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初めて設計図をもらった時、何を見ているか?

 我が子を育てるように、弱いところも、強いところも、誰よりも知る。1年後か2年後か、笑って送り出せるように、自信を持って建築をつくる。

 現場配属が決まり、初めて設計図をみる時、ざっくり眺めるのではなく、ポイントを絞ってページをめくっている。自分はいろんな思考を巡らせながらあれやこれや、同時に処理することが苦手。決めたポイントだけに特化して、最初から最後までページをめくる。途中でやっぱり色々なことに気づいてしまうが、それはそれで「気づけた」ことがラッキーなので、ちゃんとノートにまとめている。すると、最後まで読み終わった時にやるべきことがみえてくる。

1:やったことがないところを探す

 今までやったことがない、仕様や納まりを探す。やったことがないのは、やっぱり怖い。その恐怖を徹底的にリサーチで潰す。そこで、その未経験のピックアップが完了すれば施工可能な協力業者へヒアリングをする。(インターネットで探す、知り合いや先輩、後輩に相談する。探し方はいくらでもある。)打合せ資料として、変更前、変更後の見積、カタログ、過去の施工写真、代替案を用意してもらう。その打合せが、知らないことを知れる学びの場になる。但し、「資料」と「何を打合せしたいのか?」がないと、中身のない打合せに発展するので注意が必要。

2:やりにくいところを探す

 平面図だけでは読み取れなくて、断面図も一緒に見なければ理解出来ないところ、そもそも断面図がないところ。施工段階において職方も理解出来ないところだろうし、こういうところをBIM使って納まり検討すべきだと思う。とにかく断面のイメージが見えないところ。
 また、足場が架けにくいところ、何回も盛り替えが発生しそうなところ。こういうところが、事故が発生しやすいし、工程や手間がかかる。重点的に施工中も何度も確認に行きたいところ。ここをスペシャルに解くと安全や工程、原価がプラスに転じておもしろい場所になる。

3:設計者のこだわりポイントがどこにあるのかを探す

こだわりをちゃんと具現化してあげることで設計者の存在意義が建築に宿り、それが建物の個性として表現される。だから、こだわりポイントはちゃんと設計に寄り添い、それ以外は施工側に寄り添ってもらえる余白があると考えてもいいのではないかと思う。
 そして自分なりに設計図から意図を読み取った後で、設計者に「今回のこだわりはどこにありますか?」を確認する。答え合わせをして、自分と設計者の感覚に大きなズレがないかを確認しておく。大きなズレは、のちに打合せをしていても噛み合わない、まとまらない、決まらない問題に発展する。

4:VE(Value Engineering)を探す

 現場は設計図だけではつくれない。変更は絶対発生する。変更のない現場はない。変更により追加コストが発生するのがわかっていれば、そのための貯金を確保しておきたい。VEは業者からの提案はもちろんだが、大事にしているのはメンテナス性は向上しているか?見え方は大丈夫か?(ダサくないか?)施主のためになるか?である。これらを外したVEは、後に問題になる。変更前の方が良かったではないかと。貯金のある状態で、施工を進めるほど、施主、設計、施工の関係が健全なものはない。共同作業で、お金でもめた関係はさびしいものである。

5:漏水しそうなところを探す

 漏水するのがわかっているのに変更を恐れて、設計図通り施工することはナンセンス。そのあと漏水しようが、施工責任を問われます。施主も喜ばないし、不幸で余計な手間と時間とお金が掛かります。
「水は上から下に流れる。水は外から中に入る。水は躯体で止める。」
防水ラインが曖昧、一筆書きで閉じられていない。防水端部の押さえ処理ができないなど、のちに詳細図で検討するを忘れない為に、あやしい部分を押さえておく。

6:基準をおさえる

 現場で問題が発生し、図面通り行かない時や手順を変更せざるを得ない時がある。そんな時は何を基準に判断するか?
 そこで準拠図書(適用図書)設計図の特記仕様を見る。年度も合わせて確認する。施工するにあたり何を基準につくるのかをちゃんと押さえる。ブレれたらダメです。現場で納まらないとか業者の言いなりで、「なあなあ」では大失敗する。そこに歯止めをかけるのが、現場監督です。基準だけは外しちゃいけない。施工全てに根拠があることを忘れたくない。

7:契約内訳と設計図をオーバーラップさせる

 契約費目別内訳書を流し読みする。設計図で読み取れなかった仕様を探す意味で、内訳書を見ておさらいをする。見直しで流し読みをしながら、同時に単価も、安い高いをチェックする。どの工事この項目があったと頭の片隅に、ブックマークするイメージ。

8:建物の骨格を理解する

 骨格がどうなっているか?さらに設計図をもとに、カタチを頭に描いていく。
どこまで内部か外部か?躯体の部分を色付けしていく。色がついたところがその境界線で内外の境目で、構造と意匠の区分け。それだけでもカタチは頭に、インプットされる。

最後に

 変更してなんぼ。とにかく設計図通りなぞる若手所長がいる。間違いやもっと機能が良くなることに、もっとシンプルに納められるのに、そんな余地があるのに。変更を恐れないでどん欲に建築を育てるように施工を進めてほしい。それを楽しんでほしい。
 お客さんにはきれいで、安くて、早くて、使い勝手のいい、美しい建築を供給する。結果として関わる全ての人に、ALL HAPPYを導けるはずだから。

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