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母のつれあい

お盆休み序盤、母の顔を見に福岡の実家へ行ってきた。

父は随分前に鬼籍に入り、母も人生色々、今はともに生きていくパートナーと出会って、二人で暮らしている。

高速をとことこ、夫と交代で愛車を走らせ5時間強。
渋滞に巻き込まれながら、途中、北九州で働く長男と合流して、なんとか実家に到着した。

ちなみに長男24歳。男の一人暮らし、どうしても炭水化物と油多めになっちゃってさ〜と笑う顔はちょっとまるくなってて、でも元気そうでなによりだ。

今年72歳になった母は、すっかり真っ白になった髪で、満面の笑顔で出迎えてくれた。
パートナーのヨリさんは87歳。相変わらず年齢を感じさせないお達者さだ。毎朝近くの公園を2周四キロ歩き、毎日3食と大好物の甘味をしっかり食べ、週に1日程度だがまだ勤めに出ている。

ヨリさんは耳を悪くしているため(左側はほとんど聞こえない)、以前は会話を遠慮しているというか、こちらから話しかけたら答えてくれるが、自ら進んで話すことはなかった。
だが最近は、自分の事をたくさん話してくれる。同じ話が堂々巡りすることもあるし、周囲の会話が聞き取れていない事があるため、話の途中で全然違う話をし始めることもあるけれど、以前よりは心をゆるしてくれてるのかな、と思う。
そして今日のお気に入りの話題はケンカしたときの母はとても怖いという話。それを何度も繰り返すので、母も「何度ももういいけん!」とケンカが勃発しそうな勢いだった。

正直なところ、なかなか会いに行けない身としては、母とじっくり話す時間が欲しいと思ってしまうところも、あるといえば、ある。

でも、離れて暮らす親が、独りではないという安心感。この安心感は身勝手だと後ろめたくもあるが…世話焼きの母が、誰かの世話を焼いていられるのは、幸せな事なんだろうと思ったりしている。

ヨリさんはヨリさんというカテゴリでそこに居てくれる。
自分も大概いい大人になった今更、義父と呼ぶ感じではないし。

帰る道すがら、長男が
「ヨリさん、なんか、家族になったよね」
と言った。
長男にとっても、母はおばあちゃんだけど、ヨリさんはおじいちゃんと云うわけでなく、でも、ヨリさんはヨリさんとして家族になったのだ。

4階のマンションのベランダから、見えなくなるまで手を振ってくれる、いつの間にか老いて小さくなった、でもまだまだケンカする元気のある母とヨリさん。

できる限り会いに来ようと思った。

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