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北アリゾナ大学ウィンドシンフォニー/Poeme

前回紹介したウィリアム・グラント・スティルの作品集の繋がりから、

同じ団体が演奏した最近のCDを。


こちらの北アリゾナ大WSは、ヨーロッパツアーの開催や、P.スパークに交響曲1番を委嘱し、世界初演を行うなど精力的に活動をしているバンドのようです。

そんな団体が昨年セントールというアメリカのクラシックレーベルからリリースされたCDになります。過去にこのレーベルからリリースされた吹奏楽系のCDといえば、先日惜しくも亡くなってしまったD.ハンスバーガーとイーストマンWEが1タイトルのみで(惜しくも廃盤です・・・欲しい・・・)、これから吹奏楽系のタイトルが増えることを願っています。

録音にかなり残響があり、ゴトコフスキーやマスランカなどのシンフォニックな作品は細かい部分の聞き取りに苦労します。
演奏はとても安定しています。

オープニングはI.ゴトコフスキーの「炎の詩」。
バンド全体が大きな渦になる中で奏でられる抒情的なメロディーが魅力的で、近年コンクールで取り上げられる団体があるのも頷けます。機動力を要する2楽章もカッコよく、音楽的には難解では無いのですが、体力を要します。

2曲目は米国若手の女性作曲家J.ハリスの作品。
細かいパルスの動きの上にコラールが流れて、アメリカだなぁ!を感じる作品です(なんじゃそりゃ)。
3曲目も米国若手の作曲家、B.テイラーの「テクノ・ブレイド」という作品。サンプリングした電子音と吹奏楽の演奏。アイデアは面白いのですが曲はそこまで・・・
4曲目はM.マルコウスキーの「ドゥロウイング・マーズ」マルコウスキーは武蔵野音大や昭和音大、光が丘女子などアメリカの最新の吹奏楽作品にアンテナを張っている方なら名前は耳にしたことがあると思います。火星に生命は存在すると主張をした19世紀の天文学者にインスピレーションを受けて作曲されたという曲らしいのですが、3曲目同様にあまり感銘は受けず・・・
5曲目のD.ロヴリアンの「ディミニッシュ・マイナー・オルタレーション」はクリスマスシーズンに聴かれるクラシックの曲を長調から短調に変えてメドレーにした作品。元々グレード5で書かれた作品を作曲者本人が改訂してリグレード(グレード3になりました)と時間の縮小をしました。グレードが落ちたことでスッキリして聴きやすくなりました。ただ、どこからどこまでが何のパロディなのか分からない部分もあり、その辺りがスコアに記載されていても良かったかなと思います。こういう曲を取り上げるバンドが日本でも増えれば良いなと思っています。どこのスクールバンドもPOPSステージがJ-POPばかりでもう少し選曲の幅があっても良いのに・・・と思いませんか?
6曲目はマスランカのシンフォニーの7番。マスランカの作品はバッハや讃美歌をモチーフに書かれる作品が多く、この曲もバッハのコラールを引用して作曲されています。優しいメロディーが流れるのですが、悲しく荒廃的な印象を持ってしまうのはマスランカが抱えていた様々な過去の部分があるからでしょうか。最後は天に昇るような儚さで曲を閉じます。
来シーズンからTKWOがマスランカのシンフォニーを取り上げられるようで、聴きに行きたいですし、都内や首都圏にお住まいの吹奏楽愛好家の皆様が沢山来場して欲しいとファンとして願っています。

最後は「カム・サンデー」など国内でも取り上げられるようになってきたO.トーマスが作曲した「Of Our New Day Begun」という作品。Google翻訳で訳すと「私たちの新しい一日が始まる」と表示されます。
2015年に起こったチャールストン教会銃撃事件で犠牲になった9名の方に捧げられたこの曲は、黒人霊歌を用いて時には重々しく、時には手拍子や足踏み、コーラスなど全身を使ってアフリカン・アメリカンとしての誇りを表現しているように感じます。

若い米国の吹奏楽作品が割合を多く占めましたが、玉石混交でO.トーマスのような作品もあれば、正直魅力や個性を感じない作品があるのも事実で、この辺りは日本のみならず、全世界的に同じような傾向ではないかなと思った次第です。



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