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【コラム】献血について知っておきたいこと

皆さん、献血されてますか?
年に数回は街中で献血バスを見かけられているのではないかと思います。
でも、そもそもなぜ献血が必要なのでしょうか。

それは日々新しい技術が開発されている近代医学をもってしても、いまだに血液の成分を人工的に作る技術が確立されていないからです。
そのため、元気な方から血液を分けて頂き、必要な患者さんに届けるということが必要になります。医療の現場では、血液の成分が不足する場面がとても多く、今の医療は皆さん一人一人の献血という無償の善意によって支えられているといっても過言ではありません。
献血で皆さんからいただいた血液は、患者さんの血液成分が減った時、輸血という形でそれを補うために使われます。

主な輸血が必要になる原因として、一番印象にあるのは事故や手術、出産などで大量に出血したとき、つまり大量に体の外に出て行ってしまった時だと思います。
その他にも、白血病や抗がん剤で血球成分を作る能力が落ちてしまう場合や、血管の中で壊れてしまう場合、また癌や感染症などで使われてしまう場合などでも輸血が必要になります。

体重の約8%を占めるといわれている血液ですが、体重60キログラムの方だと、容積にして5Lくらい、牛乳パック5本分くらいと、余り多くない印象を受けるかもしれません。
そのうち三分の一以上が失われると、命の危険があるといわれています。

血液の中には、赤血球、血小板、白血球という大きく分けて3つの異なる血球成分があり、それら血球成分は血漿と呼ばれる液体にぷかぷかと浮いて全身を流れています。

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赤血球は酸素を運ぶ働き、血小板は出血を止める働き、白血球は身体の外から来た敵と戦う働きがあります。

このような血球成分と血漿成分が混ざった血液ですが、高速に回転させて強い遠心力をかける遠心分離という操作を行うことで、液体成分である血漿と固体成分である血球を分けることができます。
容量としては、血漿は全体の血液の55%程度。血漿成分の91%は純粋な水で、アルブミンなどのタンパク質が7%程度を占めます。
一方血球成分は容量としては血液の45%くらいで、実はその大部分に当たる99%は赤血球が占めています。残りの成分である白血球や血小板はわずか1%程度です。

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さて、それでは献血された血液はそのあとどうなるのでしょうか。

献血された血液はセンターに集められ、まず血液型で分けられます。

そして肝炎ウイルスやエイズウイルスなどが血液中に含まれていないか検査をします。

輸血による感染症を防ぐためです。
もし、ウイルスが陽性になった時には、その血液は残念ですが廃棄され、献血者に結果が報告されます。

次に、白血球を除去します。
何故かというと、白血球は自分の体に属するものか、そうでないものかを判別する能力が非常に高く、自分の体のものでないと判断すると、それを徹底的に攻撃してしまうからです。
つまり患者さんの体の中に、他人からの白血球が入ってしまうと、他人由来の白血球は患者さんの体を自分のものではないと判断して、攻撃してしまいます。
なので放射線を当てるなどし、白血球を可能な限り取り除きます。

白血球が除去された血液は、遠心分離で血漿、赤血球、血小板に分けられて、それぞれの血液製剤になります。

そして病院からオーダーがあるまで、センターで保管されます。

こちらは各血液製剤の有効期限ですが、赤血球は21日、血小板は4日だけと、結構短なという印象をお持ちの方も多いのではないかと思います。
このため、年間を通して偏ることなく一定数の方々に献血をして頂く必要があります。

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それでは一年間にどのくらいの方が献血に協力して下さっているのでしょうか。

日本赤十字社のホームページによると、平成29年の献血者数は約480万人で、輸血を必要とする患者さんは約100万人だったそうです。
献血して下さる方が、必要とする患者さんよりも十分に多いように見えます。
ですが、ひとたび輸血が必要な状況になると、一人分の献血量では足りないことがよく起きるので、100万人の患者さんに対して、480万人の献血でぎりぎり足りるか足りないかくらいの状態です。

厚生労働省によると、2027年には現在よりもさらに輸血が必要な患者さんの数が増加し、のべ545万人が献血を行わないと、供給不足に陥るとシュミレーションされています。

血液製剤の有効期限は思ったよりも短く、一年を通して常に献血に協力して下さる方がいるからこそ、救われている患者さんがいます。
献血を見かけた際には少し立ち止まって思い出してもらえると幸いです。


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