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[第2話]補助金に蝕ままれる?

※この記事はYouTubeチャンネル「悩める経営者の最後の駆け込み神社「今際稲荷」」の[第2話]のセリフを書き出したものです。
https://youtu.be/ZbRIFusP8qo

迷える経営者の最後の駆け込み神社「今際稲荷」の神主です。2回目となる今回のエピソードは、補助金とそれにまつわるコンサルタントの甘い言葉に惑わされる中小企業の末路についてお話しします。

補助金とは、企業が特定の要件を満たした事業活動を実施する場合に、行政機関を通じて金銭的な援助が得られるものです。これは、例外を除いて未来に行う事業に対する補助で、過去の活動は例外を除いて対象になりません。補助金は、採択された事業活動に対して全額ではなく、一定の割合で自己負担を必用とします。補助金は、採択された事業活動が完了し、清算後にそれを確認して支払われます。つまり、補助金は国等の政策と密着に連動していて、イノベーションや賃上げ、雇用促進、インボイス対応など国が推進したい施策を取り入れた企業へと優先的に補助を行うことで、政策実現を図るためのインセンティブとして活用されています。
補助金は、中小企業から見ると非常に魅力的で、1500万円の工作機械を購入する場合、1000万円を補助して貰えれば、500万円の自己負担で済み、資金繰り面で非常に有利になります。そこで、企業側は少し無理をしてでも、補助金が求める要件に合致するような事業計画を策定して提案することになります。また、知り合いの企業が補助金を活用して3分の1の自己負担で設備を導入したと聞くと、補助金を活用していない自社はとても損をした気分になると思います。もらえたはずの1000万円を取り逃したと考えてしまうのです。金融機関も補助金を対象とした繋ぎ融資はリスクがないため、補助金の活用をすすめる場合もあります。
ただし、補助金には知られていない多くの制約が存在しますが、申請前にそれらのデメリットが強調されることはありません。これが補助金の甘い罠です。補助金の予算が拡大すると、それにビジネスチャンスを嗅ぎ取ったコンサルが市場に多く参入してきます。コロナを契機とした事業再構築補助金では、それまで一般的に1000億円程度でも大きいと言われた補助金予算に対して、10倍の1兆円という未曽有の予算を投入しました。これにより、これまでビジネスチャンスのなかったコンサルであっても補助金支援という事業に参入するようになりました。この影響で、一般の企業がコンサルを介さず独自で申請しても、採択される可能性はかなり低くなったと言えます。しかしながら、彼らは玉石混在で、これまで付き合いのないコンサルに補助金を依頼する場合には、コンサルの質に注意が要ります。従前から付き合いのあるコンサルに補助金支援を依頼する場合は、お互いに信頼関係が成り立っているため、特段の問題は発生しないと思いますが、そのコンサルがどの程度補助金に精通しているかは未知数です。
一方で、補助金専門謳いネットなどを通じて集客する補助金コンサルには注意が必用です。補助金コンサルには大きく2種類あり、1つ目は、高い採択率を提示して高額な着手金を求める着手金型、2つ目は、低い着手金と高い成功報酬を提示してウインウインのような構図を示す成功報酬型、1つ目と2つ目は組み合わされることも多々あります。
ここで問題なのは、あなたと何の関係もない彼らが、なぜ親身になってあなたを支援してくれるのかという点です。それは、あなたに親切にしているのではなく、彼らはただビジネスを行っているに過ぎないからです。着手金型はあなたの会社が採択されようがされまいが関係ありません。着手金という報酬が手に入れば後は関係ないのです。多数の企業を支援すれば、確立の問題で一定数は採択を得られるため、彼らは採択率を高める努力を怠り、新規の申請件数を獲得することで着手金報酬を最大化しているにすぎません。成功報酬型は成功報酬を補助金額に対する割合で決めるため、補助金額を多くするように誘導します。補助金が出るのだからと不要なハイスペック機を勧めたりして補助金総額を膨らませます。また、成功報酬の確率を高めるために、あなたの会社の事情を無視した事業計画を提案します。
それにより、あなたは採択された場合、大きな報酬を支払うことになりますが、その後の補助金の手続きや事業遂行でつまずくことになります。目的の補助金が運よく採択されたとしても、その後も交付申請、実績報告、清算という煩雑な手続きを得なければ補助金は受取ることができません。この時、補助金入金までコミットしないコンサルは、既に成功報酬を受け取って消えています。依頼したコンサルが作成した事業計画が雑で、後の手続きを考慮していないとすれば、交付申請の手続きで審査を通過できず、補助金が受け取れないこともあります。
無事に補助金を受け取れたとしても、その後も5年間は補助事業のためだけに補助金の対象の建物や機器を使用する必要があり、事業内容に制約を受けます。一部の自己負担はしていたとしても、その割合分も自由は認められません。つまり、ひも付きの資金なのです。これを破って、補助金の返還命令を受けたケースは枚挙に暇がありません。
事業は外部環境に合わせて、刻々とその内容を変容させる必要がありますが、補助金を受け取ってしまうと代償として舵取りの自由を失うことになりかねません。そういう意味では借入よりもリスクは大きいかもしれません。それでも事業を成功させて、補助金の対象事業で十分な収益を出したとすると、収益納付という制度により、補助金の一部または全部を返還することを求められます。これだけの制約やリスクを負っても補助金を使って成果を出せるケースは、補助金の要件と自社が行いたい事業計画が完全に一致する場合だけで、無理に補助金を獲得したケースでは、長いスパンで見て会社に不利益をもたらす可能性が高まります。
先ほども触れたコロナにより創設された再構築補助金では、これまで経産省系ではほとんどなかった建物の費用が補助対象となったことで、事業や人生を狂わされたケースが多く発生しています。当初は小規模でも6000万円の補助が得られたため、新築物件を建設して新事業にチャレンジする企業が多くあらわれましたが、補助金の制約により自由を奪われた結果、アフターコロナの環境変化に対応することができず、その一方で補助金の事業をやめてしまうと補助金返還となるため、不採算の事業を継続するか、6000万円を返還するかの選択を迫られ、両方を諦めてしまうケースもあります。

いかがでしょうか。国から支援を受けるということは、みなさんが想像する以上に足かせを課されて、自由を奪われます。それは、金融機関からの借入とは比較になりません。また、補助金があるからという楽観視で事業計画の見通しが甘くなるため、事業の成功可能性も低くなるのです。世の中には裏のない甘い話は存在しません。それは補助金に関しても同じことです。補助金に携わるコンサルや金融機関からこれらの不都合な真実を聞くことはないかもしれません。ですが、これが真の補助金の姿なのです。補助金に目がくらんだ結果として、会社や経営者が破産に追い込まれては本末転倒です。補助金に費やす労力、時間、コストを考えれば、その分を本業の強化や新事業の創出に費やした方がよいケースも多いと言えます。

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