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リウマチ学会

今週は日本リウマチ学会の学術集会が開催されていた。私も参加してきたので、そこで報告されていた核酸ワクチンに関する事を少し記しておこう。

まず今回のリウマチ学会では国内での核酸ワクチン投与後の自己免疫疾患発症の症例報告が複数されていた。これは非常に重要な点だと考えている。既に述べた通り、いくつかの自己免疫疾患に関する症例報告は海外からされていたわけだが、国内の専門医の中にも核酸ワクチンによる自己免疫疾患発症について一定のリスクを提起するケースが複数出て来たという事だ。

学会で発表されたので公知として取り扱ってもいいとは思うが、念の為詳細は省く事にする。ざっくり言えば、もっとも多い症例報告はSLEとその関連症状であった。これは膠原病の括りで言えば、海外でもSLE発症や増悪の症例報告が最も多い事と一致している。単純な患者数だけで言えば、リウマチの方が多い筈なので、この様な偏りは偶然ではない可能性が高いわけだ。

また、海外でも報告が無い例として、関節リウマチの新規発症も報告されていた。この報告者は同時に核酸ワクチンによる関節リウマチ増悪例も報告しており、関節リウマチに関しても慎重な検討が必要になるだろう。

今回は簡単に学会での症例報告をまとめさせてもらった。但し、繰り返しになる部分もあるが、新規発症はともかく、既に自己免疫疾患を治療中の患者に関しては、リスクベネフィット比較が重要になる。なぜなら免疫抑制剤による治療中は感染症のリスクが跳ね上がっているからだ。同時に、免疫抑制剤によって核酸ワクチンによる免疫活性化も抑えられるため、悪影響も限定的となる。一方で、希少ながら膠原病の増悪例はあると考えられ、バイオマーカーの探索などを含めて、慎重な研究は継続する必要がある。

また、上記の点を踏まえて、リウマチ学会などは「リウマチ患者においてはワクチンを推奨する」という方針を出している。これが間違いとは言わないが、これがそのまま「核酸ワクチンはリウマチの発症を引き起こさない」という事にはならない。この辺りの考え方は正しく理解する必要がある事を付け加えておこう。

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