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総説紹介:ワクチンアジュバントと心疾患

最近はスパイクたんぱく質そのものの毒性について紹介してきたが、別の視点としてワクチン主成分以外のアジュバントや類似のアジュバント活性に起因する問題も起こり得る。今日は下記の様なレビュー論文を見掛けたので紹介しておこう。

「Adjuvants in COVID-19 vaccines: innocent bystanders or culpable abettors for stirring up COVID-heart syndrome」
(Ther Adv Vaccines Immunother. 2024; 12: 25151355241228439.)

この論文では新型コロナウイルスワクチンに含まれるアジュバントが心血管障害を引き起こす真犯人であるという仮説を立て、自己免疫、バイスタンダー効果、直接毒性、抗リン脂質症候群(APS)、アナフィラキシー、過敏症、遺伝的感受性、エピトープ拡散、抗イディオタイプ抗体など、これらのアジュバントの影響下でのさまざまな病理学的シグナル伝達事象の作動と心血管障害の発症における原因になり得る機序について説明している。いつも言っている通り、特に核酸ワクチンにおいては核酸自体が核酸認識シグナルの活性化を介して強く免疫系を活性化するというアジュバント作用を有しており、特有の免疫学的リスクとなるのだが、その様な機序を含めて、核酸ワクチン以外のアジュバントについても一般的な視点からの免疫学的リスクがまとめられている。ワクチンアジュバントの慎重な選択というのは非常に重要な視点であり、今後各々がいくつかの種類のワクチンから選択をする機会においても必要な知識であろう。

過去の記事で説明した事があると思うが、そもそもアジュバントというのはワクチンによる免疫応答を促進するための添加物である。ワクチンに用いるタンパク質や不活化ウイルスだけでは十分な免疫反応が誘導出来ないため、多くの場合は免疫系を活性化する物質を同時に投与する訳だ。その種類は様々であり、アルミニウム塩の様に広く用いられてきたものもあれば、エマルジョンベースや核酸ベースなど反応が強くあまり用いられないものもある。核酸ワクチンはそれ自体が核酸ベースのアジュバントに類似したアジュバント活性を持っており、それ故に免疫活性化能が強過ぎて危険だということも述べてきた。

アジュバントによる免疫応答誘導の性質も違いがある。アルミニウム塩ベースのアジュバントは主としてTh2反応主体の免疫活性化を引き起こす。Th2反応というのは抗体産生に関わるヘルパーT細胞系の反応であり、主に抗体産生が引き起こされる。多くの場合、ワクチン効果というのは抗体産生を期待するものであるし、安全性の面から言ってもこの様なアジュバントでよいということだ。一方で、エマルジョンベースのアジュバントはTh1反応を促進する。これはどちらかと言えば細胞性免疫を促進する免疫反応であり、CTLの活性化などによって抗ウイルス活性や抗腫瘍免疫を強くすることが目的となる。

以前の記事で触れたが、新型コロナウイルスについては抗体反応が重要視されていない。むしろ、抗体による感染促進(ADE)の問題が提起されており、Th2反応を促進するアジュバントは適さないとされてきた。そこでTh1反応を促進することを重視し、強いアジュバントを使ったり核酸ワクチンを使ったりしている訳だ。一方でワクチン効果については抗体反応を測定するなど矛盾した対応が行われており、この様な免疫学的真理は一般人に説明されないまま危険なアジュバント活性を受容させてきたのが大問題なのである。

いずれにしても、アジュバントの問題や免疫応答の問題、それぞれのアジュバントがどの様なメカニズムで機能し、どの様なリスクを持つのかについては私の過去の記事や、上記の論文を読んで勉強してほしいと思う。アジュバントの選択はワクチンのリスクやベネフィットを考える上で非常に重要な問題であり、その為に必要な知識は最善の選択をする為に必須のものである。

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