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OMG - NewJeans 【ゆるゆる楽曲解説】

思うがままに、ゆるく楽曲解説をしていこうと思います。
(書いていくうちに、ゆるくなくなりました…)

Dittoに引き続き、NewJeans 第2段です。

↓楽曲 MV

↓フルバージョンMV



構成

※()内は小節数 

Aメロ(16)
Bメロ(8)
サビ前半(8)
サビ後半(8)
ラップパート(8)

Bメロ(8)
サビ前半(8)
サビ後半(8)

間奏(8)

Cメロ(8)
サビ前半(8)
サビ後半(8)

アウトロ(8)

シンプルな構成ですね。

楽器構成はボーカル、シンセ、ピアノ、ベース、パーカッション、SE(効果音)のような形です。細かいサウンドは後ほど。


MVと歌詞

OMGとは「オーマイガー」の略称です。
何が「オーマイガー」なんだろうと聴いていました。
真意はわかりませんがとにかく「あなた」に思いを寄せすぎて狂っている自分に対しての「オーマイガー(なんてこった)」でしょう。
しかしここでの「あなた」は単なる想いを寄せる人ではなさそうです。

◆「あなた」は「わたし」?

MVのフルバージョンを見るとわかりますが、どうやら精神科病棟が舞台です。
ハニが「私はIPhoneでした」「他人が話す私 と 本当の私 が混乱するようになりました」などと話します。

また、楽曲が始まってからも多くの不思議な点があり、
・病棟で舞台衣装を着て踊っている場面
・暗い病棟で患者衣を着て踊っている場面
・ダンスパーティ会場?で舞台衣装を着て踊っている場面
の主に3つの場面で構成されています。

最後にはダニが「みんな本当に覚えてないの?私たちはNewJeansだってば!」と訴えます。

訴えるダニ(公式MVより)

過去のMVが超ダイジェストで流されデビューアルバム「Attention」の映像で落ち着き、入浴中のミンジに「はいここまで」と言われます。
そして最後の最後に「このMV不快」とツイートする女性にミンジが声をかける映像が流れます。

すこし難解ですが、〈NewJeansが「解離性障害」を持っている〉という設定のように伺えます。

[注意]医療等に関する情報のため、参考程度にご覧ください。

自分をiPhoneや医師や猫やマッチ売りの少女だと考えてみたり、「第三者から見た自分」と「自分」の違いに混乱したり、NewJeansだったことを忘れてみたり、狂ったように「あなた」に思いを寄せている自分に「オーマイガー」と思ったり、多重人格のような表現が見られます。
こういった解離性は過去のトラウマが原因と考えられることが多いです。最後のアンチツイートの描写から考えると、アンチによって狂ってしまったNewJeansを描いているのかもしれません。
ミンジ(精神科医役)が「ここまで」といったのも、「過去のトラウマを思い出させない」という解離性障害の治療法に基づいているのかなとも考えられます。

以上を踏まえると歌詞にでてくる「あなた」は「自分自身」でしょう。
"He's the one that's living in my system baby(あなたは私を動かすシステムに組み込まれているの)"という所もそのように考えると納得です。
解離(幽体離脱)した自分が「あなた(=自分自身)」に対して想いを伝えているように思います。(逆かもしれませんが…)

◆自然な韻(いん)

歌詞についてですが、Dittoと比べると韓国語が多い印象です。
Dittoは韻を踏んでるな~感がありましたが、OMGはこっそりほとんど常に韻を踏んでいます。
以下はサビ後半ですが、かなり細かく韻を踏んでいます。

No, I can never let him go

너만 생각나 24
のまんがんな24

난 행운아야 정말로 I know, I know
なんんあや ちょんまる I know, I know

널 알기 전까지는 나
(のる あるぎ ちょんっかじ

의미 없었어 전부 다
うぃみ おぷそっそ ちょんぶた

내 맘이 끝이 없는 걸 I know, I know
(ね ま っくち おぬん ごる あい のう あい のう)

サビ後半より

コード

①Ⅱm9 → ②Ⅱm9(♭5)/♭Ⅱ → ③Ⅵm9 ( → Ⅲ7 → ♭Ⅲmaj7 )

便宜上①、②、③とつけています

この進行を一曲通して繰り返しています。

【楽譜】 ①Ⅱm9 → ②Ⅱm9(♭5)/♭Ⅱ → ③Ⅵm9 

②Ⅱm9(♭5)/♭Ⅱが特徴的です。
9thは「ラ」で、1つ前の①Ⅱm9の「ラ」を引き継いでいるだけです。
♭5thとベースの♭Ⅱは同じ音で「レ♭」です。この音は次の和音である③Ⅵm9のベース音「レ」になめらかにつながる働きがありますが、加えてノスタルジックな響きになっています。

このような変位音(♯や♭が入った音)が入っていることや、丁寧なボイシング(音の配置)が3分以上繰り返しても飽きないコード進行になっている理由でしょう。


サウンド

次のような楽器編成です。

楽器編成

DAW(音楽制作ソフト)にて再現してみました。↓

割と本気でやってみました。
なかなか大変でした。音作りとミックスが難しいですね。耳コピですのでミスもあるかと思いますが悪しからず。

◆ほわんほわんシンセ

OMGはとにかく冒頭のシンセの音色が世界観を醸し出していますね。ぼーっとするような雰囲気といいましょうか、ふわふわしています。子守唄みたいな雰囲気だなと思いました。
アナログシンセのブラス系の音です。DTMをされていてこの音を作りたい方は「ほわん DTM」で検索されてください。サイン波と三角波を重ね、音の立ち上がりをゆっくりにして、フィルターを掛けます。Serumで作るならFXからHYPER、FILTERあたりを使うといいかもしれません。
リバーブはうっすらかかっていますが、短く切れるような音の形なので「しゅん…しゅん…」というような、1人でトボトボ歩きながら独白するような表現になっています。

◆"ふにゃふにゃ"するピアノ

Bメロからピアノがほわんほわんシンセと同じようなコードで参戦します。
音の始まりがふにゃっとしているのは、ピッチベンドさせているためですね。なんだか聞いていると浮遊感というか、重力を捻じ曲げられているような不思議な気持ちになります。
本来のピアノではピッチベンドすることはできないわけです。そういったところもこの曲の妄想性や幻想性を表現しているのではないでしょうか。

◆クールなビート と ノリノリなパーカッション

ビートの音は808系です。
細かく動くベースもあいまってかっこいいビートになっています。
ハイハットロールの音が左右に動くところなど聞いていて楽しいですね。

そして、カウベルとアゴゴベルがポップさ、ともあれば滑稽さを演出しています。

◆コーラスがシンバルの代役?

Bメロではコーラスとして通常の役割を担っています。

 メイン「遠くにいてもいつでもきてくれるよね(日訳)」
コーラス「They keep on asking me, “who is he?」
 メイン「忙しい素振りもせず君は現れるよね(日訳)」
コーラス「They keep on asking me, “who is he?」

Bメロより

このように主人公の内面のカオスさを、交互に現れるメインボーカルとコーラスで表しています。

しかし、サビにおいてはコーラスはまともな言葉を発しません。スキャットのような形で歌っています。
サビのはじめ、「Oh my, oh my God」の「Oh」にあわせてコーラスも「Oh!」と歌っています。
通常、サビなどの盛り上げたい部分では最初の部分にクラッシュシンバルを鳴らすことが多いです。EDMにおいてもアタックの強い効果音が置かれることが多いと思います。
そこを「Oh!」の声で置き換えています。(クラッシュシンバルも同時に鳴っていますが明らかに小さな音量です)

最もインパクトがほしい部分に自分たちの声が重ねて鳴っている。これも今回の解離性障害というキャラクターを表現しているのかもしれません。

◆歌い始め・歌い終わりの「ズレ」

この曲の歌い始めと歌い終わりは、少し変わった形で枠からズレています。ここも幻想的な雰囲気を醸し出している要因かもしれません。

歌い始めの楽譜
歌い初めの楽譜

多くの曲では「1小節目の少し前」または「1小節目」から歌い始めます。("Aメロに入ってから"の1小節目です)
しかし、この曲は「2小節目の2拍目」から歌い始めます。こういう始まり方を弱起と言いますが、このタイミングは異例でしょう。
うたた寝していて、不意に起き「あぁ…寝ちゃってた。そういえば…」と語り始めたようで、アンニュイな雰囲気が出ています。

歌い終わりの楽譜

歌い終わりもズレています。
よくあるパターンは、
 ・他の楽器の演奏が止まりしっかり歌い切り、アウトロまでに終わる
 ・アウトロ1拍目でスパン!と終わる
 ・アウトロに入ってもなんかずっと伸ばして歌ってる
とかでしょうか。

OMGは、最後のサビが終わりアウトロに入った2拍目裏で歌い終わります。
これも絶妙なタイミングですね。歌い終わる?まだ歌う?という気持ちになります。

また、この最後の部分の歌詞にすこしひっかかりました。

My heart is glowing, it's glowing My heart is glowing up So I can't sleep at night
(私の心は輝いてて…それは輝いてて…私の心は垢抜けて…だから夜は眠れないの)

こんな歌詞を棒読み(同じ音)で歌っています。
ネットによると glowing up は grow up (成長する) と glow (輝く) をあわせたスラングで「垢抜ける」という意味になるそう。
英検準2級ごときの私が訳しましたが、よく意味はわかりませんし、曲名でもないのにglowingをすごく繰り返しています
"心が"垢抜ける?"だから"眠れない?
このあたりも心と身の解離、情緒の難解さ・複雑さを感じます。

おわりに

ご覧いただき、ありがとうございました。

Dittoの先行配信から十数日経ってリリースされたOMG。Dittoはゲームチェンジャーのような牌でしたが、OMGは普通のヒップポップに聴こえるようで、どこか不思議。

そんなサウンドづくりを担うのはPark Jinsuさん(XXXのメンバーFRNK)。
XXXでは単にヒップホップと言い表すことができないノンジャンルの世界が展開されています。
テテことBTSのVのソロ曲「Slow Dancing」にも彼がかかわっているようです。とくに「Slow Dancing (FRNK Remix)」ではパーカッションがたくさん盛り込まれているなどOMGと共通性が感じられます。

NewJeansから始まり、他の韓国アーティストも聴くようになり、K-popの質にひたすら圧倒される毎日です。
ついに、新作「Supernatural」で日本デビューですね。

Dittoも同様に解説しております。
ご覧になっていない方は下のリンクから是非!


余談
NewJeansのメンバーがカバーをする「By Jeans」シリーズ。選曲もパフォーマンスも最高です。
1人1人の声質、節回しがしっかりと味わえます。

[注意]医療等に関する情報については参考程度にご覧ください。また、該当する病気を患われている方を揶揄する意図は一切ありません。

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