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フランクルの思想を楽しく学べる「君が生きる意味」(松山淳)

生きることや店長の仕事で悩んでいる主人公の青年。
その前に突如現れる謎の「小さい変なおじさん」。
その変なおじさんが、青年に「ヴィクトール・フランクル」の教え(思想)をユーモアやギャグをもって教えを説いていくという物語。

ヴィクトール・フランクルとは、ナチスの強制収容所での体験記「夜と霧」で有名な精神科医。
少々難解なフランクルの教えを青年を事例としてバサバサとわかりやすく教えてくれる。

フランクルといえば、
自分が「生きる意味」を問うのではなく、「生きること」(人生)が私たちになにを期待しているのか。
という自分ではなく「人生」を起点とした考えが有名。

その他さまざまなフランクルの教えが散りばめられている。

・過去を再評価すること。
・「生きる意味を求める欲求」を「意味への意思」という。
・意味は自分で発見するもの。
・どんなに辛い状況でも人はその意味で自分を満たすことができる。

またこの本では「3つの価値」を教えてくれる。

(創造価値)
仕事を通して誰かの役に立てたら、それはこの世界に価値あるものを創造したことになる。
(体験価値)
世の中には真善美があふれている。
その価値を受け取る価値。
(態度価値)
宿命(運命)を自ら引き受け、人間が「とる態度」によって実現される価値。その状況に対して「とる態度」によって肯定できるような価値を生みだせる。

ただ生きていると「自分の価値」とはなかな気づきにくいもの。しかし、この3つの価値の観点で考えると自分も世界にも価値が溢れていると感じることができる。
・自分が行うこと、役立つことにある価値(創造価値)
・身の回り、世の中にあるものに価値を感じる(体験価値)
・自分がとる態度そのものに存在する価値(態度価値)

これらを意識しながら生活を送ることで人生の充実度が増すのではないだろうか。

フランクルの「発見的楽観主義」もこのように表現されている。

(おじさん)
人生につまずいても“生きる意味”を発見し、人生観を変えてたくましく“生き直す人”が多く見てきたっちゃ。
そしてわかった、決してへこたれない人の特徴ってな、今がダメでも、この先に何かいいことがあるって思っていること。
自らの人生に希望を見失わず楽観的であること。

楽観的になって広い視野で人生を眺めれば、自分の存在を未来で待っている人がいる。何かすべきことがきっとある。そんなふうに、時間的にも空間的にも心の視野を拡大させて、もっと人生に可能性を感じながら生きていけるべ。

また、自己中心的な考えを捨てることも大切と説いている。

・自分を忘れて何かのために尽くすことを自己超越という。
・自分を忘れて“無”になっている無我の境地。(自己超越)
・自己超越の度合いが高くなるほど自分を忘れれば忘れるほどそれに応じて質の高い価値を受けることになる。
・「自分を捨てる」とは、誰かを思い、何かのために、心が外の世界へ開かれるということ。
・自己中心ではなく、問題中心、課題中心に生きていること。これを自己実現的性格という。

少々道徳的ではある気がするが、この自己超越を実践することで高い価値を受け取るという説明まであるのが良い。
いわゆる利他の精神ともいえるだろうが、この取り組みこそが自分を変えるということだろうか。あらゆる人が同じようなことを言っていると説得力は高まる。もっと意識して生きていきたい。

難解とも思われるフランクルの思想が、どこにでもいそうな仕事で悩む青年を題材としてユニークな設定の小説になっている為わかりやすかった。

この本の言いたいことをまとめると。
自分がどうしたいという自己中心的志向から、世の中、他者を中心に考える「無我」の精神で生きること。そして人生を起点とし、人生から自分はどう生きていけばよいのか問われているのかと考え、人生が期待していることを実行すること。
これにより人生に意味は満ちてくる。

ものの見方が変われば、生き方も変わってくるだろうか。
後は自分がかわるかどうか。
まさに人生に問われているのではないだろうか。





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