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「プレイングマネージャーなんで」と言った時に考えて欲しいこと

企業でもNPOでも「プレイングマネージャー」という言葉を使う時がありますよね。この意味は、マネージャー自身も顧客や受益者、関係者へのなんらかのサービス提供をしていて、そこに対する定量的な目標を持っているのと同時に、事業部全体の数字目標も持っている。そして、事業部に所属する職員の人事や、育成、モチベーションなどなど人事・労務の責任も負っているということです。

この言葉を使うこと自体はなんら問題はないのですが、注意してもらいたいのは、その後のセリフです。例えば、「自分はプレイングマネージャーなので、部下の育成は後回しになっちゃって。」とか、「自分はプレイングマネージャーなので、常に現場にいることはできません。」とか、「自分はプレイングマネージャーなので、日々目の前に追われていて、一年後のことなんてわかりません。」など。なんらかのできない理由にすることが多いのではないでしょうか。

私がマネージャーとしてNPOで働いていた時は、まさしく、プレイングマネージャーでしたが、自分がこのセリフを使うときは、手が回らない時の言い訳の時に使っていたことが多かったです。マネージャー会議や代表との面談などで、目標未達成の理由を話さないといけない時に自分を守らなくてはいけませんので、仕方ないことかなと思います。

私の失敗談で恐縮ですが、プレイングマネージャーなのでできませんでしたと言い訳し続けた結果どうなったかをお話します。

当時、ひとつの施設の運営をするマネージャーと、ひとつの新規事業を立ち上げるマネージャーを兼務していたのですが、施設で職員同士の人間関係が悪化してしまう問題が起きてしまいました。そこで、職員ひとりひとりにヒヤリングすると、どの職員も自分のいいように解釈したことを伝えますから、なかなか真実はわかりません。ヒヤリングをした多くの施設職員からは「今給黎さんが施設にいる時間を増やしてください。そうしたら、わかりますから」という言葉が多かったです。しかし、新規事業の立上げで別の場所にいかなくてはならず、それはかないませんでした。その結果、ひとりの職員に退職勧告をすることになり、周りの職員もそれが影響してのちのち退職・異動することになりました。そして、その結果を生んだ私は、マネージャー職を下ろされることとなりました。

予定通り新規事業の立上げが予定通りできましたが、もうひとつの施設運営に対して「プレイングマネージャーだから」と言い訳をして、できないことを放置した結果、多くの人を傷つけることになってしまい、自分も責任をとることになりました。これは大失敗です。二度と起きて欲しくないことです。

その時のことを振り返ってみると、根底にはこんな思いがあったと思います。自分は、複数の事業のマネージャーを兼務して、どちらも成功させることができる有能な人材であることを証明してやると。その時はわかりませんでしたが、数十年たって振り返ると、そうした自分に対するおごりというか、若さならではの思い込みというものがありました。

そもそも、事業運営と新規事業立ち上げは時間の使い方が違います。新規事業立ち上げはやらないといけないときにそのタスクをやらないといけないので、作業の緊急性がとても高く、どうしてもかかりっきりになってしまいます。いっぽう施設運営は、日々の運営はまわっていきますので、緊急性はそれほど高くない、がゆえに、新規事業立ち上げの時間にうばわれていきがちです。ですが、現場が健全にまわっているのか、空気感を感じたり、ちゃんとみているよということを職員に感じてもらうことが重要なのですが、それができなくなると、職場の雰囲気がよどんでくる。よどむというのは、職員同士のマウンティングや、不正とまではいかないがグレーゾーンのずるい対応などがでてきて、健全な職場で働きたいという思いを持つ職員を傷つけていくことです。そうなると、様々な問題がおきてきて対処することに追われるようになり、根本原因の解決や予防ができなくなり後手後手となってしまいます。

忙しい状況だと、いい感じにまとめてくれる職員やいい感じに資料をつくってくれたり、1いったら5くらいくみとってくれるわかった職員のことを優秀でいいなと感じてしまい、ついついひいきしてしまうのですが、その職員が他の職員にどのように接しているのかや、他の職員が果たしている重要な役割をきちんと理解しないと、不公平感がでて、ばらばらになってしまいます。

今、もう一度、当時にもどれるとしたらどうするか考えてみたのですが、
まず、一人で2つも3つも複数の事業を見ることはできないことを経営層と現場職員に伝えます。その上で、経営層には自分の意思決定の過程を共有したり、相談をする。ある程度筋道だてて考えることができる人って、これがいいに違いないとスピード重視で一人できめてやりがちなのですが、その筋道は独善的なことが多いので、すこし頼りないと思われてもいいから経営層に相談しながら進めていきます。

現場職員に対しては、マネージャーがいることが少なくなることによって、様々な弊害が起きる可能性があり、それを回避しつつ、いい職場やいい仕事環境を維持するには、全員のリーダーシップ向上が必要と説明し、チームコーチングや職員個別にコーチをつけるなど第三者の力を借りながら、複数の目で見ていくことを模索すると思います。

最後にマネージャーの皆さんに伝えたいことは、プレイングマネージャーという言葉をつかって言い訳をしている時、自分は孤立していないか確認してみて欲しいということです。ひとりの力でプレイングマネージャーはできません。経営層・現場職員、そして第三者の協力なくしては、そもそもが不可能なのです。その前提に立ってやっていくことをお勧めします。

今回は、「プレイングマネージャーなんで」と言った時に考えて欲しいこと
というお話でした。

私は、NPO向けの伴走支援のお仕事をしています。今回のお話のようなプレイングマネージャーには、第三者の伴走支援が役立つことが多いです。是非一度ご検討ください。

今回のお話はstand.fmでも聴くことができます。


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