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マインドフルネス

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マインドフルネスの記事をマガジンにしました。マインドフルネスの概念をわかりやすく説明し、みなさんが実践できるような情報を順次アップデートいたします。
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記事一覧

子どもに関わる教育者・支援者・保護者のための心理学講座

子どもに教育や支援をしている方や保護者の方に向けた心理学講座を企画した背景 「学校の先生・支援員や保護者の方と、困っている子の学びや適応について一緒に支援方法を考える」という活動を心理学の専門家として長年行ってきました。実際に支援現場に出向いて支援活動を行ったり、お子さんや保護者さんへのカウンセリングを行うほかにも、年間30回近い講演会や研修会において、心理学的なアプローチについて紹介しています。講演会や研修会の後に行われる雑談や個別相談会の時間では、講義で紹介した心理学的

Step 2|マインドフルな呼吸

 呼吸は意識をしなくても自動的に作動してくれています。そのような普段意識していない呼吸にあえて意識(注意)を向けることは、簡単そうで難しい活動です。マインドフルな呼吸法を実践し始めると、知らない間に、いつものように呼吸は自動化され、ぼーっと他のことを考えてしまうことがあります。そんな時は、どのように対応したらいいかというポイントについて、Q & A を交えながら紹介したいと思います。 1. マインドフルな呼吸法のポイント 呼吸法を取り入れたマインドフルネスのエクササイズは、

Step 1-4:注意について知る|日常生活でできる注意の整え方

1. ちょっと意識をしながら普段通りの生活をしてみる Step 1-1 から Step 1-3 までに注意の働きについてまとめてきました。特に、注意の働きを意図的に使うことの重要性について説明してきましたが、どのようにエクササイズをしたらいいのでしょうか?マインドフルネス瞑想はそれらのエクササイズの1つですが、もっと簡単に日常生活に取り入れられる方法がります。それは五感を使ったエクササイズです。 触覚のエクササイズ  普段から私たちは様々なものに触れて生活しています。一番

Step 1-3:注意について知る|方向性ネットワーク

1. どのような向きで注意を向けるか Step1-2でご紹介した「注意の実行ネットワーク」のところでは、意図的に注意を向ける働きと自動的に注意が向いてしまう働きの2つについて説明しました。ADHDの症状がある場合は、自動的に注意が向いてしまう働きが強くなるため、意図的な注意の働きを強めることがポイントとなります。これらの実行ネットワークの状態を改善するためには、方向性ネットワークについても理解しておくといいでしょう。  人が何かに注意を向ける時は、1つのものに注意を向けている

マインドフルネス-2|あることモード

1. あることモード「あることモード」の原語は being mode です。「あることって、何が?」と初学者の私は戸惑い、哲学的な感じの名称に身構えたものです。しかし、そんなに難しい話ではなく、簡単に言ってしまうと「(自分の思考や感情を)変化させようとしない」ということに近いニュアンスだということがわかりました。下のイラストは「あることモード」についてまとめたものです(私の中のあることモードは凧揚げのイメージです)。 2. あることモードの要点あることモードは「変化させよう

Step 1-2:注意について知る|実行ネットワーク

1. 好きなことだと集中できるという状態について集中力に関するご相談を受けていると、必ずと言っていいほど「好きなことだと集中できるのに、嫌なことは集中できない」という内容をお聞きします。このことは、ADHDであってもなくても、ほぼ全ての人が自覚していることです。「仕事も楽しければ、どれだけでも頑張れるのに・・」と愚痴をこぼしてしまうこともあるかもしれませんが、楽しくない仕事もあることも全ての人が分かっています。それでも、仕事に集中して働ける人は、どんな注意の特徴をもっているの

STEP 1-1:注意について知る|覚醒ネットワーク

1. 注意の覚醒について集中しようと思っても集中がうまくできない時があります。疲れていている時は集中しようと思っても、なかなか集中できないものです。このような状態は、注意の覚醒が弱い状態ということができます。反対に、元気な時には課題にすぐに集中できます。このような状態は注意の覚醒が強い状態といえます。 注意の覚醒は強ほど良い状態と思われるかもしれませんが、注意の使い方が苦手な人は、覚醒が強すぎることで困った状態になることもあります。その代表的な例としては「過集中」をあげるこ

マインドフルネス-1|することモード

1. マインドフルネスに見られる様々なモードマインドフルネス(mindfulness)に興味をもって勉強を始めようとすると、最初の壁が立ちはだかります。それは、マインドフルネスの「定義」です。様々な定義があるのですが、中でも難しさを感じるのは「今ここ」や「評価しない」などの言い回しだと思います。心理学の知識は正しく学んだ方が役に立ちますので、定義を理解することは避けては通れないのですが、別のアプローチからマインドフルネスを理解する方法もあります。それは、マインドフルな状態やマ

セルフ・コンパッション - 2|自分に優しくなるためのトレーニング

1. 仏教とセルフ・コンパッション私たちは自分の欲求を満たしたい気持ちがあります。何かを欲しがる気持ちもそうですが、成功したい・優位に立ちたいという欲求を満たそうとすればするほど誰かに嫉妬したり、自分勝手に振る舞ってしまい、人間関係がうまくいかないなどの不幸な結果を招いてしまいます。また、「家族のために、自分さえ我慢して働けばいいんだ」という自分を苦しめることで幸せを得ようとすることも、結果的に不幸を招くことになります。このような両極端な感情に対してどのように心を保てばいいの

セルフ・コンパッション - 1|自分への優しさとは?

1. セルフ・コンパッションとは?Self-Compassion(セルフ・コンパッション)は「自己への慈しみ」と訳される心の状態です。Compassionには、慈しみという訳の他に、「優しさ」や「思いやり」などの訳もあります。これらの訳語をつかうとセルフ・コンパッションを簡単に表現すると「自分への優しさ」と言えます。 自分への優しさというと、なんだか自分を甘やかしているような気持ちになってしまう人もいるかもしれません。甘やかしと慈しみの違いは何かということを知るために、Se

No.10|育児・教育|子どものマインドフルな学び#1:集中力を発揮するには

マインドフルな学びとはマインドフルネスとは「今ここに意図的に意識をむける」と定義されている心の状態を表しています。わかりやすく言ってしまうと、雑念にとらわれずにやることに集中している状態です。子どもが勉強している場面でマインドフルネスの定義をあてはめれば、「(時間を忘れるほど)目の前の課題に集中して取り組んでいる状態」とも言えます。これは私は「マインドフルな学び」と呼んでいます。 これまでの記事においても、たびたび、マインドフルネスと集中力の関係について説明をしてきましたが

No.8|臨床心理|あなたの心配は役に立っていますか?

心配してしまうことを心配することはありますか?心配するという言葉は日常的に使う言葉ですし、どんな人でも心配はしたことがあると思います。また、日本では「心配」に送り仮名をつけると「心配り」となり、気を遣う心理状態として望ましささえ感じてしまいます。しかし、心配をしている時は強い不安を感じますし、何も手につかず、実際にはとても苦しい状態です。 カウンセリングをしていると、ほとんどのクライアントさんが心配事を抱えていることを実感します。認知行動療法のカウンセリングでは、その心配事

No.3|教育・育児|注意訓練(こども用)の概要

注意訓練を始める前に:注意に関する基礎的な理論子育て世代のお母さんやお父さんが、子どもに身につけて欲しい能力の1つにあげているものに「集中力」があります。 心理学では、集中力は「注意」という概念で研究が行われていますが、注意とは何なのかと言われると非常に困ってしまう概念でもあります。 子どもの集中力を育てていくには、ちょっと面倒であっても、注意という概念の分類について理解しておくと良いでしょう。いろいろとある分類の中でも今回は「注意の制御(コントロール)」について理解して

No.4|育児・教育|こどものためのマインドフルネス

マインドフルネスとは?マインドフルネス(mindfuleness)という言葉がメディアでも取り上げられるようになり、書籍もたくさん出ています。もともとは慢性疼痛の治療法として開発され、精神医学や臨床心理学の分野で研究と実践が行われてきました。最近では、Googleの社員研修にはマインドフルネスを取り入れているという情報発進から、多くの企業においても注目が集まっているようです。 マインドフルネスは「今ここに意図的に注意を向ける」と定義されていますが、これだけの説明だと、意味が