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NPOのお仕事でやさしさをつくるにはどうしたらいい?

これからのNPOでの事業設計の上で、「やさしさ」を含めることが大事になるだろうなと思い、今回noteにまとめました。

NPOが困りごとを抱えている受益者に対する事業をを考える時には、3つ視点があります。

1.困っている現状を支援し、それ以上悪くならないように歯止めをかける
2.困っている原因を特定し、取り除いたり、環境を改善する
3.改善された状況の中で、困りごとを抱えていた人が主体性をとりもどす

困った状況、問題を抱えた状況を支えるだけでは、すぐに元の状況に戻ってしまうので、時間をかけてその問題と問題がおきている社会や環境にはたらきかけていき、当事者の自己肯定感や自己有用感がマイナスの状況を回復した上で、主体性を持ってもらい社会に参画してもらうようになることまでがNPOの活動の範囲になるのです。

今回のお題の「やさしさ」がどこで必要かを見ていきます。1つめ2つめは目標を設定してそれに向けてやっていけばいけばよく、どちらかの言うとやさしさより、戦略的思考や目標達成に向けた行動力が重要です。やさしさは、3つめの主体性をとりもどし、社会に参画してもらうための活動で必要になります。

なぜ3つ目の活動にやさしさが必要になるか説明をします。この時点では、NPOの1つめ&2つめの支援活動により、危機的な状況を脱し、環境は改善しているので、なんら問題はないと一般的には思われがちで、そこからは自分の力でやってねと自己責任にゆだねられてしまいます。ですが、自分が何をしたいのか、どうしたいのかを明らかにすることは簡単ではなく、心理的安全性が高い環境で、振返りができて、相手も自分も無理がない活動が継続されるやさしい関係性でのはたらきかけが不可欠になります。

少し抽象的なお話になっているので、具体例を挙げます。

企業でもNPOでも、職場でメンタルヘルスを病んでしまう人がいます。休職して状況が回復して戻っても、また再発してしまい休職を繰り返す人もいます。そして、何度かそれを繰り返すと退職勧告されることになります。

周りの人は、「自分もいつかはああなってしまうかもしれない、ああなっては給料がもらえなくなって生活できなくなるかも」と不安になる人も出てくるかもしれません。「自分が下手に関わっても逆効果になって自分のせいになるから表面上であたりさわりない程度にしよう」と思う人もいるでしょう。ある人は、「メンタル弱い人いるのは仕方ないが、自分はそうではないからよくわからない。復帰したければいたらいいし、合わないんだったら辞めればいいだけだ」と思う人もいます。また、「メンタル弱い人はコストがかかるので、既往歴がある人は採用しないでおこう」という管理者もでてくるでしょう。

こうした現状を踏まえた上で、もしもの仮定の話なのですが、大企業につとめていたとして、ある日社長に呼ばれて、社内でこうしたメンタルヘルスを病んだ人を支援するNPOを立ち上げて対応したいのだが、どのように事業設計したらいいだろうか?と問われたら、あなただったら何と答えますか。

私だったら、次から挙げる5つの団体を個別に立ち上げて活動してもらうことを提案します。

1.緊急的な問題に対処するNPOを設立する
これはメンタルヘルスを病んだ人の相談をうけ、上司と当事者、産業医の間に入って各種調整をし、メンタルヘルスを病んでしまった原因をご本人、上司、同僚、環境と調査する。これは、メンタルヘルスの不調を訴えても上司の力量や考え方で二次被害をうける場合があるので、それを第三者的に入って緩和する必要があると考えるからです。この組織にはある程度専門知識を持った人や、専門的な研修をうけた人を配置します。

2.メンタルヘルスを病んで復帰し、現在普通に活動している人たちが活動する当事者団体をある程度の規模感で複数設立する
メンタルヘルスを病んだ人は、「もう自分は復帰できない」、「復帰できたとしても左遷される」、「キャリアは終わった」など未来を描けない状況や、自己肯定感がマイナスの状況なので、そうした気持ちを受けとめて、分かり合える当事者団体を複数つくってもらいます。複数設立するのは、職種や地域で分けてコミュニティとして適切な人数を維持するためです。

3.メンタルヘルスを病んだ人の環境を改善するための啓発活動やアドボカシーをするNPOを設立する
ホームページやSNSなどで広報をしたり、研修プログラムの提供、年に一回のメンタルヘルスを考える啓発フォーラムの開催、メンタルヘルスを病んだ人の人権について扱うプログラム提供を行います。マーケティングやイベント運営、動画撮影・編集、ホームページ運営に得意な人や、人権意識が高い方が集まる団体になります。

4.メンタルヘルスを病んだ当事者ではないけれども、適した関わりを持ちたいと思っている人たちが、学び、具体的なアクションができるようにサポートするNPOを設立する

5.これらの団体運営をサポートする中間支援団体のNPOや財団を設立し、ファンドレイジングや組織基盤強化の伴走支援、社会的インパクトマネジメントの実施の支援、各団体の人材交流企画を実施する。
 
なぜ一つの団体で5つの機能を提供するのではなく、5つの組織にわけるのか?という疑問を持つ人もいると思います。それは、それぞれの団体の「代表」に立つ人が多ければおおい程、リーダーシップが発揮される点が増えるので、その人自身の成長にもつながるからです。代表といち事業部長が発揮するリーダーシップは違います。小さい団体でも代表として活動することで、全体をみた社長候補育成につながります。

また、こんな幅広い機能をひとりで統括できるのはカリスマ代表しかいません。普通の人でもできることが大切です。

今回は説明上5つの組織と言っていますが、同じ役割でも複数の団体ができてもいいかなと思います。完全統治型よりもエコシステムの多様性を生む方が結果として成果がでるのではないでしょうか。

ちょっと話が脱線したかもしれませんが、この紹介した5つの団体の中で、やさしさを担うNPOは4つ目のメンタルヘルスを病んだ当事者ではないけれども、適した関わりを持ちたいと思っている人たちが、学び、具体的なアクションができるようにサポートする団体です。

本来、メンタルヘルスを病んだ人の対応は、その部署やチームでケアするべきだと思うのですが、機能化が進んだ現代の組織では、メンタルヘルスを病んだ人の対応は上司の責任だとか、人事が扱えとか、最終的に産業医の判断だとかどんどん細分化されていきます。でも、結果としてこうした機能的な細分化ではメンタルヘルス環境を改善することにはつながっていないですよね。なので、部門やチームでケアをするにはどうしたらいいかをNPOのメンバーが第三者としてはいり、はたらきかけていくことになります。

え?それって部門メンバー目線で解釈するとメンタルヘルスを病んだ人をケアする新しい仕事が増えるってこと?めんどくさ。こっちは目標追って必死でやっているんだよとか、自分には子どもがいるので、大人の他人の面倒まで見る余裕はありませんと感じる人がいると思います。

この活動は、メンタルヘルスを病んだ方のケアを職場でもすることが、会社員以前に人として大切だと思う数人が担うことです。この活動を支えるのは"市民性"とか"ボランティア精神"を持った人です。自分の身のまわりでメンタルヘルスを病んで退職する人がたくさんでるのはおかしいから何かしなくてはと思っている人を見つけ、何かアクションをとってもらうために情報提供や支援をするのがこの4つ目のNPOの役割なります。全員ではないですけど、社内にそうした思いを持った人がいてくれたら、社内にやさしい雰囲気が出てきそうですよね。

以上が例になります。

NPOの事業設計の中にこうした「やさしさ」を醸成する仕組みを含めることがこれから求められつつあるのではないかなと思います。

NPOのお仕事でやさしさをつくるにはどうしたらいい?というお話でした。

私はNPOの伴走支援をお仕事にしていて、ホームページを運営しております。伴走支援に関心がある方は是非一度ごらんください。無料相談も受付中です。

本日の内容はstand.fmでも聴くことができます。


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