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「都市部の子育て世代のコミュニティをつくってください」とまるっと仕事を依頼された時に参考になる本を紹介~書籍「コミュニティ・オブ・プラクティス」~

私はIT企業で10年間システムエンジニアと人事系の職で働いた後に、NPOに転職しました。転職して6ヶ月くらい経って少し慣れてきた時に、新規事業の仕事のオファーがありました。

「都市部の子育て世代のコミュニティをつくってください」

東京のある地域の高層マンションの共有スペースに、遊び場と習い事ができるスペースの運営をすることになったのですが、そこでコミュニティをつくることが私のミッションとなりました。

前職の企業でITシステムを作ることはしてきましたが、コミュニティはつくったことはありませんでした。いったいどうしたらいいのだろうか・・・路頭に迷った私はいつもの本屋に直行し、そこで見つけたのがこの本です。

コミュニティって何だ?見えないものについて知る

これまでの経験にないことに取り組む時は、対象となるものが何か?定義を知ることがとっかかりとしてよいです。この本では、欧米で成長している企業は、ナレッジマネジメントとして実践コミュニティの育成を徹底して行っていることを挙げた上で、その仕組みを説明しています。

ナレッジ・マネジメントは情報を集めることではない。人と人をつなぐことだ。

読み始めた時は、ビジネスの世界の話かな・・・と半信半疑だったですが、この一文を読んで、子育て世代の人をただ施設に集めているだけではだめで、地域全体に還元できるような知識やノウハウを高めることを目的にするといいんだなと気づきました。

この本では、実践コミュニティとは、「あるテーマに関する関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技能を、持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団(P33から抜粋)」として定義されています。そして「実践」の言葉は、「プロセス」の対語として捉えられていて、プロセスがあらかじめ計画可能な仕事のやり方であるのに対して、実践は一つのプロセスと次のプロセスの間で、人間が行う仕事で「体験知」を伴うものであるとされています。以下のP34 の記載が分かりやすいです。

彼らは必ずしも毎日一緒に仕事をしているわけではないが、相互交流に価値を認めるからこそ集まるのである。彼らは一緒に時間を過ごしながら、情報や洞察を分かち合い、助言を与え合い、協力して問題を解決する。自分たちの状況や野心やニーズについて話し合う。共通の問題についてじっくり考え、さまざまなアイデアの可能性を探り、お互いのために共鳴板の役目を果たす。またツールや規格、一般設計、マニュアル、その他の文書を制作することもあれば、単に暗黙の了解を深めるだけのこともある。彼らはどのような形で知識を蓄積するのであれ、共に学習することに価値を認めているからこそ、非公式なつながりを持つのである。

コミュニティは何でできている?分けて理解するとアプローチ方法がわかる

コミュニティについてなんとなくイメージがついたのですが、いったいどう行動したらよいかわかりませんでした。読み進めていくと、この本ではコミュニティを3つにわけて説明しています。

・領域
実践コミュニティが熱意を持って取り組む、知識あるいは専門分野が何であるかを表す組織にとってどんな知識領域が重要なのかを検討することで、どんな実践コミュニティを育成していくべきかという議論が可能になる
・コミュニティ
実際に相互交流している人たちの集団を差す。どんな人と人のネットワークがすでに存在しているかを探ることで、実践コミュニティの萌芽を見つけることができる
・実践
知識を生み出す活動を意味する。定期的に集まるグループであっても、知識を相互に学び合い、高め合うような実践を共にしていなかえれば、単なる知り合いに過ぎない。

これをもとに、「コミュニティが扱う領域を明らかにして、すでにやりとりのあるネットワークにはたらきかけて領域に関心のある新規加入者を募ってもらうことでコミュニティ化を促し、定期的に発表や実践の場を施設で提供してもらうと、コミュニティはつくられ発展していくのではないか」と思えるようになりました。関連して勉強になった内容を以下ご紹介します。

・領域をはっきりと示し、その内容や範囲を定義することは、一種の芸術
・実践コミュニティが最も繁栄するのは、参加者の情熱や野心と交差する時
・メンバーが領域の重要な問題について、定期的に情報交換する必要がある
・15名未満のコミュニティは非常に親密。15名~50名程度なら、人間関係はより流動的かつ多様になる。
・50名~150名程度のコミュニティは、テーマや地理に基づくサブグループに分かれていることが多い。
・150名を超えれば、サブグループが強いローカルなアイデンティティを持つようになる。
・コミュニティに貢献すれば、自分の利益になって返ってくる互恵性が重要
・メンバー全員が習得すべき、共通の基礎知識の確立が実践にとって重要
・実践には、特定の行動様式、問題やアイデアに関する見解、思考様式、倫理観も含まれるミニ・カルチャーでもある

コミュニティを盛り上げるためのポイントの絞り込み

ここまで読み進めてきて、コミュニティについてのイメージが付き、領域・コミュニティ・実践の3つにアプローチすればよいことがわかりましたが、それは結構難しいことがわかりました。ですが、具体的に事業として進めていく上でどこからやっていけばいいのかを考えなくてはいけません。

本書では、実践コミュニティ育成7原則を挙げています。(P95から抜粋)

1.進化を前提とした設計を行う
2.内部と外部それぞれの視点を取り入れる
3.さまざまなレベルの参加を奨励する
4.公と私それぞれのコミュニティ空間を作る
5.価値に焦点を当てる
6.親近感と刺激とを組み合わせる
7.コミュニティのリズムを生み出す

この中で、これだと思ったのは「3.様々なレベルの参加を奨励する」です。コミュニティへの参加には、3つのレベルがあって積極に参加する「コア・グループ」、その次には定期的に会合に出席する「アクティブ・グループ」、そして大部分はめったに参加しない傍観者的な「周辺グループ」があります。周辺グループは単なる傍観者ではなく、コミュニティでのやりとりから自分なりの洞察を得て、活かしていることも多い存在です。コミュニティのメンバーはこれらのレベルを行き来しています。コミュニティはこうした熱意に差がある人達によってなりたっているので、まず中心となるコアグループの形成が重要となることがわかりました。

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コミュニティ・オブ・プラクティス P102から抜粋

この学びから、単に興味ありそうな領域でイベントを開催するのではなく、既になにかしら活動をしたりネットワークを持っている人を潜在コアメンバーとして特定し、その人にイベント開催をお願いするようにしました。

そして、本書に以下書かれているコミュニティを活性かするためのコツをコアメンバーにお伝えして、アクティブメンバーや周辺メンバーが集い、活動が盛んになるように伴走していきました。

成功するコミュニティは参加を強制するのではなく、傍観者のために「ベンチを作る」ことをしている。たとえばコミュニティ・ウェブサイトの非公開の会議室や、コミュニティのイベントや、一対一の会話を通じてセミ・プライベートな交流を図る機会を設けるなどして、周辺メンバーをつなぎとめておく。またアクティブメンバーには、ある程度の指導的役割を担わせる機会を作ってもよい。成功するコミュニティは、メンバーをより積極的に参加させるために、コミュニティの中心にたき火を起こし、人々をそのぬくもりに引き寄せるのである。(P101-102から抜粋)

コミュニティの芽をつぶさないために

小さなコミュニティが複数できるようになってくると、うまくいくコミュニティと、消滅してしまうコミュニティの2極化が目立つようになりました。なんでかな?と思い本書を読みなおしてみると、コミュニティの発展段階は以下のような変遷をたどることがわかりました。

<コミュニティの発達段階>

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コミュニティ・オブ・プラクティス P116から抜粋

この図からわかるように、コミュニティができてから成熟に至るまでは、一直線に活力と認知度のレベルがあがるのではなく、いったん下がってから成熟に向かって進んでいきます。ですので、コミュニティができて安心するのではなく、そこから盛り上げていくための支援が必要になります。

コミュニティを形成したグループに対して、施設の利用料金を安く提供したり、コアメンバーの相談にのったり、チラシをつくってあげたりといったコミュニティの活力を増すためのはたらきかけをするようにして、一度できたコミュニティが盛り上がるようにサポートしてきました。

さいごに

都市部の子育て世代のコミュニティをつくってくださいと言われた時には、どのようにしたらいいのか全くわかりませんでしたが、この本を読むことで目に見えないコミュニティについてイメージし、構造を理解して、盛り上げるためのヒントを得ることができました。ここまで具体化できれば、あとはこれに沿ったアクションをして、そのフィードバックを改善に活かしていけば事業としてかたちになっていきます。まさしく、困ったことはたいがい本に書いてあるなと実感した事例でした。


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今給黎 辰郎(いまきゅうれいたつお)

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