ほとんど目の見えないモモちゃんにとって、
きれいにカットしてもらったかどうかより、
どんな話ができたか、
どんなリアクションをしてもらったか、
そういうほうが、
大切なんじゃないかな。

今の美容師さんは
モモちゃんよりずっと年下なので、
昔の音楽やテレビ番組は
ほとんど知らない。

昔行っていた美容院だと、
たぶんモモちゃんより20歳以上年上の
おしゃべり好きな美容師さんが、
サービスしていたのだと思う。
「まあ、よく知ってるねえ、おりこうだねえ」とか、
「可愛いスカートだねえ、よく似合っているねえ」とか、
あれこれネタを見つけては
ほめちぎっていたかも。

モモちゃんに根気強く言って、
今の美容院に慣れてもらおうかな?
それとも美容師さんに頼んで
協力してもらおうかな?

今日、
美容院のバックヤードから、
美容師さんの息子さんが顔を出した。
小学生の男の子だった。

「難しいと思うんですが、
小学生の女の子だと思って、
接してやっていただけないですか」

そう頼んでみようかな…

でも目の前にいるのは、
でっかいモモちゃんだからなあ…

ヘルパーさんたちは、
「モモちゃんと接するためだけ」に来ているので、
お願いしても何とか対応してもらえるだろうけど、
なんといっても、
美容師さんは、
髪をきれいにするのが仕事だもんなあ。
モモちゃんの気持ちに配慮してほしいって、
そんなこと言われても、困るかもなあ…

美容院問題は、まだまだ続く。

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