空への祈り
車を運転していると
少し先に横たわるものを見た
ネコの亡骸のようだった
いつもそうしているように
わたしは神妙なふりをして
頭の中で手を合わせ
ほんのひととき
「いのち」を考え、
はかなさに祈りを捧げた
「ネコ」だったものを、
静かに空に見送るように。
しかし
その「なきがら」を通り過ぎるとき
はたと、それが
脱ぎ捨てられたマフラーであると気づいた
雨に濡れ、風にさらされたマフラーが、
くたっと道端に在るだけであった
なるほど
時の流れと風雪は
マフラーの魂をボロボロにするに足り、
「なきがら」とするに十分であった
だが、
それでは、
わたしが捧げた
神妙な祈りの先にあった
「いのち」とは一体
なんだったのだろうか
ここから先は
0字
¥ 100
本文は基本的に無料です。読み終わった後、ちょっとでも「はっ」とするものがあったら、「投げ銭」をお願いします。本を購入する資金にします。その数百円が、かけがえのないものになります!