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ロー(未修)の入試、小論文について

 ロー入試については優秀な先生や親切な先輩方がたくさんコンテンツを残してくださっていて、それを参考に対策を進められている受験生の方も多いと思います。ただ、ひとつ思ったのは、未修入試の情報や体験談は意外と少ないのかな……と。これは実際筆者が去年の未修入試に臨む際に感じたことで、今年もSNS上でそうした声を聞きました。

 筆者はいわゆる東大・京大といった超名門ローの学生ではありません。しかし、一応直近のロー未修入試合格者ではあります。どれくらいニーズがあるかどうかはわからないですし、大した話もできませんが、「試験対策こんな感じだったよー」という体験談を書き残しておこうと思います。どうか話半分に聞き流していただけましたら幸いです。


簡単な自己紹介

 まず、筆者の(比較的しょぼい)スペックについて簡単に述べます。

・いわゆる純粋未修ではありません(予備試験の戦歴あり。ただし、論文論外)
・法律学科の出身ですが、学部の成績はあんまりよくありません。東大京大のローであれば、GPAで足切りを喰らいかねないレベルです。
・現在フリーランス、なお職歴にブランクあります。
・三度の飯より文章を書くのが好きです。

 すでに行きたい学校はある程度絞られていたものの、去年の予備試験の短答直後に体調を崩してしまったこともあり、2024年の既修者コースを目指すかどうか迷った挙句に本命校(現・ヘイロー)の入試を1回だけ、それも未修専願で出願することにしました。

未修小論文、どうしよう?

 未修者コースの試験科目のうち、最大のヤマは「小論文」だと思います。ただ、あまりにも情報が少ないんですよね。その中でも数少ない貴重な情報源がこれ。

 べクサ・藤澤たてひと先生の法科大学院受験シリーズです。未修受けようかな、と思った段階で、未修入試に関する項目はひととおり読み込みました。非常に役に立ったので、これから未修者コースを受ける皆様にもおすすめしたいです。が、一点、困ったことがありました。筆者は「ローの小論文やステートメントを三段論法で書く」という藤澤先生の推奨する攻略スタイルにどうしても馴染めなかったのです。

 「法律家を目指す者、法的三段論法を使いこなすべし。ローもそこを見ているはず」という先生のご指摘はその通りだと思いますし、真似できる人は迷わず真似した方がいいと思います。でも、筆者にそんな能力はなく、ついでに時間もなかったので(ついに出願を決めたのは願書締切3日前)、それは諦めました。

 結局、「大学入試小論文のおぼろげな記憶」という昔とった杵柄と、「これまで仕事でやってきたこと」をベースで戦うことにしたのです。正直、まったく受かるとは思っていませんでした……。

 さて、全体的に低スペックな筆者ですが、特記事項といえそうなことがひとつだけありました。

・職業:文筆業

 とはいえ、仕事で書く文章と小論文はまったく違います。藤澤先生のコラムや志望校の過去問を見ながら、どうしようかなーと考えて、小論文の定評ある参考書を数冊買い、さらに現代文読解に関する参考書や学習マンガ(ドラゴン桜2)を読み直すことにしました。

 というのも、今の未修小論文の主流は課題文読解型。問題文(※論説文)の要約を書かせて、さらに問題文の内容を踏まえつつ自分の意見を論述させるというスタイルです。

 たぶん、メインともいえる意見論述問題ではあんまり差はつかなくて(構成面で形式が整っていれば自動的に文章に説得力が生まれるので、ある程度点数が入りそう)、どんぐりの背比べ。最後は運次第かな、と感じていました。

 ただ、1点、確実に点を稼ぐのに重要と思ったポイントがありました。

 それは、課題文を「要約」する力です。

 そして、適切に要約を行うためには正確な文章読解ーー接続詞や指示代名詞をヒントに文章構造を紐解く作業ーーを行い、キーワードを拾う必要があります。

 文章を構造化して捉えること、そして論理的文章における接続詞の大切さはお師匠であるY先生にも常々言われていたことですから、法曹を目指すのであれば絶対に外せないポイント。というより、ロー側もそのあたりの素養を見たくて、課題文読解型の小論文を出しているはずです。

 拙いなりにそんな予想を立て、参考書の該当しそうな部分を何回か読み、過去問を何問か答案構成したところで、本番を迎えました。

 そして、要約以外の部分ーー意見論述問題の構成は、ビジネス文書における論理展開の鉄板・PREP法をベースにしました。

P:主張(要点)
R:理由
E:具体例
P:主張(要点)

 一応、論理的文章とされる型ですから少なくとも減点はされないだろうと思いましたし、何より法的三段論法で小論文を書くのが筆者には難しかったからです。

 なお、実際の構成は、問題文の要約(さらに、必要に応じて、問題文の内容を踏まえての反対利益紹介→反論→自論の展開という、「確かに→しかし」パンチ)も入ってくるので、もう少し複雑なものだったように思います。

【その他もろもろ】訊きまくる、頼る、精一杯あがく

 ステートメントはY先生に見ていただいたほか、めちゃデキ営業パーソンであるD氏にアドバイスをいただきました(なお、D氏には面接でもお世話になりました。神)。

 ステートメントも面接も、人に自分という商品を売り込むためのものです。デキる営業パーソン以上に、頼れるアドバイザーがいるでしょうか(いや、いるわけがない!!)。

 ヘイローのステートメントは文字数制限が厳しかったため、三段論法どころかPREP構成すらできず、最終的に「1本筋の通ったストーリー」で押し切ることになりました。論理的文章というよりも、セールスライティング寄りの文章です。セールスライティングの手法もロジカルといえばロジカルですが、でも、なんといいましょうか。セールスライティングは最後は熱量。文章としての説得力が書き手の熱量に比例するところがありますので、今回のステートメントもじっくり時間をかけて、真摯に、そして「盛らずに」書きました。

 文章は正直です。嘘はバレますし、小手先で書いた文章もバレます。特にヘイローの場合は面接もありましたし。このあたりは職業柄、結構こだわった部分かもしれません。もっとも、ヘイローでは点数開示ができないので、肝心の評価は試験官の先生のみぞ知る……ですが。

 筆者にとって、ヘイローは一貫して本命校であり続けた学校です。「倍率も高そうだし、受かるわけなかろう」と半ば諦めの境地でしたが、「やれるだけのことはやる」の精神で、とにかく精いっぱいあがきました。

 ヘイロー入試を突破した教え子のいるI先生に本番の解答用紙情報をもらい、慌てて横書きの原稿用紙を買い求めたりもしました。

 なんといっても本命校です。結果はどうあれ、礼儀は尽くすべきです。

 こうしていろんな人に助けてもらいながら、筆者にとって最初で最後のロー入試は終わったのでした。

今改めて思うこと

 幸いご縁をいただくことができ、当初の志望校がそのままヘイローになりました。時間がない中ですごくバタバタしたけれど、今振り返ってみると「できるだけのこと」はやったのかなと思います。本命校1校のみという受験状況でしたので、運任せのぶっつけ本番にはできなかったです。

 未修者コースの受験生の皆様は今、本番直前期で不安だと思います。でも、この手の勝負事はきちんとやればそれだけ報われやすくなるものだと思いますので、志望校への愛情を持って、どうか迷いなく試験対策に突き進んでいただけたら嬉しいです。

 最後に一言、他学部・非予備校利用組でローを目指される純粋未修のみなさまへ。

 ローは入ってからが本番です。入学1週目から本格的な授業が始まります。カリキュラムの都合上、進度も鬼速いので「ローに入ってからのんびり勉強しよう」「1から先生に丁寧に教えてもらおう」「なんとかなるでしょ」という発想は危険です。

 今からガリガリ法律の勉強をしてください。間に合いません。

 ヘイローだけの現象かもしれませんが、期末テストは論文式がメインです。たぶん、既修ロー入試レベルくらいの問題が普通に出てきます。

 予備校の入門講座をとった経験のある人も油断は禁物です。ロー生活は激流です。毎日が目まぐるしく、一度飲み込まれると再び水面に浮き上がるのは難しいです。

 ヘイローは比較的温情があるといわれているロースクールですが、それでも「隠れ既修」に分類されるであろう同期も含めヒイヒイ言っています。筆者自身も今、泣きながら頑張っています。

 それでも授業は楽しいですし、熱意に満ち溢れた先生方のいる良い環境です。今から腹を決めればなんとかなる部分も多いと思いますので、どうか怖がりすぎないでください。筆者も今の進路に悔いはありません。

 それでは、みなさま、どうかお元気で。来春どこかのロースクールでお会いしましょう。待っていますよ……!



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