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NPOで働く人にこれから求められる境界線を引きなおす力~書籍:組織の壁を超える「バウンダリー・スパニング」6つの実践~

以前noteで「クラウドファンディングの次のスタンダード:複数の団体で組みインパクトと寄付をうむ」を書いてから、NPOや企業同士が組んで事業を行う際に、NPOで働く人に求められる力は何か考えていました。

noteで紹介したクラウドファンディングに関連する、今井さん、工藤さん、安田さんが登場するYouTubeをみていました。

YouTubeの中で工藤さんが、「これまでの団体同士のネットワーク組織や協議会は、束ねる団体が加盟団体から会費を徴収して運営を担うというかたちで成り立っていたが、このやり方が今後も継続するかはわからない。今回は、横の団体同士がつながりお金を集め、事業連携をする新しいモデルである(私の意訳なので具体的なご発言を確認した方は上のYouTubeをみてください)」とおっしゃっています。

従来の会費上納モデルは、中間支援団体やネットワークの団体には確実に拡がり定着し、固定化しているように思えます。でも思い返すとそのモデルでうまくいっているところもあれば、全然会員が集まっておらず消滅しているところもあります。

DxP・育て上げネット・キズキグループが挑戦しようとしている、複数の団体で資金調達から事業実施まで連携し困りごとを抱える人をを一気通貫で支援するやり方は、これからのスタンダードになるでしょう。しかし、他の団体がそれをそのままTTP(徹底的にパクる:NPOの基本姿勢を表した言葉)してもうまくはいかないと思います。なぜなら従来の会費上納モデルで成功しているところもあれば、失敗しているところがあるのと同様だからです。

では何ができたらうまくいくのか?

先に紹介したYouTubeでのお話の中で「代表同士で話すことはあったが、全てを知っているわけではない」「職員同士のつながりはなかったので、今回のプロジェクトで連携が初めてできたことはおおきい」といったことがキーワードになるのではないかと思います。いくら代表同士が仲良くしていたり、同じ分野で活動している団体だとしても、いきなり連携することはできません。うまく連携を機能させるためには、団体や活動の「境界線のひきなおし」が必要です。

境界とはなにか?

この境界線をひきなおす力について、書籍:組織の壁を超える「バウンダリー・スパニング」6つの実践が参考になります。

われわれがいま直面する重要課題は相互依存の関係性にあり、各集団が一致協力することでしか解決できない。企業や政府、組織、コミュニティが現状の問題を解決し、新たな機会を実現するためには、リーダーは集団の境界やアイデンティティを越えて考え、行動しなければならない。「バウンダリー・スパニング・リーダーシップ」は、より高いビジョンやゴールをめざし、集団の境界を越えて方向性・団結力・責任感を築く能力である。(P13・P14から抜粋)

社会問題の原因は複雑に絡んでいることが多いので、問題が発生する仕組みを構造的に理解し、多様なステークホルダーと連携して困りごとを抱える人達を支援していくことが重要となります。ここで言う連携は、表面的な情報交換や定期的に行うワークショップなどではなく、社会的インパクトにつながる事業の協働です。

多様なステークホルダーと連携する過程で、文化的な違いや組織的な違い等が起因する衝突が引き起こされます。この衝突に対応することは大変なことでありますが、①垂直方向の境界、②水平方向の境界、③ステークホルダーとの境界、④人口属性の境界、⑤地理的な境界といった5種類の境界を捉えて、引きなおすことができれば、従来の方法ではない革新的な方法をうみだすことにつながります。(それぞれの境界については本の中で詳細に説明されていますので、気になる方は是非読んでみてください)

①垂直方向の境界
会社の上司・部下の境界を差します。階層図、年功、トップダウンなどで表現される、組織の様々な階層の間にある境界です。
②水平方向の境界
会社の部門間の境界を差します。マトリックス組織、バックオフィス、プロフィットセンター/コストセンターなでで表現されます。
③ステークホルダーとの境界
会社の顧客やビジネスパートナー、サプライヤー、下請け企業など製品やサービスを届ける関係者との境界を差します。
④人口属性の境界
性別、人種、学歴、思想など多様な人間集団のあいだに存在する境界です。
⑤地理的な境界
本社/支社、グローバル/ローカル、地域、市場など地理的な制約からくる境界です。

128人のエグゼクティブから境界をめぐる事例をヒヤリング(複数回答可)したところ、水平の境界が(71%)、地理的な境界(26%)、ステークホルダーとの境界(17%)、属性の境界(17%)、垂直の境界(7%)となったそうで、組織の部門やチーム間の境界が起因することが多く発生しているようです。

なぜ境界ができるのか?

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