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『ANIARA アニアーラ』って映画の感想〜事故で永遠に宇宙を漂流することとなる8000人の絶望〜

『ANIARA アニアーラ』って映画が久々に面白かったので、感想を書きます。

『ANIARA アニアーラ』では、火星に3週間かけて移住する8000人が地球から飛び立つのですが、なんと宇宙船が事故で火星に行けず。
宇宙船は火星にたどり着けないまま、永遠に宇宙を漂うことになる。

食料などは藻類が積んであるので、余裕で生きていけるが、永遠に地球にも火星にもたどり着けない。

いろんなイベントがあるんだけど、なんの意味もなく、宇宙に漂い続ける宇宙船で、人間がどんどん狂っていったり自殺したりして、子供が生まれたりすルシ、変な宗教とかができたりするけど、本当になんの意味もなく、時間だけが経っていく。

「意味がない」という絶望が興味深い

宇宙船が宇宙に漂い、地球にも行けず火星にも行けず、ただただ生きるしかない、という状況のセッティングが面白い。

いろんな類作があるのかもしれないが、自分はこういうセッティングの物語をあまり知らなかったので、すごく面白かった。
『火の鳥』で永遠に宇宙を漂うとかのセッティングはあったし、けど、8000人の社会があるって設定は面白い。『流転の地球』も、宇宙を漂い続けるって設定は同じだけど、そこに人類がいるってのは違うか。

ネタバレだが、子供を産んだ女性は、子供を殺して自殺するんだけど、それは、「こんな絶望的な状況に生まれてきた子供は絶望的だ殺してあげたほうがいいはずだ」という判断だったかなと思った。


地球だって「意味がない」のは同じじゃないか?

自分的には、宇宙船だろうが、地球だろうが、そこの環境にとらわれて生きているだけってのは変わらないじゃんって感じた。
宇宙船地球号ってそういうことじゃないかと。

絶望的な部分としては、「未来に何か起こることがなく、ひたすら変わらない環境しかない」、「地球のような、大いなる循環が存在しない」、「人間が理解できる世界に対して、外の宇宙は全くの理解できない世界」的な部分か。

「何に絶望しているか」ってのがやはり自分にも言語化できない。
そこが面白い。

謎のAIのバグや謎の宇宙人工物が出てくる

これは全く説明も何もされないが、
宇宙船内に、安寧をもたらす装置として、「地球の頃の思い出を記憶に呼び覚まして地球に存在する感覚を与えてくれるAI」が出てくる。
これがこの環境では大ブームになるんだけど、
そのAIが途中でぶっ壊れる。
人間の暗い気持ちを吸収しすぎて壊れた的なことが言われるが。

このAIの壊れるシーンに関しては、自分的には、「想定されてない環境であっけなく壊れる前提」ってのがあるかと。
つまり、AIが使えるシチュエーションは、事前に想定されたシチュエーションで、それがぶっ壊れるってのは、「人間は想定された世界しか想定しえない」ことの怖さの表現なんだと思った。

「精神的な支え」というものが、ものすごく意味があるんだよってのも同時に表現されている。
人間の精神的な支えに対する脆さはかなり納得できた。

途中でさらに、謎の宇宙に浮かぶ人工物も出てくる。
この人工物は特に意味がわからないが、人類に一瞬の希望と絶望を与える。
「理解できない、意味もない」に対して人間が何もできないことがわかってしまう。

感想が持ちにくいという感想

想定外に対する人間の脆さや、意味のなさに対する人間の力の限界をうまく表現されている作品だった。
また、このシチュエーションは、いくらでもキャラクターとかを変えてアンソロジーが考えられるため、非常に面白い表現だった。

この映画そのものに対する感想は正直、感情とういものが湧かないので感想を持てない。人間の感情の意味のなさを提示してるから、まあそんな感じかもしれない。

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