【生体イメージング】生体機能を可視化する
こちらは先日、科学雑誌のTwitterアカウントから流れてきた動画である。
最新の組織透明化と光シート顕微鏡撮影という技術を用いて撮影されており、緑はマウスの肺の構造、赤は呼吸という機能を表している。
呼吸を可視化するために用いられているのは、一定の光の波長を受けると蛍光を発する小さな塵。それをマウスに空気とともに吸いこんでもらい、その塵の分布を後で蛍光顕微鏡でイメージングすることで呼吸という機能を可視化しているのである。
これは実は核医学検査という機能画像を生業にする医療者の一つの大きな命題でもある。
核医学検査は医療の表舞台に立つことが少なく、ご存知ない方も多いかもしれない。
大体は病院の地下や隅の方のひっそりとしたところに検査室があって、放射性同位体を扱っていることを示す黄色と黒の物々しいマーク(↓のようなやつ)が扉に貼ってある。
更には『核』という名前が付いていて、とっても仰々しく、不安に思われる患者さんも多いのではないかと想像している。
でも、徹底的に安全に配慮した検査設計になっているので、万が一核医学検査を受けることになってもどうかご安心を。
(本題から反れるが、その少しギョッと思う気持ちは、おそらく日本人特有のものではない。核医学は英語では『Nuclear Medicine』というのだが、海外の学会に行く際、入国審査で「何のために入国するの?」と聞かれたら、必ず「Medical imaging (医療画像)」と答えよという代々伝わる教えがある。嘘か誠か、『Nuclear (核)』という単語に審査員が過剰反応して、別室送りになる可能性があるのだとか。)
その核医学検査の中で、実は『呼吸を可視化する』、ということはすでに広く市中の病院でも行われている。
『肺換気血流シンチグラフィ』といい、以下はその検査画像だ。(国立国際医療研究センター病院ホームページより)
静脈内に放射線をラベルしたものを注射し、肺に捕まえさせて撮影したのが左、微量な放射線を出す気体を吸って撮影したのが右である。
「何が写っているかわからない、ぼやけ過ぎ」、などという批判の声はどうか飲み込んで頂きたい。撮像原理を考えると、これでもかなり健闘している方なのだ。
このような一見するとぼやけた画像でも、時に非常に有用な検査となる。
この画像の場合、「右の画像からガス交換には問題がないのだけれど、左の肺血流画像でくさび上に血流が欠けている部分があって、肺血栓塞栓症が疑われる」という診断になる。
肺血栓塞栓症、エコノミークラス症候群とも言われ、程度によっては命を落とすこともある、危険な病気だ。
他にも、核医学検査は古より様々な方法を駆使して、生体の機能を可視化してきた。
その一つ一つの検査方法には様々な工夫や健闘の歴史が感じられ、また折を見てご紹介していきたい。
【参考資料】
Yang L, et al. Three-Dimensional Quantitative Co-Mapping of Pulmonary Morphology and Nanoparticle Distribution with Cellular Resolution in Nondissected Murine Lungs, ACS Nano 2019, 13, 2, 1029-1041.
国立国際医療研究センター病院ホームページ (http://www.hosp.ncgm.go.jp/s037/130/040/scinti_04.html)
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