データ分析と交渉術~病院内でのデータ分析者のサバイバル術その②~

今回は、前回に引き続きのテーマですが、データ分析のその先にある「交渉術」に着目して論考していきたいと思います。
正確なお作法は、Getting to Yes: Negotiating Agreementをお読み頂くのがベストだろうと思いますが、院内でのデータ分析を進めてきた経験則ともかなりマッチングする理論が多く載っていて大変勉強になりました。
嗚呼、"あの時の失敗はこういうことができていなかったからか"、と思うわず唸ってしまいました。

1.データ分析と行動はセット

さて、本題に移りますが、データ分析の次の段階として、最も重要なことは、分析した後の行動です。

私自身もこれが、自分自身の課題であり、使命であるとも思っています。
見出された問題解決方法は自分ひとりで出来るわけではなく、結局は誰かに動いてもらわなければならない。
誰かの行動変容を起こし、実際にそれが行われて、改善できたというモニタリングが出来てこそ、
最初に行った課題分析の意味があります。
つまり、一番難しいのは、交渉スキルです。
組織の視点で言えば、
「戦略」を立てるだけに終わらず、如何に「実行」に結びつけることが出来るかではないでしょうか。

2.経営企画のジレンマ

経営企画的なことをやっていると人を動かすというのは、非常に難しいと日々思います。
論理上、"アレ"を"コウ"すれば良いという答えはわかっているのに、
組織的にはそれが容易にできない。
最終手段はトップからの命令、という形も取れないこともないですが、
結局それでも、やらない人はやらなかったり、
命が吹き込まれれない施策は風化してしまいます。
如何に仕組み化するかというのが施策の肝ではありますが、その前に
最初の一歩が始まらなければ、何も生まれない、変わりません。

データ分析後のアクションは、
 "誰に"、"どのタイミング"で"話を持ち掛け"、
 "課題を共有"して、"改善に向けた行動変容"
に結び付けられるか。
 が全てです。

分析だけに走って 自己満足に終わってはいけないと思っています。
"経営企画あるある=データ分析で終わりがち"
特に分析が好きな人は、私もしかりですが、陥りがちな問題です。
 
非常に問題だと思うのは、
他の組織の方の話を聞くと、こんな分析を行って課題が分かって、
こうすべきと提案したのに動いてくれない。
といった嘆きです。
私もその気持、すごくわかります。
しかし、それで嘆いているだけでは、何も変わらないんです。

何も変わらない、それが 課題。というようなことを良く聞きます。
分析資料を作って、こちらは課題が分かっているが、動いてくれない人達が問題。
といった感じで、ややもすれば高嶺の見物状態に陥ってしまっています。

それなら、その分析はなかったのと同じで、そこに広がっているのは真空空間です。

3.行動変容をいかにして成すか

行動変容を引き起こすためには、
トップに納得してもらい、組織の戦略、分かりやすく言えば、よく言う「経営者の方針なので」でゴリ押しすることも可能だろうし、それだけでは足りない部分もあります。

方針だけで、人のモチベーションが上がるわけではないですから、
それでうまくいくならなんでもかんでもトップに頼ってしまい、
いろんな問題がトップに集まってしまうわけです。
それだと組織として成り立ちません。

なにか問題があれば、すぐに院長の力に頼ってしまいがちですが、
それは最終手段だと思います。
(これは経営企画部門だけでに限らない話ですが)
その前に、自分たちで最大限できる努力をしたのかどうか。(経企であればなおさら)
だろうと思います。
 
トップダウンだけでは場合によっては、
モチベーションをそぐことになってしまう場合もある。結局、戦略は実行レベルに落とし込まれていないと現実に実行されることはなく、現場に落ちない。ではどうすれば、良いか。

4.説得と納得の違い

カッコいい分析資料も良いのですが、
単純なことではありますが、要するに
相手の行動変容を促すためには、
相手を「説得」するのではなく、「納得」してもらえたかどうかが、
その後の行動変容に繋がるのではないかと考えています。

論理だけを押し付けても、なかなか人は変わらない。
それはこちらの世界観の一方的な押しつけでしかありません。
相手の状況と気持ちを考えて、相手目線でコミュニケートし、
如何にスムーズに自分ごととして納得してもらえるか、
これが大事ではないかと考えています。

説得と納得と違いは、いろいろ考え方はあると思いますが、私としては、
相手が自分の口で、
「そうか、わかった」、ではなく、

"こうすべきだ"という趣旨の発言があるかどうかだと思っています。
「やはり、○○すべきだな!」と言ってもらえるかどうかです。
商品解説・提案がうまい営業マンはお客さんにこれを言わせています。


データ分析は分析だけではほとんど意味がなく、
行動変容までに繋がって初めて意味があるものになります。

ですから、その肝心の行動変容のメカニズムを抑えておかないと
(これが最も難しい実践科学ではないでしょうか・・・)

5.人には"心"がある

交渉術や行動分析学、組織マネジメント分野
に共通する黄金律は、大胆に大雑把な表現でまとめると、
「如何に相手と同じ目線でコミュニケートするか」が共通点で
あることがわかってきました。

冒頭のハーバード流交渉術も交渉手順の要諦は心底相手の立場を理解して、
交渉条件の背後にある目的に着目できるかということを説いています。
もちろん様々な配慮事項が体系化されていますので、
鉄板書籍ですが、未だ未読の方は人生がかわる程のノウハウが書かれていますので、
ぜひ、ご一読を。

これらを踏まえて、現場や経営幹部とのやり取りを通じ、
実践・試行錯誤して、さらに得られた知見を体系的に整理します。

行動変容を促すためには、3つのポイントがあります。

まずは、スタート地点から失敗していることがあります。

長くなりましたので、データ分析+行動変容の核心部分は次回にお伝えいたします。