彼の人気の秘密

私の働いている組織は、3千人強の人がいて、うち2千人強はおじさんで構成されている。
その中で愉快なキャラクターで人気者のおじさんがいる。
七福神の恵比寿様が現代の地方都市で少し自由なサラリーマンをやっている。
そうイメージしていただければ、彼のパーソナリティはある程度伝わる。

組織は、小学校の生徒会活動に似ている。
小学生の一番の本業は勉強。そして仲間を作り、身体を動かし、給食を食べ、成長すること。
高学年になると、大人の世界を疑似体験するかのごとく、委員会活動に参加することになる。
体育委員、風紀委員、生活委員や生徒会。
必ずしも全員参加ではなく、クラスの中で優秀な子、目立ちたい子、面倒見が良い子、あるいは人が良くでみんながやりたくない委員に推薦されてしまう子。
普段はあまり面識のない子たちが、少人数、クラスや学年を超えて集い、学校をより良くするための活動を行う。

前置きが長くなったが、先述のサラリーマン恵比寿は、この委員会活動に抜擢され私と知り合うことになる。
まず、見た目がユニーク。
雑学知識が深く、話好きでお酒好き。
面倒な会議の時間も美味しいお店の話で脱線しがち。
これまでの委員会活動と違うゆる~い雰囲気に回りの人からの評判は上々。
サラリーマン恵比寿は愉快で楽しく、人気者!
3千人のうち、彼を知るほとんどの人はそう思っている。
彼を知らない人も、噂を聞きつけ、彼のいる委員会への参加要請があれば何となく期待した面持ちで来てしまう。

ただ、世話役が仕事の私は知っている。
彼はメールを読まない。
たまに読んでも返事をよこさない。もちろん、会議への出欠回答も。
原稿や提出物の締切を絶対に守らない。
それを見越して早めの締切日を設定しても、本来の締切日を余裕で越えてくる。
ただ、彼は愉快で人気者。そんなことも仕方ない、と思えてくるから不思議だ。

ある日、彼が事務所に来たとき、人気者がゆえ、たくさんのスタッフに囲まれた。
みんなメールで送っている要件の返事が欲しいからだ。
提出物の進行状況を聞きたいからだ。
1つ1つにとぼけたように対応していくサラリーマン恵比寿。悪びれもなく。

そこで私は気付く。
「サラリーマン恵比寿、実はそんなに面白いこと言わなくない?」
集まる多くの賛同。
じゃあなぜ愉快なのか、人気者なのか。
「見た目じゃない?」

どうも、そういうことだったらしい。

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