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マインド・ザ・ギャップ 10
馬鹿の考え休むに似たりって言うしなぁ。
僕はどちらかといえば勤勉でありたいと思っている馬鹿だ。最もタチが悪いという言い方もできる。なのでスケッチを中断しアビンドンへ向かうことにした。ルートと時刻表を調べる。バスで1時間といったところか。ロンドンの中心市街地を見ないまま入寮するのは何だかもったいないような気もしたが、二度と行く機会がないわけじゃない、いつか行けるさ、その時は友達も一緒かもしれないし。
僕は自分にそう言い聞かせてダブルデッカーの到着を待った。
できれば2階に乗って景色を眺めたかったが、ヒースローからこの路線に乗るような客はみんな同じようなことを考えるらしい。僕が乗り込む前に2階は満席になっていた。僕は仕方なく1階の隅っこにどうにか座れる席を見付け、リュックを下ろし一息ついた。送れるものは段ボールに片っ端から詰めたはずなのに、それでもリュックはパンパンになった。自分でも何を詰めたのかよく覚えていない。これから何がどうなるのかについて考えていると隣の乗客が話しかけてきた。
「兄ちゃん、あんたは移民かい?」
「まぁ同じようなものです」
「同じようなものってことは、正確には違うのか?」
「はい、これからこっちの学校に通うんです。その、パブリック・スクールに」
「へぇ、そりゃすげえ。俺がどうこう言えることじゃないけど、頑張れよ」
「はい」
何だ、イギリス人って意外といい人たちっぽいな。僕はそう思った。単純にそう感じた。
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